キープレイヤーズ代表・高野秀敏さんが送るスタートアップへのエール「常に貪欲な姿勢で新しい事業やビジネスを模索し続けた企業が成功する」
キープレイヤーズ代表・エンジェル投資家の高野秀敏さんをお呼びした「OSIRO INVESTOR INTERVIEW」第七弾。
OSIRO INVESTOR INTERVIEWオシロ株式会社を応援する投資家をお招きし、代表の杉山博一がコミュニティの可能性について語り合う「OSIRO INVESTOR INTERVIEW」。第7回のゲストは、キャリアコンサルタントでありエンジェル投資家の高野秀敏さん。国内外のスタートアップに投資する高野さんは、オシロにどのような点に期待いただいているのでしょうか。出資の背景や、投資家の視点から見るオシロの将来性についてお聞きしました。
DSC00396.jpeg 1018.97 KB画像右: キープレイヤーズ代表 高野秀敏さん画像左: オシロ株式会社 代表取締役社長 杉山博一
人類の繁栄は「つながり」がベースとなっている
杉山: 本日はお時間をいただきありがとうございます。高野さんには最初、オシロの採用課題について相談に乗っていただいていたのですが、その時のオシロ社はまだまだシード期のスタートアップでしたね。そんな僕たちにも、高野さんは本当に真摯な姿勢で相談に乗ってくださいました。ただ採用の相談に乗ってくださるだけじゃなく、オシロのへんてこなイベントにも気さくに参加してくださったのも印象深く覚えています。そうやって、さまざまな場面で顔を出してくださって、関係を深めていくうちに少しずつ深い相談をさせていただくようになったと記憶しています。高野さんはエンジェル投資家として多くの企業に出資されていますが、なぜオシロへのご出資を決めていただいたのでしょうか?高野: やはり、第一には杉山さんのコミュニティに対する熱量に魅力を感じたことがあります。事業を考える時、toBとtoCでは思考方法が異なります。しかし、オシロの場合はある意味で両面をあわせ持ったサービスを開発しています。そういったサービスを開発しているオシロの代表である杉山さんは、エンドユーザーの方々への熱い気持ちを持っている一方で、コミュニティオーナーとなるアーティストやクリエイターの方々に対する深い洞察や理解を持っています。杉山さんは良い距離感の詰め方ができるタイプの経営者だと思っていて、そういった点が魅力的に感じて出資したのを覚えています。杉山: 高野さんからそのようなお言葉をいただけるのはとても嬉しく感じます。一方で、出資をする際、市場の成長性は非常に重要な判断基準です。高野さんが出資いただいた当時はまだ日本におけるオンラインコミュニティの盛り上がりはそれほど高くなかったように思えます。当時、高野さんはどのようなところにオンラインコミュニティの可能性を見出していたのでしょうか?高野: やはり人間である以上、「人とつながりたい」や「人と勉強したい」、「人から刺激を受けたい」と欲するのは当然のことなのでしょう。私は『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)を愛読していますが、本書ではネアンデルタール人と比べて身体能力が優れていなかったホモ・サピエンスがなぜ生存競争に勝ち残れたのかについて考察されています。それによれば、ホモ・サピエンスは虚構やフィクションを信じ、意思疎通によって他人と協調する能力を手に入れた「認知革命」が大きいとされています。例えば宗教や国家といったものは現実には存在しない、いわば虚構といえますが、現代にも大きな影響力を持っています。これらは人々をつなげ、協力させることに大きな役割を果たしてきました。私たち人類が現在80億人に到達するまで繁栄したのは、まさに人とつながっていくことがベースになっているためです。人類はそうやって仲間やコミュニティ、社会をつくってきましたが、それがインターネット全盛の現代になってオンラインコミュニティという新しい概念が生まれてきている。杉山さんはそういった予兆を随分前から感じられてきたんだと思いますが、自分自身もSNSなどを通じて感じてきていたところではあります。DSC00390.jpeg 657.43 KB
オンラインコミュニティは「DAO的」なあり方をしている
