読書体験が「知識の取得」から「つながりや対話」へと広がる今、体験を重視した新しい「ブッククラブ(Book Club)」のかたちが注目されています 。本記事では、読者との継続的な関係構築を目指す主宰者や出版社や書店、著者の皆さまに向けて、 ブッククラブの意義とオンラインコミュニティの活用事例を紹介 します。
「ブッククラブ」や「読書会」は、いずれも「読書」を活動の目的とし、複数人で集まり書籍について話し合うアクティビティです。この二つの言葉を見聞きすると、「ブッククラブって欧米の文化でしょ?日本ではあまり馴染みがない気がする」 「読書会って、ちょっと堅苦しそうで参加しづらい...」 と、どこか距離を感じる方は多いのではないでしょうか。 しかし、近年では出版社や書店だけではなく、企業の人事部門や経営企画室、あるいはオンラインコミュニティを運営する個人までもが、「読書会」や「ブッククラブ」に注目しています。 背景にあるのは、「知識の取得」から「人とつながり、思考や感情を共有する体験」へと変化する読書ニーズと、分断と孤独が常態化する社会へのカウンターとしての「対話の場づくり」 があります。 いま語られている「ブッククラブ」や「読書会」とは、どのようなものなのか?また、その価値はどこにあるのか?そして、オンライン時代においてそれらが果たし得る役割とは? 本記事では、ブッククラブや読書会の意味を丁寧に分解し、現代社会におけるその再定義と、オンラインコミュニティとの親和性について深掘りしていきます。
📘 本記事でわかること ・「ブッククラブ」が持つ3つの意味とは?読書を巡る多層的な営み ・読書会の主なスタイルとは? 3つの代表的な形式とその違い ・いま求められる「現代的なブッククラブ」が持つ4つの特徴 ・現代の「読書体験」と「読書ニーズ」の変化とは? ・体験重視の「コミュニティ型ブッククラブ」という選択肢 ・OSIROを導入するコミュニティ型ブッククラブの事例 ・なぜオンラインコミュニティとブッククラブの相性がいいのか? ・「読む」は「誰かと分かち合う行為」へ
「ブッククラブ」が持つ3つの意味とは?読書を巡る多層的な営み
まずは、前提となる「ブッククラブ」と「読書会」とはどのようなものなのかを紹介していきます。本章では、「ブッククラブ(Book Club)」について説明していきます。 ブッククラブと聞くと、「カジュアルに本を楽しむもの」という印象を持ちますが、大別すると3つの異なる意味が存在します。
1. サブスク型ブッククラブ 主にアメリカで普及している形式で、月額制でキュレーションされた本を受け取れる「選書型のサブスクリプションサービス」です。日本でも「本のサブスク」として同様のサービスが展開されていますので、書店や出版社の方々が一番イメージしやすい形式だと思います。2. 読書会型ブッククラブ 参加者が同じ本を読んで感想や意見を語り合う、いわゆる「読書会」に近いものです。欧米では少人数で誰かの家に集まり、リビングでリラックスしながら語り合うような社交的な場が主流になっています。3. ファンコミュニティ型ブッククラブ 著者や出版社、書店、インフルエンサーなど特定の法人/個人が中心となって立ち上げる、クローズドで継続的な読者コミュニティです。SNSやチャットツール、オンラインコミュニティのプラットフォームを活用し、読書体験を通じてファンとの関係を深めます。 こちらの形式は近年欧米で流行しているスタイルで、俳優や作家が主宰するブッククラブが活況となっています。
このように、「ブッククラブ」は単なる「読書会」ではなく、選書サービス・社交体験・ファンコミュニティといった多層的な文脈を含んでいる ことがわかります。
読書会の主なスタイルとは?3つの代表的な形式とその違い
では、読書会はどうでしょうか? 多くの人が「読書会」と聞いてイメージするのは、「ややお堅い読書愛好家の集まり」とイメージするかもしれません。しかし、読書会も大別すると以下のようなスタイルがあります。
1. 学習型読書会 書籍の内容を体系的に理解することを目的とした形式 です。課題本として選ばれたビジネス書や自己啓発書、専門書などを読み込み、参加者同士で要点を共有したり、知識をアウトプットする機会として活用されます。特に自己研鑽や資格学習の延長線上で行われるケースが多く、「読書=知識の蓄積」という感覚が色濃く表れています。特徴: 情報の整理・要約を通じて“学び直し”やスキルアップを図る印象: 意識が高くないと参加しにくい/発言の質を求められる雰囲気がある2. 講義型読書会 進行役(講師や専門家、著者自身など)が中心となり、選書の背景や著者の意図、関連する知識領域を解説していく形式 です。参加者は基本的に「聞き手」であり、講義やセミナーに近いスタイルで進行します。情報密度は高いものの、参加者同士の関係性や対話が生まれにくいこともあります。特徴: 専門的な知識や視点を得られる/高い情報価値印象: 一方通行になりやすく、双方向のコミュニケーションは限定的3. 対話・ディスカッション型読書会 書籍のテーマや主張をもとに、参加者が自由に意見を出し合い、対話・ディスカッションを行う形式 です。ビジネス書や社会問題を扱ったノンフィクション、哲学・思想書など「正解のない問い」を扱う場合に多く見られます。知的刺激は非常に強い一方で、「反論への耐性」や「論理的な発言力」が求められ、初参加者にはやや緊張を伴う場面もあります。特徴: 意見交換を通じて複数の視点を獲得/深い思考に踏み込める印象: 発言へのプレッシャーがあり、安心して参加しづらいことも
