サザビーリーグ 植村剛直さんをお呼びした「OSIRO INVESTOR INTERVIEW」第四弾。
OSIRO INVESTOR INTERVIEW
オシロ株式会社を応援する投資家をお招きし、代表の杉山博一がコミュニティの可能性について語り合う「OSIRO INVESTOR INTERVIEW」。第4回のゲストは、「Ron Herman」や「Afternoon Tea」、「agete」など40を超えるライフスタイルブランドを展開する株式会社サザビーリーグ(以下、サザビーリーグ)のビジネスデベロップメントグループ CVC担当/シニアプロジェクトマネージャーの植村剛直さんです。“It‘s a beautiful day.”を企業理念に掲げ、強い世界観をもったブランドを生みだし続けるサザビーリーグさん。植村さんは、企業が期待するユーザーとの関係に必要とされる顧客関係管理(CRM)の先にファンコミュニティの世界が存在し、それはOSIROでなければ達成できないと感じています。
“It‘s a beautiful day.”で目指すワクワクするブランドの集合体
杉山博一(以下、杉山): 2022年11月のサザビーリーグさんとの最初のオンラインミーティングで、初めて植村(剛直)さんにお会いしました。その時に「『サザビーリーグさんの社名が秀逸だよね』と取締役の佐渡島(庸平)と話していたんですよ」とお伝えした記憶があります。その後、翌年の1月に対面でお会いしたときに、ぼくが「スタバ」(スターバックス コーヒー)の大ファンである話しをさせてもらいましたね。
植村剛直さん(以下、植村): そうでしたね。サザビーリーグは、1995年にStarbucks Coffee International, Inc.との合弁で、スターバックス コーヒー ジャパン株式会社を設立しました。翌1996年に銀座松屋通りに1号店がオープンしていて、杉山さんは、かなり初期からスターバックス コーヒーのファンだということを告白してくださったんです(笑)。
杉山: カフェだけど普通のカフェじゃない、カフェの概念を超えていて、「これは、カフェのカテゴリーになんて入れられないぞ」と直感して「新しい何かが来た!」と感動したのを今でも覚えています。2001年に上場した時、当時僕は若くお金もなかったのですが、応援団の1人だと思って銀行口座にあったなけなしの貯金で、スターバックス コーヒー ジャパンの株を10株買ったんです。
その時の株は、2014年にスターバックス コーヒー ジャパンの全株式がアメリカ スターバックス社にTOB(※1)されるまで、ずっと持ち続けてました。応援の気持ちで株をもっていたので、売る気もなかったですね。株主になると、優待券などとともに冊子が届くんですが、そのデザインも素晴らしい。企業としての考え方も素晴らしいから、ずっと勉強していたというか、こういうことをしたいという憧れの眼差しをもちながら接していました。
さらにサザビーリーグさんのブランドでいえば、スペインのシューズブランド「カンペール(Camper)」も大好きで、同じ靴を3足も履き続けているほどです。そして、一番好きなアイスクリームもキッピーズ(KIPPY’S)。もう僕自身が、サザビーリーグさんからできていると思えるくらい(笑)。ですから、オシロの応援団(投資家)になってくださる機会をいただいて、運命のようなものを感じていました。
※1 TOB: 「Take Over Bid」の略で、上場会社の株券などを、あらかじめ買付価格、買付予定数、買付期間などの条件を公告し、条件に同意した株主から市場外で買い付ける、公開買付けを指す。
植村: そのようにいっていただいて光栄です。僕たちからしても応援団としてお声がけいただいたのは嬉しかったんですよ。OSIROはファンクラブとは違うコミュニティを形成しながら、それを画一的なIP(※2)でなく、きちんとブランドの世界観を伝えられるようなUIになっていることに衝撃を受けていたんです。
サザビーリーグという会社は、ブランドの集合体です。しかし、同じ似たようなブランドの集合体でなく、ブランドごとの個性が大事だと考えています。そんななかで、ブランドの考え方や世界観を伝えていくことはすごく重要なことだと考えていますので、コミュニティの世界観を大切に伝えようとする杉山さんの姿勢に対してとても共感しています。
※2 IP: 「Intellectual Property(知的財産)」の略。個人や企業がみずからの努力で生み出した知的財産を使い、ライセンス使用料などの収益を得るビジネスモデルをIPビジネスという。
杉山: サザビーリーグさんは、