杉山: 僕がオシロを創業し、事業を興した背景には、30歳を機にアーティスト活動に終止符を打ち、その後はフリーランスのデザイナーをし、最初に起業するまでの8年間で味わった「孤独」が原体験にあります。オシロ社が開発・運用しているコミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」は、アーティストやクリエイターが継続的に「お金とエール」を得るために、コミュニティオーナーのみならず一人の「応援者」であるファンが横のつながりを持ち強固な絆で結ばれた「応援団」になるような仕組みを構築しています。つまり、コミュニティオーナーの孤独を解消するのみならず、応援者の孤独も解消し、かけがえのない居場所にすることで持続的で豊かなコミュニティへと醸成していくことを開発思想としています。このように、創業当時はアーティストやクリエイターを支援することを念頭に置いていたため、オシロ社の事業と社会の状況がリンクしているとは思ってもいませんでした。しかし、現代はかつて存在していた地域に依拠したコミュニティが減少しつつあるなかで、新しい人と人のつながりのあり方を模索している時代ともいえます。2023年に内閣府が実施した調査(※1)では、約4割の人が日常生活で孤独を抱えていると回答しています。そういった面では、現代はコミュニティが見直され、人と人のつながりに対する価値が高くなっている時代なのではと思っています。※1 内閣府『人々のつながりに関する基礎調査(令和5年)』 高野: オンラインコミュニティのあり方はある種DAO(分散型自律組織)的ともいえます。つまり、コミュニティの中心には主宰者がいながらも、その周辺でメンバーの方々がある程度自由に活動をしているようなイメージです。アーティストやクリエイターといった方々のコミュニティに参加するメンバーも、コミュニティに参加する目的は主宰者を信奉するためではないと思います。むしろ、主宰者の方がコミュニティの中では媒介者のような存在となって、コミュニティの中で横のつながりを生み出したり、自走して運営が回っていく。そういったコミュニティのあり方を期待していると思っています。杉山: 高野さんはご自身でもオンラインコミュニティ「ベンチャースタートアップサロン」を主宰されています。コミュニティオーナーの視点として、現在のオンラインコミュニティをどのように捉えているのでしょうか?高野: 私の場合は月額4980円と決して安くはない金額をいただいています。私たちよりも高い月額設定をしているコミュニティはいくらでもあると思いますが、そういった中でどれだけちゃんと価値を出し続けられるのかというのは、ある種コミュニティオーナーとしての勝負だとは思っています。私の場合は、SNSでは書くことができない自分独自のインサイトを書いていて、それに加えてオンライン/オフラインでイベントを開催して交流の場を持ったりと、自分なりの努力をしています。そういった活動をしていく中で、入ってくる方もいれば、もちろん出ていく方もいる。あるいは出戻りする方もいたりするので、私としては自由に出入りしてもらうのがいいと思っているんです。一応会費を設けてはいますが、そういった感じで自由で緩やかな雰囲気でコミュニティを運営していきたいと思っています。例えば、1つの宗教であれば、脱退してしまうと戻りにくい気がしますけど、私のコミュニティの場合はまったくそんなことはありません。もし自分のコミュニティでいろいろな知見を得られると思えば入っていただいて、横のつながりを持ちたい人にはつがってもらっていいとも思っています。あくまでビジネスをテーマとするコミュニティなので、みんなで幸せになって、 みんなで成功するといいなという想いでやっています。DSC00386.jpeg 659.09 KB
「社会的価値」と「ビジネス的成功」は両立させるべき
杉山: やはり高野さんとしては、オシロの企業としての成長を求めているところだと思います。私としても、オシロに投資してくださった皆さまの応援や想いをエネルギーに、ミッション達成という意味でも、必ず恩返ししたいと考えております。ぜひお聞きしたいのですが、投資家の目線としてオシロが今後事業をつくっていくにあたりどういったことに取り組んでいくべきだとお考えでしょうか?高野: やはり伸びる事業をやるべきだと思っています。起業家で成功する人の多くは、絶えず伸びる領域にトライをし続けた方々です。既存事業を大切に伸ばしていくということもやりつつ、常に貪欲な姿勢で新しい事業やビジネスを模索し続けた方は成功しています。既存事業自体がT2D3(※2)の伸びを見せているのであれば当然注力していくべきですけど、そこまで至らない時にはやはり貪欲に行くべきだと思います。※2 T2D3(Triple, Triple, Double, Double, Double/トリプル2回、ダブル3回)、SaaSのスタートアップ企業の成長スピードを測る指標で、特定の年間売上を起点として1年ごとに3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と上昇し、「5年で72倍」を目標とするもの杉山: おっしゃる通りですね。OSIROはアーティストやクリエイターのために生まれ、開発し始めたので、それが売上の土台になっています。例え、それが計画通りにいかないとなったとしてもクリエイター向けに提供することは永続していく。そのためにも、ブランド向けに使っていただく可能性が見えてきました。