クリエイティブディレクターの中村洋基さんをお呼びした「OSIRO INVESTOR INTERVIEW」第三弾。
OSIRO INVESTOR INTERVIEW
オシロ株式会社を応援する投資家をお招きし、代表の杉山博一がコミュニティの可能性について語り合う「OSIRO INVESTOR INTERVIEW」。第3回のゲストは、企業・商品・サービスのブランディング全般を請け負い、戦略策定からプロモーションプランを行うクリエイティブチーム「PARTY」のクリエイティブディレクターでもあり、シリーズAでオシロへご出資されたスタートアップスタジオ「combo」の代表でもある中村洋基さん。マーケテインングやプロモーションといった広告をフィールドとする中村さんは、なぜコミュニティに着目し、オシロに出資いただいたのでしょうか。その背景と可能性についてお聞きしました。
広告で振り向いてくれた100万人がロイヤルユーザーになるには
杉山博一(以下、杉山): 中村さんには、個人として2022年11月にオシロの応援団(投資家)になってくださっただけでなく、中村さんが2023年に創業したスタートアップ企業のマーケティングやプロモーションも含めた継続的な事業支援を行う「combo」でも応援団になってくださいました。今回は、マーケティングやプロモーションにおけるクリエイティブで最前線を行く中村さんと話せるのがとても楽しみです。
中村洋基さん(以下、中村): ありがとうございます。
杉山: まずは「広告とコミュニティ」について話していきたいと思います。プロモーションやマーケティングのクリエイティブ領域で活躍する中村さんから見て、コミュニティの価値をどう捉えていますか?
というのも、
オシロは今いる大事なファンを大切にしましょう、そのコアファンをサポート、GIVEしていきましょうという哲学が根底にあります。その上で、これからは広告をヒットさせるだけではもったいない、広告だけの時代ではないと思っているんです。
中村: 「広告とコミュニティ」については、すごく興味があります。ぼくはコミュニティをつくるプロではないので、長い間かけてコミュニティづくりをしている杉山さんに、逆インタビューできると思って、楽しみにきました(笑)。
ぼくは、広告とデジタルの技術を使って、100万人ぐらいの人に向かって「みんな、こっち向いて!」と振り向かせるのは得意です。SNSや世の中のコミュニケーションの流れを利用して広告を設計します。しかし、
振り向いた100万人のなかからプロダクトを熱烈に支持し、購入し続ける、いわゆるロイヤルユーザーを生み出すことはなかなかできません。「広告にはそこまでの力はない」と思っているんです。
そういった
熱量の高いユーザーを醸成するものとしてコミュニティの存在に注目をしています。企業やブランドがOSIROを導入している例がありますよね。どんなことを望んでいるのでしょうか?
杉山: ファンを集めてアンケートや情報を取得するというような
テイク的発想ではなく、大切なファンをもてなしたい、ファンをサポートしエンパワーしたいというGIVEの思考が最初にあるかどうかだと思うんです。
中村: そのうえで、メンバー同士のつながり価値を生み出せることですかね。
杉山: そうです。僕たちはそれを
「1:n:n」のコミュニティといっています。どういうことかというと、コミュニティオーナー(1)とメンバー(n)の関係が従来の著名人のファンクラブや、オンラインサロンのように一方的な「1:n」の関係ではなく、
オシロはコミュニティオーナーとメンバー、さらにはメンバーとメンバーの横のつながり(n:n)で交流するプラットフォームを設計しているところです。
実際にOSIROでコミュニティを運営している食の小売ブランド
「DEAN & DELUCA」様のコミュニティ「LIG」では、コミュニティに参加したメンバーの商品購入額が2倍、来店頻度が3倍に上がったというデータ が出ています。コミュニティがロイヤルユーザーを醸成していることを示しているといえます。
その背景には、6か月間のプログラムでオリーブオイルやチーズ、ワインなどを掘り下げて学ぶことで、店舗での買い物の幅が広がり、自分のお気に入りのカテゴリー以外の新しい気づきになったことが挙げられています。ほかにもメンバー同士で商品の推奨行動が起きたことが大きかったと分析されていて、1:nの一方的な情報発信以上に、共通の興味関心を持つメンバー同士の交流、つまり1:n:nがあったからこそさらにロイヤル化が強まり、1:nではなく1:n:nだからこそ生まれた成果といえると思います。
熱量の高いファン同士が横のつながりを持つことで、情報交換にも信頼性があり「LIGでこの人がおすすめするなら買う」という動きが多く見られたそうで、ブログ既読数が多いメンバーほど購入金額が高くなったそうです。
現在では他のコミュニティプラットフォームを独自に比較検討されたうえで「