いずれも知的な刺激や深い学びが得られる一方で、初参加のハードルが高かったり、関係性が固定化しやすかったりといった側面もあります。 これらの形式に共通するのは、「知的で有意義である反面、特に最初の参加ハードルが高くなりやすい」 という点です。特に「知的生産」や「正解に近づくこと」が重視されやすく、読書を通じた共感や感性の共有、関係性の育成といった「余白」が設計されにくいという課題 があります。
いま求められる「現代的なブッククラブ」が持つ4つの特徴
一方で、現代では多様なブッククラブや読書会が行われており、従来とは一線を画す新たなスタイルが主流になりつつあります。 具体的には、以下のような特徴を持った場が生まれています。
・主宰者の推し本を通じた「共通の価値観でのつながり」を重視している ・正解を求めるのではなく、多様な視点から自由に気づきや学びを持ちよる「対話型の読書体験」が設計されている ・今気になっている一冊などを集う「メンバー同士でもシェアし合える持続的な関係性」が構築されている ・本の枠を越え、集うメンバー同士で「興味関心ごとでの交流ができる仕組み」がある
このような体験をより重視するブッククラブのあり方は、なぜ生まれたのでしょうか。次章では、その背景となる「現代の読書ニーズの変化」について、さらに掘り下げていきます。
現代の「読書体験」と「読書ニーズ」の変化とは?
1. 読書体験の変化 かつて読書は「知識を得る行為」として捉えられていましたが、現代においてはその位置づけが静かに変化しつつあります。今重視されているのは読書そのものよりも「読書を含めた前後のプロセス」 といえます。 つまり、どんなきっかけでその本を手に取り、どんな感情や違和感が残り、誰かとどう共有するかという、「読む」という行為の前後にある選書や対話、内省の時間こそが、読書体験の中核になってきている のです。 また、読書が「一人で完結する知的活動」から「他者との共感や関係性を育む体験」へと広がっているのも大切なポイント です。ブッククラブや読書会のように、読書体験を「共有」する場が増えてきたことで、読書自体が社会的な行為となりつつあります。 さらに、SNSやオンラインコミュニティの普及により、読後の感想をその場でシェアし、誰かの視点で本を「再読」する機会も生まれました。読書は「他者との接続点」となり、本はコミュニケーションツールとして機能 するようになっているといえます。2. キャリアの不確実性と「読むこと」の再定義 現代のビジネスパーソンは「キャリアの不確実性」と「自己定義のプレッシャー」が同時にのしかかるという複雑な状況に直面しています。こうした背景から、読書も再評価されています。DXや生成AIの発展、ジョブ型雇用などの文脈から常に知識やスキルのアップデートが求められる一方で、「あなたは何者か?」「何を大切にしているか?」といった本質的な問いに向き合い、自己決定していく素養が求められています。 そうしたなかで、読書はただ「短期的な成果を得るための情報収集」だけでなく、「自分の思考を整理し言語化させていく、キャリア形成や人生に活かせる長期的な素養」 としてあらためて見直されています。 例えば、現代では哲学や歴史、芸術などの「人文知」と呼ばれる知識領域が大きな注目を集めています。これは、これまで人類が脈々と積み重ねてきた知への探求を通して、自らの人生の目的や今後の方向性を探るための素養を身につけたいというニーズが高まっていることが背景にあります。 誰かの言葉を読むことで、自分の内側に眠っていた問いや感覚が刺激される。そして、その反応を言葉にし話し合うことで、「自分はこういうことを考えていたのかもしれない」と確認する。そのようなプロセスが重要視されるようになっています。3. 組織における「読書会」の再注目 現在、大手企業の中でも社内読書会が人事施策の一環として取り入れられつつあります。部署や階層を超えた対話の場として、また関係性構築の場としての「ハイブリッド型のコミュニケーション」 として活用されているのです。特にM&Aや事業再編が活発化する中で、異なる企業文化や価値観を持つ組織同士をいかに融合させていくかが、多くの企業にとって重要な経営課題 となっています。従来のトップダウン型の「理念共有」や「制度設計」だけでは、社員一人ひとりの価値観や感情に深く根ざした統合は難しく、現場での「文化的摩擦」が顕在化する場面も少なくありません。 こうした背景の中、読書会という共通体験を通じて、言葉になりづらい価値観や感性をゆるやかに共有し合うプロセスは、形式的ではない「文化の統合」「多様性の許容」「信頼の土壌づくり」として機能 し始めています。 読書は、その人が何を大事にし、何に違和感を持つかを映し出します。だからこそ、感想を言葉にし合うことで、心理的安全性や相互理解を育くむきっかけになるのです。