“It‘s a beautiful day.”という企業スピリットをお持ちですよね。改めてどんなメッセージが込められているのでしょうか。
植村: “It‘s a beautiful day.”は、創業当時からある僕たちの唯一の憲法的なワードで、
日常の生活の中にささやかな幸せを見つけられるような企業集団でありたいという思いが込められています。
それをブランドの商品やサービス、接客といったものを通し、生活者の方にも届けていきたい。僕たちは、自分たちのことをクリエイティブリテイラーと呼んでいて、「半歩先のライフスタイルを提案し、 新たな価値を創造しつづける」というミッションを掲げています。わかりやすくいうと「ワクワクするライフスタイルの提案」ですね。
杉山: すばらしいですね。オシロ創業時に、ある俳優さんから「なんか、杉山さんってさ、ワクワクエネルギーが超出てるよね」っていわれたことがあるんです。その俳優さんいわく、「
ワクワクは、演ずることはできない」とおっしゃっていたんです。「悲しい」とか「嬉しい」という感情よりも、一番大事な価値なのかもしれないですよね。
植村: 「ワクワク」が何かっていうのは、人それぞれあっていいんです。そして、何に対してワクワクするかはブランドごとに異なると思っていますので、ブランドそれぞれの世界観の中でワクワクを届けていきたいと思っています。
「1対n対n」のコミュニケーションがとれるのはOSIROしかない
杉山: ブランドにとってのコミュニティの可能性についてどう考えていらっしゃいますか?
植村: 小売や飲食ブランドを展開する僕たちにとって重要なコミュニティの場は、店舗だと思っています。そこでの接客や情報発信はもちろん、お客さまとの他愛もない会話をとても大事にしています。
一方でインターネットを使ったコミュニティについては、SNSを使ったブランドからの情報発信が主なものですが、OSIROによって可能になるファン同士のつながりが生まれるコミュニティとは違うもののように思います。
また、ブランドマーケティングの分野ではCRM(顧客情報管理)が重要とされています。CRMへのアプローチや取り組みはブランドによってさまざまではありますが、仮に
CRMが一定のレベルになったときに、その次に必要になるのはファンコミュニティプラットフォームだと思っているんです。
杉山: CRMの先というと?
植村: ファンコミュニティのプラットフォームは、ファンクラブ的に情報が一方通行になりがちで、コミュニティ内メンバーに情報を伝える、またはメンバーの声を拾うことだけになってしまいます。それは結局のところCRMツールと同じなのではないか。ブランドがファンコミュニティプラットフォームを持つ意義とは少し違っているんじゃないかと思うんです。
ファンクラブ的に情報が一方通行になったり、コミュニティに参加してくださっているメンバーに情報を伝える、またはメンバーの声を拾うことだけのツールになるのは、どこかもったいない気がしていました。
そのなかで先ほど申し上げた形を「1対n」だとすると、杉山さんから
OSIROが目指しているのはメンバー同士が交流する、いわゆる「1対n対n」のサービス設計であることを伺ったときに、ブランドがもつべきファンコミュニティのプラットフォームはこれなんじゃないかと、予測が確信めいたものになったんです。
というのもそのブランドを好きな人しかいない心地よさ、熱量の高いファンの方々が良い形で集う世界観をブランドは求めているわけですから。
杉山: ブランドにとっての理想郷なわけですね。
植村: さらにサザビーリーグにとっても理想的で、かけがえのない日常の瞬間の積み重ねを大切にしようという “It‘s a beautiful day.”という世界観と、好きで集まった方々が、
さまざまな情報を得たり、自分のことを発信できたりするOSIROの世界観と合致すると思っています。
もちろんロイヤルカスタマーの醸成やインサイト発掘、会員情報の分析などをして、ブランドにフィードバックするというのも重要なことです。
そういったお客様の情報は、企業にとってはやっぱり貴重なものですので得られた方がいい。でも僕たちの小売飲食ブランドは、お客さまの声が聞けるお店があるので、それだけのファンコミュニティを運営するのではなく、
個別のブランドの世界観を大切にして、熱量のあるファン同士がつながるファンコミュニティプラットフォームが必要になってくる。それがOSIROだと感じています。
「愛されるブランド」は、「愛されるコミュニティ」である
杉山: 僕は「愛されるブランドは、愛されるコミュニティである」と言い切ってしまってよいと思うようになりました。