私たちがしたいことはOSIROにしかできない」と直接問い合わせいただくことも増えてきました。例えば、数百社になる加盟企業の中から盛り上がっている企業同士を見つけ、マッチングして新しい価値をつくり出したいと考えていても、なかなかできていないそうです。それがOSIROを使うと加盟企業の熱量を測ることができ、さらには
各企業単体では解決しづらい価値を、パーパス(志、社会的意義)に共感し、共有している企業同士がコラボして価値共創していくーー、そんな場にもなると考えています。
中村: なるほど、
新規事業アイデアとメンバーのマッチング、離れた企業間のコミュニケーションにも活用されている。SlackやChatworkなど
「Do」の部分ではなく「Be」を共有することが、ビジネスの価値もつくれているんですね。
広告は第1波、コミュニティを第2波と考えて掛け算する
中村: ほとんどの企業のオウンド施策やSNS活用施策は、
企業に対するロイヤルユーザーをつくりたい、見える化したいと思って取り組んでいるのに、なかなか見えてこないため苦労しています。そのなかで、
OSIROのコミュニティは理想の形に近いですね。中途半端にSNSのフォロワー集めにお金かけるくらいなら、OSIROをやってみたほうがよさそうだと思えます。
広告は「ブランディング」と「プロモーション」を混在して捉えられることが多いですが、実は日本はブランディングにほぼお金をかけていないんですよ。それではブランドに対する好意度が上がったことを数値化できないし、ブランドリフトが売上に直結しづらい。ボディブローのように効いてくるものよりも、インプレッション数のように目標数値を出しやすいプロモーションの獲得施策の方が効率がいいと考えられているからなんです。
プロモーションはその瞬間にパッと数字は上がるけど、終わったら元の数値に戻る。ブランドやプロダクトのことを好きになってアクションしたわけではないですから。そうするとカンフル剤のようにプロモーションを打ち続けないといけない。
ですので、
ネットを活用したプロモーション活動を行いつつも、中長期的なブランディング施策により、ロイヤルユーザーを増やしていくほうが企業として健全です。OSIROはロイヤルユーザーを見える化するだけでなく、
コミュニティの活動を通じて、さらにロイヤル度を高めてその解像度まで上げることができる。企業にとって垂涎ものな機能なんじゃないかなと思います。
杉山: 広告を第1波、コミュニティを第2波と考えて、掛け算していくといいかもしれないですね。
まずは広告で振り向いていただき、その中から熱量がより高い人たちを醸成していくという、「広告」と「コミュニティ」を掛け合わせるイメージがとても湧いてきました。
僕たちは、今いるファン、とくにコアなファンを大切にすることは企業やブランドにとってとても大切なことだと思っています。だからこそ広告だけに予算を使うのではなく、コアなファンをもてなすことにもお金を使ってほしい。その施策のひとつが
コアなファンが集える場、つまり「コミュニティ」の構築ではないでしょうか。
もちろん、コミュニティの広告を打つのは賛成です。コミュニティの広告ではなくても、かつてのAppleの広告のように、心を打たれる広告もあります。それはコアなファンも喜びます。
100万人を振り向かせることができるようなすばらしい広告と、それだけで終わらせず、好きで居続ける豊かなコミュニティとの連携施策で、ファンをコアファンに。そしてコミュニティの中でコアファンに満足していただく。結果、コアファンが定着し、愛着が生まれ、自然とアンバサダーとしてブランドの魅力を外に発信するようになる。最終的には、ファンが継続するだけじゃなく、ファンがファンを呼ぶようになるんです。
愛される広告が、愛されるコミュニティをつくり、それが愛されるブランドになっていくと思っています。
そうしたら日本の広告業界も、従来の広告手法だけではできないことが生まれるかもしれませんね。僕は「日本を芸術文化大国にする」という天命を受け、コミュニティがクリエイティブを生み出すためにOSIROをスタートしました。だからこそ広告から新しいクリエイションが起きることはとても楽しみなことです。
中村: プロダクトやブランドのWebCMや動画をコミュニティの中で共創してつくってしまうのもおもしろいですね。
コミュニティに入ってる人たちは、ロイヤルユーザーのロールモデルそのものですから。
自分たちがなぜこのコミュニティに入っていて、この場所が好きなのか。その理由を言うだけで宣伝になるはずです。広告は企業が一方的につくるものでもないし、実際TikTokのようにクリエイターと受け手の境目がどんどん解けてきているように、広告の境目も解けてくるはずです。
コミュニティがクリエイターの心の癒しになる
杉山: OSIROのインターフェースを体験してみて、どんなことを感じられましたか?
