個人に留まらず、さまざまな企業もコミュニティづくりに取り組み始めた昨今。このコロナ禍で人とのリアルなつながりが制限される中、オンラインコミュニティはますます注目を集めています。
私たちの日常において一般化しつつあるオンラインコミュニティですが、実際はどのようなものなのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
このブログでは、オンラインコミュニティに関する基礎知識や、コミュニティ運営に役立つヒントをお伝えしていきます。
今回のテーマは、
『オンラインコミュニティってなに?』
みなさんはオンラインコミュニティと聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか。
「オンラインで人とつながることができる」「著名人が運営している」「イベントが開催できる」このようなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
もちろんどれも正解ですが、実は一言では言い表せないほどさまざまな要素を持ち合わせているオンラインコミュニティ。
ここでは、オンラインコミュニティの理解を深める3つのポイントをお伝えします。
(1)オンラインの強みを活かしたコミュニティ
オンラインコミュニティは、その名の通り、オンライン上で人々が集い、交流できる場所です。
インターネットを通して世界中どこにいてもつながれることは、このコロナ禍でオンラインコミュニティが注目される大きな理由です。これまでオフラインでは出会うことが難しかったような多様な人々との交流を可能にしています。
また、時間を問わずいつでも利用できるので、自分の予定や生活スタイルに合わせて交流することができます。
イベントも頻繁に開催されているオンラインコミュニティ。その多くはオンラインミーティングツールを利用して開催されています。
会場費や交通費がかかるオフラインのイベントと比べると、主催者側も参加者側も低コストでイベント開催・参加することができます。場所の制約がなく、参加できるイベントの幅が広がることもオンラインならではのメリットです。
(2)共通の価値観を持った人が集まる居場所
オンラインコミュニティにまず必要なもの。それは、コミュニティオーナーの掲げる価値観や世界観。オーナー独自の価値観や世界観が、コミュニティの軸となります。
コミュニティに集まってくるメンバーは、その価値観や世界観に共感する人たち。また、「オンラインコミュニティに入会しよう」と自ら行動している点からも、コミュニティの活動に対して比較的熱量が高い人たちと捉えることができます。
オーナーにとってメンバーは、自分と同じ価値観や世界観を共有し、コミュニティの活動に関わりたいと思ってくれている「応援者」です。コミュニティは、オーナーがメンバー(応援者)からエールや刺激を受け取れる場所とも言えるのです。
(3)1対n対nの関係性
オシロでは
「1対n対n」の関係性が成り立っている場所を「オンラインコミュニティ」と定義しています。コミュニティの話題でしばしば耳にするこの「1対n対n」とは、どのような意味なのでしょうか?
「1対n対n」は、【コミュニティのオーナー(1)】と【コミュニティを構成するメンバー(n)】の間に、どのようなつながりがあるかを示しています。
「1対n」とは、コミュニティのオーナーの元に、共感したメンバーが集まるものです。情報は基本的にオーナーからの一方通行で、メンバーはコンテンツや情報を受け取るだけの関係性になります。従来のファンクラブに近い形です。
一方で、共通の価値観を持ち、興味関心の近いメンバーとメンバーがつながるのが「n対n」の関係性です。
つまり、「 1対n対n」の関係性では、オーナーとメンバーのコミュニケーションが双方向で行われることはもちろん、
メンバー同士のコミュニケーションも活発に行われ、メンバー同士が仲良くなっていきます。メンバー同士が仲良くなると、その分熱量も高くなり、長く続くコミュニティになっていきます。だからこそ、
オーナーとだけでなくメンバー同士もつながる「1対n対n」の関係性が目指すべきコミュニティの形だと考えています。
▲「1対n対n」の構造、オーナーとメンバー、またメンバー同士がつながるコミュニティ
メンバーはどのように仲良くなるの?
ほとんどのメンバーが初対面でコミュニケーションを始めるオンラインコミュニティ。
「1対n対n」の関係性では、メンバー同士が仲良くなっていくとお伝えしましたが、実際にどのように仲良くなっていくのでしょうか。
メンバー同士が仲良くなっていくプロセスで起きていること。ここにオンラインコミュニティとはなにか? を表す特徴があります。
プロセス1. 安心安全な場所だと感じる
人と人が本当の意味で仲を深めていくために大切なこと。それは、ありのままの自分で接することです。
今やSNSで誰とでもつながれる時代ですが、あまりにもオープンすぎて、本当の自分を出せない人も少なくありません。オープンであればあるほど、人は周囲の反応が気になり、安心安全を感じられないからです。
「ここでは自分が言いたいことを言っても大丈夫」「ありのままの自分でいてもいい」という感覚を得られてはじめて、人は積極的に自分を表現できるのです。
オンラインコミュニティは、SNSとは異なり、共通の価値感を共有するメンバーだけとつながるクローズドな場。
狭くて深く、相手の顔が解像度高く見える場だからこそ、安心安全を感じやすく、本当の自分を出しても大丈夫と思えるのです。
もちろん、安心安全な場であることは、オーナーにとっても本当の自分を表現できる場であることを意味します。
メンバーと信頼関係を築いた安心安全なコミュニティの中では、不特定多数の人々やメディアに遠慮することなく、自分が感じていることや本当に表現したいことを、そのまま100%の状態で出すことができます。
メンバーは、その100%の表現をしっかりと受け止めてコメントしたり、自身でも発信してみたりと、コミュニティ内で好循環が起きていきます。
プロセス2. 自分を出し、お互いを知り合い認め合う
コミュニティに安心安全を感じると、メンバーは自分の本心を隠さずに、本当の自分を少しずつ出せるようになっていきます。
メンバーそれぞれが本当の自分を出すことで、お互いを知り合い、認め合う。
相手のことを知り、認め合えると、どんどん自分らしく振る舞えるようになる。
自分らしさが高まれば、コミュニケーションの熱量も高まる。
自分のコミュニケーションの熱量が高まれば、相手の熱量も高まっていく。
このようなプロセスを通して、メンバー同士が仲良くなり、結果としてコミュニティが活性化してきます。自らイベントを企画してみたり、自分の大好きなことやスキルをシェアしてみたり、運営側のサポートを買って出てみたりと、コミュニティへのさまざまな関わり方が生まれます。
この段階になると、
メンバーがそれぞれの小さな役割をもって、コミュニティの活動に加わり、一緒に作るようになります。これが「共創」につながっていくのです。
オンラインコミュニティにおける共創とは?