そうすると大企業の方々にもご導入いただけるようになり、新しい成長ポテンシャルが見えてきました。しかし、オシロの現状はまだT2D3とは言い難い状況ですので、貪欲なトライが必要だと実感しています。そうしたなかで、新しい挑戦を始めています。例えば自社で運営するコミュニティをつくっていくことです。出版社が雑誌を創刊するように、自分たちでOSIROを使ったコミュニティを創設していく取り組みです。また、意外な展開もあります。OSIROを社内コミュニケーションとして活用するお引き合いが増えてきたんです。これは、私たちが社内のコミュニケーションを長年OSIROを使って行ってきたのですが、そこで得た社内コミュニティ活性化の知見やノウハウが、企業の人事担当の皆さまから非常に高い関心を持っていただいています。人的資本経営の重要性が高まっている今、OSIROの仕組みが従業員の幸福度を上げるソリューションになりえることがわかってきたんです。プロダクトとしては同一のものですが、導入や活用のあり方次第で「アーティストやクリエイター向け」「ブランド向け」「自社コミュニティへの活用」そして「社内コミュニケーション向け」と4通りの対象が生まれています。もちろん、オシロが掲げるミッションから外れたことをやる気はありません。しかし、今はとにかく貪欲にチャレンジしていく時期で、今一番強く風が吹く場所に提供していきたいという思いが強いです。高野: 「社会に価値のあること」と「ビジネスとして成功させていくこと」は両立させなければなりません。ロマンと算盤のどちらも達成させていくのが、パブリックな企業になるためには必須のこと。オシロはそれにどう向き合っていくのかが大事になっているフェーズだと思います。世の中にはとてもうまくいっている会社もあり、自社らしくやることも大事ですが現在うまくいっている会社を参考にすることも大事です。そして、やるべきこともやりながら貪欲にチャレンジを続けていく会社はやはり強いです。いかに本当の意味でサステナブルに利益を出し続け、愛されるサービス・会社になっていくか。そういったビジネスの戦いの中で重要になるのは、繰り返しになりますが貪欲さです。やはり起業家の方はチャレンジし続けることが大事だと思っています。ぜひがんばっていただきたいです。杉山: ありがとうございます。現在はより大きな成長を遂げていくための地固め、点と点をつなげていくフェーズのつもりです。そういった時に求められるのはまさに高野さんのおっしゃる「貪欲さ」や「執念」だと思っています。オシロ全体であきらめずにやるべきこと、挑むべきことをやり、誠実にお客さまと向き合っていき、改善すべきことは整えていく。少し精神論的になりますが、とにかく成功するまでは愚直に試行錯誤を重ねていくことが重要です。今後も精一杯社会のため、「日本を芸術文化大国にする」というミッション達成のために努めていきます。そして、オシロはSaaS事業というよりは、クリエイティブな業界に属しているつもりです。クリエイティブ業界をしっかり稼げる業界にしたいですし、持続する仕組みにするべく、高野さんには今後も変わらず相談に乗っていただきたいです。今日は本当にありがとうございました!DSC00375_re_2.jpeg 1.37 MBProfile
高野秀敏|Hidetoshi Takanoインテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11000人以上のキャリア 面談、4000人以上の経営者と採用相談にのる。70社以上の投資、投資先7社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。識学、スローガン、アイデミー、ブリーチ上場(主な投資先はこちら)。174社上場支援実績あり。バングラデシュで不動産会社、商業銀行の設立など。2024年11月27日、新刊『ベンチャーの作法 ー「結果がすべて」の世界で速さと成果を両取りする仕事術』(ダイヤモンド社)を出版。
杉山博一|Hirokazu Sugiyamaオシロ株式会社 代表取締役社長。1973年生まれ。アーティストやデザイナーとしての活動を経て、32歳の時に日本初の金融サービスを共同創業。退任後、ニュージーランドと日本の2拠点居住を経て「日本を芸術文化大国にする」というミッションのために東京に定住し、2017年オシロ株式会社設立。
オシロ株式会社は現在、ファン同士の交流を活性化させる業界唯一のコミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」を成長させ、より多くのクリエイターやブランドオーナー、企業様にご導入いただくための仲間を募集しています。採用ページ では、弊社が大切にする価値観や文化、ともに働くメンバーのインタビュー、募集中の職種などが掲載されています。現在募集中の職種・応募はこちらから 。