OSIRO Dialogue – 対談まとめ
“テレビ離れ” そんな言葉とともに、今やYouTubeは多くの人にとって日常の情報源であり、エンターテイメントになりました。
今回のゲストは、僅か1年半で登録者は20万人を達成した書評YouTuberアバタローさん。
“ クリエイターとしての未来を広げるために、オンラインコミュニティを選んだ ”
オンラインコミュニティを始めたきっかけをそう語るアバタローさん。
2021年9月「本と仲間と出会える、アウトプットの遊び場」をコンセプトにスタートした
『Book Community Liber』では今、熱量の高い仲間たちが集い、新たなストーリーが次々と展開されています。
YouTubeに留まらず書籍の出版まで実現する人気絶頂のYouTuberアバタローさんが、次の舞台に選んだオンラインコミュニティ『Book Community Liber』の活動と未来図に迫ります。
Vol.07
書評YouTuber アバタローさん Book Community Liber 主宰
対談動画フルバージョン | 2022/2/24 ▲ 「アバタロー」としてキャラクターを立てて活動するアバタローさん、当日はパペットで登場。〈目次〉
・ファンや読者の声から生まれたコミュニティ
・YouTubeもコミュニティもいかに「主役」を輝かせるか
・そこまでするかというくらい愛情をもってメンバーと向き合う
・"隣人の経済"が生まれるコミュニティを目指して
ファンや読者の声から生まれたコミュニティ
青柳:まず、オンラインコミュニティを始めた理由、構想を始めたタイミング・きっかけについてお話を伺っていきたいと思います。
昨年、私からアバタローさんにお声掛けさせていただく形で取り組みがスタートしたのですが、YouTuberとしても登録者数20万人近くのチャネルを運営されたり、本も出版されたりと、同時に取り組まれていたことがたくさんあったと思います。
そのような中でも、オンラインコミュニティに着想したきっかけや、オンラインコミュニティをやってみようと思われたきっかけがあれば、お伺いしてみたいです。
アバタロー:オンラインコミュニティをやる予定は全くなかったんですよ。全くなかったんですが、2021年9月に『自己肯定感を上げるOUTPUT読書術』という本を出版させていただきまして、その時にいろんな方からコメントをいただいたわけなんです。
その中で
「読んだ本についてアウトプットする重要性も、やり方もよくわかったんだけれども、肝心のアウトプットする場所がないんです」というようなお声をたくさんいただき、困ったなぁ、どうしようかなぁと。
そんな時に青柳さんからお声がけをいただいて、まさに渡りに船じゃないですけれども、そのままオンラインコミュニティを始めるに至りました。
青柳:ありがとうございます。もともとYouTubeチャンネルの中でも、毎回コメントをくださるコアなファンの方もいらっしゃいましたよね。そういうお声や、実際に本を出してからの皆さんのお声を反映して、一つの場所を作っていく流れになったという感じでしょうか。
アバタロー:そうですね。昨今、人とのコミュニケーション、面と向かった対話の機会がどんどん減ってきていると感じています。こう感じているのは私だけではないと思います。
自分自身としても、YouTubeもやって、会社生活もあってとなると、それこそ会社と家の往復で、外側の世界にほとんど触れないんですよね。であれば、自分の世界をより広げていくオンラインコミュニティという選択肢を取った方がいいだろうという判断です。
▲ アバタローさんのYouTubeチャンネルには毎回多くのコメントが寄せられる。
YouTubeもコミュニティもいかに「主役」を輝かせるか
青柳:YouTubeチャンネルとオンラインコミュニティを運営されているわけですが、それぞれでキャラクターの使い分けだったり、意識していることが違うポイントってあったりするんですか。
アバタロー:ありますね。もともと自分としては「読書文化を盛り上げていきたい」という想いが根底にあり、そのために「本を手に取っていただくきっかけをどれだけ世の中に提供できるか」ということが、自分の役割だと思っているんですね。
そういう意味においては、YouTubeもLiberも目的を果たすための一種の舞台装置みたいなものであって、「両者に大きな違いはない」というのが私の考えなんです。
ただ、私自身の立ち回り方っていうのは、それぞれで変わってくるんですね。YouTubeの場合は「紹介させていただく本」が主役であるのに対して、Liberの場合は「本を手に取ってそれを読むメンバーさん(読者さん)」が主役であると。
ですから、主役である本やメンバー(読者)の人たちがいかに輝くかを考えて、ひたすら黒子として裏方業務に励むことが、私の役割だと考えています。
そこまでするかというくらい愛情をもってメンバーと向き合う
青柳:アバタローさんのコミュニティは、メンバーさんからの発信や、イベントの立ち上げがめちゃめちゃ多いですよね。かつ、最近だと読書にとどまらず、いろんなテーマでイベントやグループが立ち上がっています。
そういう状態を生み出すまでに、アバタローさんがそれこそ黒子として工夫したことや、初めてのコミュニティ運営で「こんなこと起こるんだ」「これは予想外だった」みたいなことなど、半年間のハイライトがあったら教えてもらえますか。
アバタロー:青柳さんが仰ったように、たしかに熱量はすごく高いですし、イベントが積極的に立ち上げられているっていうのは、すごく感じています。ありがたいです。