植村: 愛されるブランドであることは、ブランドが長く続くための根本的なことだと思っています。サザビーリーグも、流行りものだからといって瞬間的に儲けて、終わったら撤退するような考え方をしていません。
他社のブランドさんも同じことを考えていると思うのですが、ブランドを始めたら長く愛されて続いていくブランドにしたいと思っているはずです。
長く続けていくうえで、コミュニティ内のファンの声が、運営スタッフの励みになると思うんです。その繰り返しがグッドスパイラルになってブランドの力になる。
ですから、多くのブランドがコミュニティをやりたいと思っているのではないかと思っています。しかし、ブランドに合っているのか、どんなやり方がいいのかというのは、まだわかりかねている段階な気がします。
杉山: 「コミュニティ」という概念は昔から存在しているものですが、企業としてオンライン上でコミュニティを構築していけるのかについては、躊躇してしまう状況なのは実感しています。僕たちとしても、どのように
オンライン上でファン同士が熱量が上がり、再現性高くコミュニティを成功に導ける仕組みについては、もっと情報発信をしていかなければならないと考えています。
植村: 私たちも悩むんですよ。どういう方々に集っていただくべきかや、その方に対してどういうことを伝えていくべきか、集まってきてくれるからこその価値とは何かなど。さらには、そこでのレピュテーション(評価)はどうかというのを気にしたりするんです。
そんなに難しく考えなくてもいいのかもしれないですが、誰もまだ踏み出したことがない領域ですから慎重になります。多分みんなまだ漠然としてるというか、「どういうことができるんでしたっけ?」というところからなんだと思います。
だからこそ、
「1対n対n」のコミュニティの仕組みを先んじてやっているオシロさんの応援団になることで、弊社のブランドがそこに向かえる準備ができたときに、いつでも進んでいける。一緒にブランドにとっての最適なコミュニティの形を考えていけたらと思っています。
杉山: もちろんです。愛されるブランドを多く展開するサザビーリーグさん、植村さんの言葉をきいて、ますます「愛されるブランドは、愛されるコミュニティである」が確信になりました。ブランドとコミュニティは、植村さんがいうように手を取り合あっていけることだと思っています。本日は、お忙しい中どうもありがとうございました。
Profile
植村剛直|Takenao Uemura
株式会社サザビーリーグ ビジネスデベロップメントグループ CVC担当/シニアプロジェクトマネージャー。大学卒業後、サザビーリーグに入社。店舗スタッフからキャリアをスタート後、店長→IR→企業広報を経て、2015年に開催したピッチイベント「Lien PROJECT」を担当し、2017年にオープンイノベーションプロジェクト「LIVE LABORATORY」を立案しプロジェクトリーダーを務める。その後、小売ブランドの事業運営を経て、2021年に社長室に異動しCVC部門を立ち上げ、2022年4月から活動を開始。オシロは3社目の投資先として、2024年3月時点では国内5社、海外2社に出資を行っている。
杉山博一|Hirokazu Sugiyama
オシロ株式会社 代表取締役社長
24歳で世界一周から帰国後、アーティストとデザイナーとして活動開始。30歳を機にアーティスト活動に終止符を打つ。日本初の金融サービスを共同で創業(2024年上場)。退社後、ニュージーランドと日本の2拠点居住を開始。30歩で砂浜に行ける自分を豊かにするライフスタイルから一転、天命を授かり「日本を世界一の芸術文化大国にする」という志フルコミットスタイルに。以降東京に定住し、2015年クリエイター向けオウンドプラットフォーム「OSIRO」を開発。2017年オシロ株式会社設立。現在は作家・アーティストから、コンテンツ・メディア・ブランド企業までクリエイティブ産業全般に向けて、ファン同士が仲良くなる、独自のプラットフォームを提供している。システムの提供はもちろん、コミュニティ醸成のサポートも行っている。
text & photos by Ichiro Erokumae
オシロ株式会社は現在、ファン同士の交流を活性化させる業界唯一のコミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」を成長させ、より多くのクリエイターやブランドオーナー、企業様にご導入いただくための仲間を募集しています。
採用ページ では、弊社が大切にする価値観や文化、ともに働くメンバーのインタビュー、募集中の職種などが掲載されています。
現在募集中の職種・応募はこちら から。