中村: イベントを立てたりコメントをつけたりという、アクションに応じてコミュニティメンバーにポイントが与えられる仕組みはいいですよね。しかも、メンバー間でポイントを付与し合えるのもいい。なにもわからずコミュニティに入ってきたときに喜びやすいですよね。
また、
新しくメンバーになった人に事前に登録したメッセージが自動で送れられる「ウェルカムメッセージ機能」や、メンバーが書いたブログに対してBotがランダムに書き込む「ファーストコメント機能」は、運営を助ける機能としてありがたいですし、メンバーが気軽にコメントをつけやすくなる雰囲気を生みだしていますよね。
そしてなにより、ブログに対してコメントがズラッと連なるようなインターフェイスも非常に魅力的で、最終的にはインセンティブなんかなくても自分がコミュニティに活発に参加している状態にするための設計がすばらしいです。
ここまで、企業にとってのOSIRO活用の話が多かったですが、クリエイターや著名人の方のファンクラブ的用途っていうのは当然ながらもっとあるはずだと思います。
たとえば、タレント事務所の機能に変化が出始めていると聞いています。これはアミューズの白石耕介さんが言っていたのですが、アーティストやクリエイターに事務所が付与できるものは、「認知・エンゲージメント・マネタイズ」と言われています。たとえば音楽業界でいうと、
CDからサブスクのように認知の手法はかなり変わってきてますが、エンゲージメントとマネタイズはほとんど変わっていない。これからのタレント事務所は後者の機能を持つべきだと。
タレントに限らず、全員がクリエイターであり、インフルエンサーの時代です。認知・エンゲージメント・マネタイズを考えていく時代に突入しています。ファンクラブ1.0が旧来の一方向な関係性であるとすれば、
OSIROの存在は「ファンクラブ2.0」になるかもしれないですよね。
杉山: これからのタレント事務所は、その3つの機能に加えて
アーティストやクリエイターのメンタルケアも重要になってくると思います。
中村: たしかに早くに大ブレークしたクリエイターは、次の作品を発表するときにまわりの過度な期待などから精神的に追い込まれる人が多いと聞きます。
杉山: そのメンタルケアこそエージェントが担う一番大事な機能だと思うのですが、
コミュニティであれば、コミュニティメンバーがクリエイターに対するメンタルケアを少しでもフォローできるはずなんです。
中村: なにがあっても応援してくれる人たちがいるというコミュニティ自体が、クリエイターの癒しになるということですね。
杉山: そしてクリエイターもそうですが、ファン自身も孤独なんですよ。なので
ファンがファンを支えていくっていうこともあると思います。そういう意味でエージェントとコミュニティの両方が必要なのだと思っています。
中村: 広告とコミュニティだけでなく、
エージェントとコミュニティの掛け算からも新しいクリエイションが生まれそうですね。
杉山: 中村さん、本日はお忙しい中ありがとうございました。ぜひ一緒に「広告とコミュニティの掛け算」で、新しいものを生み出していけたらうれしいです!
Profile
中村洋基|Hiroki Nakamura
PARTY クリエイティブディレクター / Combo 代表取締役
(株)電通で10年間クリエイティブディレクターとして、国内外で話題になったデジタル広告キャンペーンを手がけた後、2011年、4人のメンバーとPARTY設立。国内外300以上の受賞歴があり、審査員歴多数。スタートアップをつくる・のばす分野を、スタートアップスタジオcomboとしてピボット。数多くの事業創造・出資を行う。3社の大企業の顧問業、TOKYO FM「澤本・権八のすぐに終わりますから」司会・パーソナリティ、青山のコーヒーショップ「TINTO COFFEE」運営など「新しいコミュニケーションをつくる」を軸に多様な活動を行う。
杉山博一|Hirokazu Sugiyama
オシロ株式会社 代表取締役社長
24歳で世界一周から帰国後、アーティストとデザイナーとして活動開始。30歳を機にアーティスト活動に終止符を打つ。日本初の金融サービスを共同で創業(2024年上場)。退社後、ニュージーランドと日本の2拠点居住を開始。30歩で砂浜に行ける自分を豊かにするライフスタイルから一転、天命を授かり「日本を世界一の芸術文化大国にする」という志フルコミットスタイルに。以降東京に定住し、2015年クリエイター向けオウンドプラットフォーム「OSIRO」を開発。2017年オシロ株式会社設立。現在は作家・アーティストから、コンテンツ・メディア・ブランド企業までクリエイティブ産業全般に向けて、ファン同士が仲良くなる、独自のプラットフォームを提供している。システムの提供はもちろん、コミュニティ醸成のサポートも行っている。
text & photos by Ichiro Erokumae
オシロ株式会社は現在、ファン同士の交流を活性化させる業界唯一のコミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」を成長させ、より多くのクリエイターやブランドオーナー、企業様にご導入いただくための仲間を募集しています。
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