エルゼビア・ジャパン株式会社の西宮大貴さん、藤澤空見子さんをお呼びしたOSIRO OWNER SPECIAL INTERVIEW第10弾。
OSIRO OWNER SPECIAL INTERVIEW オシロ株式会社の代表取締役社長である杉山博一によるオーナースペシャルインタビュー。医療安全のeラーニングツール「SafetyPlus」を開発するエルゼビア・ジャパン株式会社の、開発チーム ディレクター兼マネージャーの西宮大貴さん、コンテンツエディターの藤澤空見子さんです。医療安全は、医療そのものを支える重要な役割を担う存在です。しかしその教育法などは医療機関の事情によって異なり、業務内容が膨大なこともあり病院の医療安全管理者はつねに頭を悩ませているといいます。 そんな医療課題の解決を目指すパーパス(志)をもったコミュニティとして誕生した「Team SP」は、参加者同士のコミュニケーションの活性化を重視したいとプラットフォームにOSIROを選びました。
Team SP 医療法で定められた医療安全研修も含め、医療安全教育については、全国の医療安全管理者の多くが日々頭を悩ませている。そんな医療課題の解決を目指して発足し、医療安全に関わる人たちが集まるコミュニティが「Team SP」だ。コミュニティでは、所属する組織や役職など立場の違いを超えて、これからの医療安全教育について大いに意見を交わし合い、学び合い、ともに考えている。関わるメンバーが対等な関係であることを大切に、心理的安全性の高いコミュニティ で、全国の管理者と医療安全の専門家、そしてSafetyPlus開発メンバーがともにこれからの医療安全教育について考えを深めていくことを目指す。 https://team.safetyplus.jp/about
_DSC_7173.jpg 4.04 MB (写真右)エルゼビア・ジャパン株式会社 SafetyPlus開発チーム ディレクター兼マネージャー 西宮大貴さん (写真中央)エルゼビア・ジャパン株式会社 SafetyPlus開発チーム 藤澤空見子さん (写真左)オシロ 代表取締役社長 杉山博一
月1万件にもなるレポート、多忙な医療安全管理者を支える「SafetyPlus」
杉山博一(以下、杉山): 本日はお時間をくださってありがとうございます。
Team SPを始められる際に、コミュニティ運営にはコストがかかることが御社内で議論になったそうですね。それでもSafetyPlus開発チームは、
医療業界の課題を解決するには横に繋がれるような社会的意義のあるパーパスコミュニティが必要 だと、御社内の上層部の理解を得て「Team SP」をスタート されたと伺っています。コミュニティが医療現場に還元できるものを信じて自力で開拓されたことにとても感動しました。
藤澤空見子さん(以下、藤澤): こちらこそお話する機会をいただきありがとうございます。コミュニティの規模はオシロさんのプラットフォームのなかでは小さいと思いますが、コミュニティ運営をされているみなさまに少しでも参考になるお話があると幸いです。
杉山: コミュニティのメンバー数は、量より質が重要 だと提案し続けています。なぜなら、参加メンバーの顔と名前が一致すると強い関係が築けるため、お客さんが仲間になって、パーパスを実現する力も高まるからです。今日はTeam SPならではの質を重視したお話をお聞きしたいと思っています。まずはTeam SPが扱っている「医療安全」について教えていただけますか?
TeamSP様コミュニティabout.jpeg 848.63 KB 「Team SP」のAboutページ 藤澤: 医療安全とは、医療を受ける方(患者さん)・提供する方(医療従事者)双方がより安全に、より質の高い医療を受ける・遂行するための文化や実践だと考えています。医療機関には、医療安全管理室を配置して、医療安全管理者を置くことが法令で定められているそうです。その管理者の方が、病院全体の医療安全に関する研修・教育や、万が一の医療事故やヒヤリ・ハットが発生したときの対応、その後の分析や再発防止に繋げる対策をされていると理解しています。
杉山: どんな方が医療安全管理者になるのですか?