やっぱり"
メンバーさんをいかに主役にしていくか"ということが、ひとつ大事なところなのかなと思っています。私がいわゆる脚本を書いたり、小道具と揃えたりするような役割なんですけど、
なるべくメンバーさん自身のことをよく知っておく必要があると思っています。
例えば、メンバーさんがどういう性格で、どういう強みがあって、どこに住んでてとか、いろいろな情報がありますよね。それらをある程度知った上で、「あなたはこんなイベントを企画したら楽しいんじゃない?すごく輝くんじゃない?」みたいな提案を水面下で行っていくわけですね、初めは。
そうすると慣れてきて、自主的にやっていただけるという形になるんです。いきなりイベントをがしがし立ち上げるっていう、そういう性格の人だからっていうわけじゃないですよね。少しずつそういう風になっていったというのが正しい解釈なのかなと。
▲ Book Community Liberでは絶えずイベントが企画され、盛り上がっている。あと、大変だったことはいっぱいあります。メンバーさんが楽しそうにイベントを企画されたり、イベントに参加されたりしてますけれども、一方でその中に入っていけないメンバーさんがやっぱりいらっしゃる。
コミュニティが盛り上がっているのは、非常に喜ばしいことではあるんですが、一方でそれは孤独を生んでしまう。なので、そこのケアですね。大変だとは思ってませんけども、継続課題だろうなと思っています
青柳:ありがとうございます。最初にメンバーさんを理解してつなげていく、そして、つないでから盛り上がってくると、馴染めない人が出てくるという現象は、コミュニティに人が集まってくると起こりやすいと思うんです。
Liberとして、こういった問題をケアする体制を作られている、もしくは作っていく予定はありますか。
アバタロー:これはですね、
お一人お一人にアポイントをとって、膝を突き合わせて面談していく。もうこれしかないですね。
青柳:今、メンバーさんが何百人といて、皆さんとってことですよね。
アバタロー:そうです。それぐらい見捨てない、そこまでするかっていうくらい愛情を持って接する姿勢を見せる。まあ、姿勢を見せるというか、そうしたいからやってるんですけど、そうしていくとやっぱり変わっていきますよね。
そういう姿をメンバーさんも見ていてくれるので、より波及していくといいますか、「じゃあ自分もそういう風にケアしていこう」という流れになっています。
運営者側が体張って、愛情を持って、接していく必要があると思いますね。
青柳:素敵ですね。運営側が一人一人をちゃんと理解していくという文化が、メンバーさんにも波及していっているのはおもしろいですね。
最初にお互いを知るタイミングって、時間が経ち過ぎてしまうとメンバーさんもちょっと冷めてきていたりすると思うんですけど、ここまでにやっておいて良かったというタイミングってあったりしますか。
アバタロー:初めは交流会みたいなものを結構やったんですね。それによって、初期にメンバーさん同士の関係性ができたっていうのは非常に大きかったと思います。ただですね、やってみて気づいたんですけれど、
交流会だけではやっぱり仲良くならないですよね。そんな単純なもんじゃないなっていうことを学びましたね。
青柳:とりあえず集めとけばいいってもんじゃないんですね。
アバタロー:そういうものじゃないですね。
ちゃんとお一人お一人と向き合って、そこまでするかっていうくらいする。その人のことをちゃんとわかった上で、その人に合った企画をこちらから提案したり、その人が喜びそうなイベントに誘ってあげたり。そうすると雰囲気が全然変わってきますよね。
青柳:僕の中では、コミュニティを立ち上げる時に、アバタローさんが図書館の館長だとしたら、図書委員(Liberの運営メンバー)の方々と一緒にスタートできたことは大きいのかなと思っています。
コミュニティを運営する上で、最初の仲間集めって大事だと思っているのですが、もし図書委員の候補をコミュニティを始める前に集めていくとしたら、どういうやり方で集めていきますか。
アバタロー:一番悩んだところですね。僕も正解はよくわかんないんですけど、少なくとも自分自身が出した答えっていうのは、今まで自分が付き合ってきた人間の中で、この人だけは信用できるという人だけに声をかけて、その人をメンバーにしました。
彼なら、彼女なら絶対に大丈夫だろうという人と一緒にやるという感じですね。それは別に能力が高いとか、そういう話ではなくて、
人間的に信頼できることがすごく大事だと思うんです。そういうメンバーと立ち上げたのがやっぱり良かったと思いますね。
"隣人の経済"が生まれるコミュニティを目指して
青柳:最後のトピックは『コミュニティ経済圏』です。以前、アバタローさんと少しお話させてもらった時に、個人的におもしろいと思ったのが、「本のコミュニティなので、自分が読まなくなった本をメルカリなどの他のプラットフォームで販売するぐらいだったら、Liberの本好きの人たちでそれを循環させていきたい」みたいなお話をされていて。
これから1〜3年先の未来、アバタローさんはメンバーさんと一緒にLiberをどういう場所にしていきたいですか。Liberの中でどんなことが起こっているとワクワクしますか。
アバタロー:長期的なスパンでは、『コミュニティ経済圏』を考えています。