最近では、ビジネスの現場でも目にする機会が増えた「共創」というキーワード。
オンラインコミュニティにおいても、共創はよりよい場づくり、そしてコミュニティの継続性を高めるために重要な役割を果たします。
オンラインコミュニティで目指すべき共創とはどのような状態なのか、私たちがコミュニティの現場を見て感じた共創の形をご紹介いたします。
(1)1メンバーから「仲間」へ
メンバーは最初、オーナーと交流することや、悩みを解決すること、好きなものについて話すことなど、自分の欲求を満たすためにコミュニティに入ってきます。
コミュニティになじみ、それが満たされると、次は「この場所を守りたい」「この場所をもっとよくしたい」とコミュニティ全体のことを考え、貢献したいという意識に変化します。
自分を表現し、メンバーと仲良くなり、さまざまな活動をしていく中で、コミュニティは自分の居場所であり、一緒に作っていくものだと感じるようになるのです。これが1メンバーから「仲間」になる瞬間で、ここに至るプロセスそのものが共創です。
オンラインコミュニティというと、コミュニティのオーナーがメンバーに価値提供するというイメージがあるかもしれません。
ですが、共創の状態が生まれているコミュニティでは、オーナーとメンバーの関係性はフラット。それぞれの果たす役割が少し異なるだけで、コミュニティを一緒に作っていく仲間であることに変わりありません。
ですから、メンバー同士だけでなく、オーナーとメンバーでも同じようなコミュニケーションが起こります。
例えば、オーナーが新たな企画を世の中に向けて発表する前に、コミュニティで「今度、こういう企画をリリースしようと思っているんだけど、どうかな?感想や意見を聞かせてほしい!」と投げかける。メンバーは、オーナーの価値観や世界観に共感しているので、オーナーにとって有意義な意見やエールを寄せてくれる。
このように、コミュニティでのやり取りは、オーナー自身の活動にも還元されていきます。
(2)コミュニティの価値観の体現
これまで個人・メディアに関わらず、その発信やコンテンツは、一方通行のコミュニケーションになりがちでした。受け手から反応があったとしても、それは瞬間的なもの。
つまり、発信する側にとっては、自分たちの発信がそれに触れた人々や社会をどう変化させたのか、見えにくい世界だったのです。
一方でオンラインコミュニティは、メンバーの反応を直に感じられる世界。
コミュニティをきっかけにして、メンバーは大小問わず新しい何かを始める。オーナーは、そのシーンやプロセスを目の当たりにすることで、「自分の伝えている価値はこういうことなんだ。」ということがリアルに見えてくるのです。
オンラインコミュニティは、オンライン上の場所でありながら、コミュニティ内で起きていることや、やり取りしたことが、メンバーそれぞれの実生活にもつながっていくのが興味深いところ。
OSIROで運営されている多くのコミュニティでは、メンバーがコミュニティで得た知識やインスピレーションを日常生活の中で実践し、その体験や変化について互いにシェアする様子がよく見られます。
コミュニティの価値観が、メンバーの行動や活動において体現されていく。これがオンラインコミュニティの共創の一つの形だと感じています。
おわりに
このようにオンラインコミュニティは、人と人とが化学反応を起こし、さまざまな可能性を秘めた場所です。
コミュニティのオーナーにとっては、自身の活動を高め、エールを受け取る場所。自分の価値観や世界観を体現し、安心して100%の自分を表現する。
メンバーにとっては、自分の好きに特化したサードプレイス。会社でも家庭でもない自分を表現できる場所として、価値観を共有する仲間と一緒にいろいろな活動を楽しむ。
オンラインコミュニティはまだまだ発展途上。日々新しいことが起こっています。これからも皆さんと一緒にオンラインコミュニティの可能性を広げていきたいと思っています。
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村山 愛津紗
コミュニティアドバイザー / ライター
広告代理店、クラウドファンディング運営会社にてコミュニケーションデザインを担当後 独立。 最近は執筆やコミュニティ運営のサポートを行っている。 自身も複数のオンラインコミュニティにメンバーとして参加し、生き方、暮らし方の変化 を日々体感中。