西宮大貴さん(以下、西宮): 医師や看護師、薬剤師などの各部門から任命されるようです。医療安全管理者は、法令で定められた年2回の「法定研修」で病院の全職員に対して医療安全研修を企画・実施することが義務付けられています。すごく熱心に医療安全管理者を務められている方もいれば、他の業務との兼務で非常にお忙しくされている方もいるなど、様々な方がいらっしゃいます。
藤澤: Team SPの中でお話を聞いていると、医療はケアやキュアが本来の目的なので、その基盤にある医療安全の本質は見えにくいこともあるようです。
いわゆる医療事故にいたる前、つまりヒヤリ・ハットのタイミングで対策ができれば、より安全が担保された、より質の高い医療に繋がると理解していますが、ケア・キュアよりも優先度が低く考えられがちでもあり、「医療安全教育に投資をすることが安全で質が担保された医療に繋がる」という考え方が病院経営層の方にあるかどうかで、医療安全への向き合い方に違いがあるような印象も受けます。
杉山: そうなると、
御社が開発された「 SafetyPlus 」はeラーニングツールとして、日々院内で生じるエラーに対処している医療従事者のみなさまに向けて効率的かつ一定の水準で医療安全について学べるコンテンツを提供する、という意義がありそうですね。 西宮: その通りです。たとえば大きな医療機関では、年に2回行う法定研修の対象に事務職員や委託業者も含まれるので、その医療機関にとってどのようなテーマ、目的を設定して研修するかまで考えなければなりません。全員が受講したという証明も必要なので、受講記録の管理も重要です。法定研修に加えて、新入職員研修や職種ごとの医療安全研修もあります。
また、医療機関内でエラーが起きた際、現場で原因・改善策を分析して医療安全管理室へレポートすることが望ましいとされています。大きな医療機関ですとその数が月に1万件になることもあると聞きました。もちろんそれほどの規模ですと医療安全管理者は数名体制ですが、中規模や小規模の医療機関では一人で医療安全管理業務を遂行する方もいるようです。そのような多忙な医療安全管理者が担う研修の企画立案や実施、検証までをお手伝いするサービスがSafetyPlusです。Team SPは、そのSafetyPlusを使ってくださっている医療従事者のみなさまが参加してくださっています。
杉山: 医療安全管理室のなかで奮闘する管理者の方の姿が思い浮かびます。ある種の孤独さがあるのかもしれないですね。
_DSC_6977.jpg 3.45 MB エルゼビア・ジャパン株式会社 SafetyPlus開発チーム 藤澤空見子さん _DSC_7099.jpg 3.07 MB エルゼビア・ジャパン株式会社 SafetyPlus開発チーム ディレクター兼マネージャー 西宮大貴さん
医療安全に答えはない。問いに挑む哲学的な側面がある
杉山: OSIRO導入以前から、SafetyPlusのコミュニティを設立する動きが御社内であったそうですね。藤澤さんは、入社してすぐに前任の方からTeam SPの運営を引き継いだとお聞きしています。社会的意義のあるコミュニティを引き継ぐわけですから大変ではなかったですか?
藤澤: 私の場合、前職では医学系研究における患者・市民参画の支援が業務内容だったので、医療安全は初学者で大変な部分もありました。しかし、前職と重なる部分もあり前向きに取り組んできました。そのため、参画の支援に携わる点では前職と変わらず、フィールドを移したという認識です。
医療は人間が実務を行うので、ミスをゼロにすることは難しいですし、ミスを犯した方を責めても結果は変わりません。実際に生じたエラーの当事者(患者さん、患者さんご家族、医療従事者など)への支援や寄り添いはもちろん重要ですが、それと同時に、なぜそのエラーが起きてしまったのか、どうしたら再発を防げるかという具体的な分析・対策立案に落とし込むことが医療安全において重要だと思うのです。しかし、ミスを犯した方を責めようとする文化も未だ根強いと聞きます。
医療安全は、答えのない問いに挑むような哲学的な部分もある ように感じています。
杉山: 医療にも哲学があるわけですね。前職のご経験を活かせる藤澤さんが入社されて、コミュニティの実現が加速したのではないでしょうか。
西宮: そうですね。
藤澤さんやメンバーの熱量がすごく大事なポイント だと思っています。物事を始めるのは「やってみよう」ではなくて「やるぞ、継続するぞ」という意思の方がすごく大事だと思いますので、その気持ちをもって始められたことが大きかったと思います。前任者と藤澤さん含めた本人たちのキャラクター部分も多分にあると思います。
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同じ価値観や悩みをもった人が集まるコミュニティの存在は大きい
杉山: コミュニティを運営されてみて、どんなことに存在意義を感じていますか?