Liberは、メンバーさん同士がすごく仲が良くて、愛情深い人が多いんですね。仲間を応援したい、仲間の助けになりたいっていう気持ちが総じて強いコミュニティなので、「隣人の経済」が自然発生するような肥沃な土壌が、既にある状態なんですよね。
例えば、メンバーさんにハンドメイドのしおりを作っている人がいるんですね。素敵なしおりなんですけど、Liberの中で大人気なんですよ。ちょっとしたLiberバブルが起きております(笑)。
青柳:それは作った人も嬉しいし、仲間を応援しているという意味でメンバーさんのエンゲージメントもすごく上がりますよね。
アバタロー:コーチングのプロの方もいらっしゃるんですけど、「無料で講座やります!」と言ってくださって。50名の定員だったんですけど、これも5秒で満席になりました。
こんな感じで、メンバーさん同士でファンになっちゃうんですよね。私のファンコミュニティではなく、私はあくまで黒子で目立たずに、メンバーさんが目立つようにしているので。
いずれ、Liberの中で健全なCtoCがより活性化していくためのシステムをいかに作っていくかということは、今クリアしていかないとならない大きな課題だと思っています。
青柳:なるほど。ものを売る方法や個人が発信していく方法がいろいろとある中で、コミュニティが「誰かと価値を交換する場」になるには、その土壌に信頼関係がないと難しいですよね。
Liberでは、この最初の半年はお互いを知る期間になっていて、それが今、先につながっていっていると思うので、お互いを知るってやっぱり大事だと思います。
今は、Liber大学化計画(仮)の構想があるとのことですが、お伝えできる範囲で教えていただけますか。
アバタロー:Liberは、メンバーさん同士の仲が良いのはもちろんなのですが、一芸に秀でてる方が結構いらっしゃるんですね。
法律や会計のプロ、ドクター、薬剤師、経営コンサル、プロのコーチ、出版社・編集者の方、海外で活躍している芸術家、イラストレーター、お茶や書道の先生など、「なんでLiberに来てくださったんですか?」みたいな方がありがたいことに結構いらっしゃるんです。
なので、そういったその道のプロの方に市民公開講座的なレクチャーをしていただこうという取り組みです。Liberには学生さんも多いので、これから社会に旅立つ学生さんのためにも、基礎的な知識や知恵を授けていただきたいと思っています。
このLiber大学化計画(仮)は、実はメンバーの学生さんの着想で、学生さん主導で立ち上がっています。私は何もやってないですし、見守っているだけなんです。
プロの方たちも喜んでやってくださるということで、4月に開校します。Liberのコンセプトは「アウトプットの遊び場」なんですが、インプットのコンテンツもこれからは増えていきますね。
青柳:素敵ですね。最初は「読書をアウトプットする」というテーマでスタートしてコミュニティが、メンバーさんの特性や良さを生かして、「学び場(インプット)」だったり、全然違ういろんなものが発生していくっていうのが、すごくおもしろいと思います。
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青柳:最後にアバタローさんからコミュニティ運営を考えている方へ一言お願いします。
アバタロー:楽しくやっていただければなと思います。オンラインコミュニティでは何があるかわかりませんので。コミュニティを生き物だと思って柔軟にやっていただいたら、良いコミュニティにきっとなるんじゃないかなと思います。応援しております。
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アバタローさん / 書評YouTuber
早稲田大学文学部卒業。趣味である読書の延長として、書評YouTubeチャンネルを立ち上げたところ2020年1月に大ブレイク。「読書が苦手な人でも古今東西の難解な名著がラジオ感覚で楽しめるチャンネル」として話題になり、本格稼働から僅か1年半で、登録者は20万人を突破。2021年9月「本と仲間と出会える、アウトプットの遊び場」をコンセプトにオンラインコミュニティ「Book Community Liber」スタート。現在も自身のYouTubeチャンネルを通じて、読書の楽しさを伝えることを生き甲斐として、配信活動を続けている。
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『OSIRO Dialogue』コミュニティープロデューサーによる、コミュニティダイアローグ
日々コミュニティ運営者と伴走するコミュニティプロデューサーが何より大切にしていること、それは「ダイアローグ」。 コミュニティオーナーが本気でやりたいことを理解し、 どうやってコミュニティで実現するかを共に考え、伴走します。このシリーズではそんな一コマをシェアしていきます。
OSIRO資料ダウンロードはこちら 青柳 洋平 / オシロ株式会社
コミュニティプロデューサー大学卒業後ニュージーランドに本社を置くスタートアップの日本法人に入社。日本支社の立ち上げから、大手クライアント、代理店開拓を中心にセールスを担当した後ベルリン支社へ2年間出向。サバイバルな日々の中で目にしたのは、日常の中でアートを楽しむベルリ ナーの生き方。「日本を芸術大国に」のミッションに共感し帰国と同時にオシロに 入社。コミュニティプロデューサーチームを統括する自らも、プロデューサーとして等数々のインフルエンサー、アーティストのコミュニティを手掛けている。
Text: 村山 愛津紗 / コミュニティアドバイザー・ライター