📕【事例紹介】flier book labo:読書体験が「事業のヒラメキ」につながる flier book laboのコミュニティページ.jpeg 158.8 KB flier book laboのコミュニティ紹介ページ 良書との出合いを促進する本の要約サービス「flier」を提供する株式会社フライヤー。累計会員数125万人、法人利用は1100社以上の実績(2025年5月時点)を誇る同社では、ユーザーの方々と対話を深める場としてオンラインコミュニティ「flier book labo 」を運営しています。読書会や著者との実践講座を通じてユーザーとの交流から生まれた「気づき」が、サービスの改善につながり、さらには法人向けサービス「flier business」の成長にも貢献しています。 flier book laboのご担当者さまは「実験的な取り組みが企業研修や組織開発に活かされていることからも、コミュニティを運営する意義は大きい 」と語ります。読書を媒介とした継続的な対話の場は、単なるエンゲージメント施策にとどまらず、企業の文化浸透やサービス進化の土壌としても有効に機能している好例です。 ▶︎ flier book laboの事例を見る
体験重視の「コミュニティ型ブッククラブ」という選択肢
ここまで見てきたような背景に応える形で登場するのが、より体験を重視したコミュティ型のブッククラブ です。 これは従来のブッククラブや読書会とは異なり、コミュニティ型のブッククラブは読書体験を起点にした「継続的な対話」と「共感の場」をつくることを重視 しています。特徴は以下の通りです。
・誰かの感想が、自分の読書の入口になる ・読書会だけでなく、ブログ投稿・コメント・イベント参加・ZINE制作など、多様な関わり方ができる ・参加者同士が読書体験を媒介にしてゆるやかな関係性を構築
このように、読書会に限らずさまざまな体験やアクティビティを設計したコミュニティ型のブッククラブは、単に「知識を交換する場」ではなく、「人生観や思考の断片を持ち寄る場」 になっていきます。 では、実際にコミュニティ型のブッククラブとはどのような姿をしているのでしょうか? OSIROを導入しているオンラインコミュニティでは、上記のflier book laboの事例のように、読書を活動の起点としてながらもさまざまなアクティビティが用意されているオンラインコミュニティがあります。 次章では、そのようなオンラインコミュニティの具体的な事例を紹介していきます。
OSIROを導入するコミュニティ型ブッククラブの事例
1. Book Community Liber:「本と仲間と出会えるアウトプットの遊び場」 Book Community Liber 紹介画面.jpeg 244.45 KB Book Community Liberのコミュニティ紹介ページと主な活動内容 書評YouTuber・アバタローさんが主宰する「
Book Community Liber(リベル) 」は、2021年に立ち上がった日本最大級のオンライン読書コミュニティです。
コンセプトは「本と仲間と出会えるアウトプットの遊びの場」。読書会にとどまらず、日々の気づきや趣味に関する投稿などさまざまなアクティビティが用意されていることが特徴で、さらには書籍制作やブランド立ち上げといった「共創」も生まれています。
Liberでは、メンバー同士の関係性構築にも工夫が凝らされており、イベントでの共同MCや1on1の実施などを通じて、自然な交流が育まれています。参加者が自分らしくいられる“サードプレイス”として機能している点も大きな魅力です。
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Book Community Liberの事例記事を読む 2. 猫町倶楽部: 既存のスタイルにとらわれない多種多様でユニークな読書イベントが特徴 猫町倶楽部 読書会の様子.jpeg 210.87 KB 猫町倶楽部の読書会の様子 全国で年間300回以上の読書会を開催する「
猫町倶楽部 」は、少人数制のセッションから300名規模の大型読書会まで、目的や参加者層に応じた多彩な読書体験が設計されています。
2024年には小説家・平野啓一郎氏主宰のオンラインコミュニティ「
文学の森 」とのコラボレーションイベントを開催するなど、読書会という既存のスタイルにとらわれない、多種多様でユニークな読書会やイベントが開催されていることが特徴です。
また、読書会では「他人の意見を否定しない」などの独自のルールが明示され、安心して自身の読書体験を語れる場づくりが徹底されています。
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猫町倶楽部の事例記事を読む
なぜオンラインコミュニティとブッククラブの相性がいいのか?