藤澤: 月に1回ほどフリートークイベントを開催しています。みなさま話しはじめると「先日病院でこういうことがあって、こんな難しさがあって」とか「正解はわからないけれど、自分はこう思っている」といったお話がすごくたくさん出てくるんですよ。医療安全管理室の現場は人数が少ないようで、医療機関によっては一人で業務されていることもあります。そういった方々にとっては、
同じ価値観や悩みをもった人が集まるコミュニティの存在は大きいのではないかな と思っています。
西宮: 医療業界で熱量の高い人同士が交流する場というのは、学会くらいしかないのではないでしょうか。しかし、学会は1年に1度、それ以外はお互い知っていても定期的に交流しているケースはかなり限られていると思いますので、
Team SPのように医療安全を通していつでも集まれる場は、学会でも実現できないこと かもしれないですね。
藤澤: Team SPコミュニティは
所属する組織や役職など立場の違いをあまり考えずに、フラットに意見や経験を交わし合う場 にできたらと思っています。監修の先生をゲストに招いたイベントも月1回開催しているのですが、先生にも「一緒にコミュニティを作るためにもフラットな関係でお願いします」と申し上げています。
また、Team SPでの繋がりをもとに、
SafetyPlusのユーザー施設様と1時間から1時間半ほど一対一でお話しするデプスインタビューも実施 しました。インタビューで教えていただいたお話のなかから、そもそもの医療安全管理室の業務を知ることにもなり、
結果的にSafetyPlusのサービス向上につながる ようなお話を聞くこともできました。
杉山: Team SPには、医療安全管理者になった方以外にも、SafetyPlusを監修されている専門家の先生や、藤澤さんをはじめとするSafetyPlusの開発チームも参加されていますね。コミュニティの運営で気をつけていることや、社内ではどのように説明しているのかについて教えていただきたいです。
藤澤: 私自身は、Team SPのメンバーのみなさまを「SafetyPlusの販促のためのお客様」ではなく、「
医療安全について考えるなかでSafetyPlusの使い方を一緒にシェアし合う仲間 」だと捉えています。
Team SPで聞く声は、製品のリアルな付加価値を教えていただく「
現場の声 」です。それが販促を担う営業部やマーケティング部に伝わることで、まだSafetyPlusを使ったことのないお客様にもSafetyPlusの付加価値が伝わるといいなと考えています。
杉山: 御社の上層部にも、きちんとコミュニティの価値を伝えていかないといけませんよね。
西宮: その通りですね。もちろん営業部やマーケティング部に伝えている情報は社内上層部にも共有していて、価値が出てきていることを報告して社長レベルにも意識してもらえるようになったのは大きなことですね。
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信頼関係が生まれればコミュニティ内で深い話ができるようになる
杉山: 人数が少なくても、お互いの顔が見えるような小さなコミュニティのなかで信頼を育んだことで、安心安全でフラットな関係性が生まれ、参加されているメンバーにとっても有益な場になるのだと知ることができました。
またその結果、企業にとってもっとも価値のあるユーザーヒアリングが高解像度にできているのは、あくまでその副産物という位置づけとしているからなのだと思います。
それは、
「量重視」ではなく「質重視」にすることがコミュニティの繋がりを強くするというOSIROが目指す姿 でもあります。それが実際にTeam SPのコミュニティで実施されていて、理想が実在していることにとても感動しました。
藤澤: ありがとうございます。まだまだ試行錯誤しているところですが、監修・SafetyPlusユーザー・SafetyPlus開発チームそれぞれの立場で持ち帰る「お土産」がお互いにあること、医療安全に取り組む人を支えるためのコミュニティであることを大事にしています。