このように、現代におけるブッククラブは、かつての「読んだ本の感想を語る場」から進化しつつあります。今求められているのは、自分の思考や感情を言葉にし、他者と共鳴しながら関係性を育てていく、深い知的体験 です。 こうした読書体験のアップデートにおいて、オンラインコミュニティは非常に高い親和性を持っています。とくに、OSIROのように読書を「共有・蓄積・深化」できる機能が統合されたプラットフォームを活用すると、以下のようなメリットがあります。
1.アウトプットの循環が生まれる仕組み テキストベースで「問い」や「感情」を記録・共有できるため、自分の思考を深掘りする習慣が育つ。2.持続的な関係性の構築 一過性のイベントだけで集まるのではなく、オンライン上で持続的なつながりが生まれることにより心理的安全性が高まり、学びや気づきをシェアしやすい環境が生まれる。3.共感の文脈化 感想や対話がスレッド単位で整理されているため、他者の思考プロセスにも自然と共鳴できる。4.ストック型とフロー型の共存 長文のブログ投稿も気軽なつぶやきも同じ空間に残り、読書体験の多様なアウトプットが許容される。5.「読むだけ」でも参加しやすい設計 情報が見やすく整理されており、発信せずとも他者の投稿に触れることで気づきや学びを得られる。6.一つの空間に接点・機能が統合されている イベント・投稿・メッセージが分断されず、「場」としての一体感が保たれる7.「拾い・返す」文化が育つ土壌がある すぐに流れてしまうチャットツールと異なり、時間差のある対話が育まれやすい
読書という行為は、もともと孤独で静かな営みです。しかし、その読書体験を「共有された時間」へと変換することで、新しい知の循環が生まれるます。オンラインコミュニティは、そうした“共読”の価値を最大化する器として、これからのブッククラブにとって欠かせないインフラ になりつつあります。
まとめ:「読む」は「誰かと分かち合う行為」へ
読書体験は、いま静かに変化しています。独りで読むことが前提だった時代から、「読む」プロセス自体を味わい、共有する時代へと変化しています。
この変化は、Z世代やミレニアル層だけに限られたものではありません。組織で働く人にとっても、読書は「対話と内省をつなぐメディア」として再発見されているのです。
いま、私たちは読書という営みを「開かれたもの」へと再設計するタイミングにあります。読書会はその入り口であり、ブッククラブはつながりをより重視し、読書を含めたさまざまな体験を分かち合う場といえます。
そして、オンラインコミュニティはそのための「場」を提供するものです。これは従来の読書会やブッククラブの主宰者、出版社や書店、著者の皆様にとって新しい価値提供のあり方でもあり、読者との新しい関係性構築の機会となります。
今この瞬間の変化を捉え、ぜひ次の一歩を形にするお手伝いができればと考えています。
OSIROでは、書籍や読書を通じた新たな価値提供のあり方を検討する読書会やブッククラブの主宰者、出版社や書店、著者の皆様に向けて、オンラインコミュニティを活用したブッククラブの立ち上げ支援をしております。
オンラインコミュニティの立ち上げから運営に関する豊富な支援実績のもと、立ち上げ時のコミュニティ設計、運営までサポートいたします。
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