杉山: まさに「Give」のコミュニティですよね、素晴らしいです! 僕は、長く愛される企業やブランドに共通してるものがあると思っていて、それは自分たちが中心ではなくて、
自分たちの製品やサービスを使っていただいてる方々に対してサポートしようとする「Give」の精神があること だと思っています。
いつも例に出すのですが、アメリカのオートバイブランド「ハーレーダヴィッドソン」はハーレーにのるオーナーのライフスタイルをとにかくサポートし続けるとブランド側が決めているんです。徹底的にオーナーが喜ぶことをする。そうすると勝手にオーナーが宣伝してくれて、乱暴にいうとマーケティングしなくていいんです。
Team SPには、同じ「Give」の精神があってメンバーに対する愛があると感じました。
それに、
コミュニティに信頼関係ができるととても深い話ができるように なりますよね。クローズドな環境であることや同じ価値観だったり、興味関心が近い人たちが集まっているからある種の「裸の付き合い」ができますよね。そういうなかから御社が欲しい「宝のかけら」がふと現れることもあると思います。大変なことですが、やりがいが多そうですね。
藤澤: 引き続き医療安全に関わる方、
医療現場で働く方の拠り所になるコミュニティを目指していきたい と思っています。それは、医療施設という私たちのお客様の先にいらっしゃる患者さんにも貢献することでもあり、医療全体への貢献であると思っています。
杉山: 「 会社にとってのコミュニティの価値 」と「 社会課題を解決するための場所としてのコミュニティの価値 」、さらに「 メンバー個々が赤裸々に話せるコミュニティの価値 」という 三つの価値が重なったゴールデンコミュニティ といえる場ではないでしょうか。
さらに会社の経営層までもが、コミュニティが短期的ではなく長期的に存続していくことで、Team SPが会社のアイデンティティになるだけでなく、純度の高い「宝のかけら」を見つけることができると思われていることにも感銘を受けました。これからもOSIROのサービスを向上していきながら三つの価値を高めるお手伝いをしたいと強く思いました。本日は、ありがとうございました。
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西宮大貴|Hirotaka Nishimiya エルゼビア・ジャパン株式会社 クリニカル・ソリューション部 ディレクター 「SafetyPlus」「ナーシング・スキル」「今日の臨床サポート」など、医療現場向けソリューション製品の製品開発全般を担当している。
藤澤空見子|Kumiko Fujisawa エルゼビア・ジャパン株式会社 クリニカル・ソリューション部 SafetyPlusコンテンツ・エディター 医療安全e-ラーニング「SafetyPlus」のコンテンツ企画・制作と、同製品の監修・ユーザー・開発者が交わるコミュニティ「Team SP」の運営を担当している。
杉山博一|Hirokazu Sugiyama オシロ株式会社 代表取締役社長 24歳で世界一周から帰国後、アーティストとデザイナーとして活動開始。30歳を機にアーティスト活動に終止符を打つ。日本初の金融サービスを共同で創業(2024年上場)。退社後、ニュージーランドと日本の2拠点居住を開始。30歩で砂浜に行ける自分を豊かにするライフスタイルから一転、天命を授かり「日本を世界一の芸術文化大国にする」という志フルコミットスタイルに。以降東京に定住し、2015年クリエイター向けオウンドプラットフォーム「OSIRO」を開発。2017年オシロ株式会社設立。現在は作家・アーティストから、コンテンツ・メディア・ブランド企業までクリエイティブ産業全般に向けて、ファン同士が仲良くなる、独自のプラットフォームを提供している。システムの提供はもちろん、コミュニティ醸成のサポートも行っている。
text & photos by Ichiro Erokumae
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