2024年12月22日・23日の2日間にわたり開催された日本全国の「アトツギ」が一堂に会するカンファレンス「
アトツギベンチャーサミット2024(AVS2024) 」(主催:一般社団法人ベンチャー型事業承継)。
アトツギとは「先代から受け継いだ価値を、時代に合わせてアップデートすることで、その次の世代に託す時まで、存続にコミットする個人」のこと。
主催するベンチャー型事業承継は「挑戦するアトツギが日本経済に地殻変動を起こすエコシステムを実現する」をビジョンに掲げ、全国のアトツギの成長支援の他、事業開発支援などを行っています。その施策の一つとして、ベンチャー型事業承継では
アトツギのための成長と学びのコミュニティ「ファースト」 を主宰し、コミュニティ運営にOSIROをご導入いただいています。
メインイベントとして開催された23日は、本カンファレンスのテーマ「Long Termism」をテーマに、企業の存続を前提とした革新と持続可能性を両立する企業のあり方について、多種多様な登壇者の視点から議論されました。
新しい資本主義を担うのはアトツギ企業だ
DSC01063.jpeg 3.74 MB 株式会社COTEN 代表取締役 CEO 深井龍之介さん キーノートセッションに登壇したのは、株式会社COTEN 代表取締役 CEOの深井龍之介さん。セッションは「新しい資本主義を担うのはアトツギ企業だ」をテーマとし、資本主義の今後とアトツギ企業の可能性について講演を行いました。
深井さんはまず、現代の資本主義の変遷とアトツギ企業の役割について説明。資本主義は200年以上の歴史の中で常に変化してきたことを説明しつつ、「特に現代では変化のスピードが極めて速く、10年ほどで世界のあり方が大きく変わる」と指摘します。
ビジネスパーソンの役割も変容しています。深井さんは「ビジネスパーソンが国家の役割を代替しつつある時代に突入している」と述べ、アメリカではイーロン・マスク氏が宇宙事業や交通インフラなど、本来は国家が担うべき分野をビジネスとして推進していることを例示し、「ビジネスパーソンが社会全体を役割を担うほどの台頭を見せている」と説明しました。
このような変化の中で、深井さんは「資本主義も新たな枠組みが求められており、日本においてはスタートアップ企業ではなく、アトツギ企業が重要な役割を担う」と言及します。
深井さんは「日本のスタートアップがシリコンバレーの文化を模倣しようとしてきたが、異なる文化をそのまま輸入することは成功しない」と指摘。一方で、日本では福岡のYAMAPやボーダレス・ジャパンなど社会貢献を重視する「ソーシャルスタートアップ」が独自の発展を見せていると例示し、「これらの企業は地域や文化に根ざした価値創造を志向しており、アトツギ企業も独自のルーツを活かした価値創出が求められている」と説明しました。
ポスト資本主義の時代では、企業はお金を稼ぐだけでなく、社会的価値を提供することが求められるといいます。深井さんは「企業は自社の事業が社会にどのような意味を持つのかを明確に示さなければ、人材を確保できない時代になりつつある」と説明。一方で、人材の側も「短期的な利益追求型のビジネスパーソンは、この新たな基準に適応できず、苦境に立たされる時代になる」と予測します。
深井さんは「アトツギ企業は事業を存続させる必要があるが、儲けるだけでもいけない。そうした『矛盾の内包』こそがポスト資本主義において最も求められる能力であり、アトツギ企業が新しい時代の主役になりうる」と期待を語りました。
永く続く「いい会社」とは
DSC01170.jpeg 6.91 MB 最初のセッションでは、
株式会社長坂養蜂場 三代目 代表取締役の長坂善人さんと、
木村石鹸工業株式会社 代表取締役の木村祥一郎さんが登壇。
株式会社マザーハウス 代表取締役副社長 山崎大祐さんの進行のもと、“永く続く「いい会社」とは”をテーマに、事業承継の経緯や取り組みについて話し合われました。
山崎さんはまず、登壇者の二名に事業承継した当時の状況を尋ねました。
長坂さんは25歳で家業を継ぐ決意をし、養蜂業大手で修行を積んだ後に家業へ戻りました。経営面は安定していたものの、新しい取り組みへの意欲が強く、商品開発や通販事業の強化に着手。“お客様第一”を掲げたCS(顧客満足度)向上策で売上は5年で2倍以上に成長しましたが、その裏で従業員の負担が増し、組織としての疲弊を招いてしまったといいます。
DSC01146.jpeg 1.34 MB 株式会社長坂養蜂場 三代目 代表取締役 長坂善人さん 長坂さんが“いい会社”を考える契機となったのは、『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者・坂本光司さんの講演でした。「経営で最も大切なのは、従業員とその家族の幸せ」という言葉に衝撃を受け、「会社は誰のために、何のために経営するのか?」と深く考えるようになったと言います。それから長坂さんは、家族と相談し経営理念を再構築そ「ぬくもりある会社をつくりましょう~強く 優しく 逞しく~。」を掲げ、行動を変えていったと説明します。
長坂さんは、この変化の背景には家業の文化として育まれた“道徳”があったと振り返り、「道徳が根づいていたからこそ、間違いに気づき、従業員に謝罪し、改めることができた」と語りました。
DSC01200.jpeg 1.61 MB 木村石鹸工業株式会社 代表取締役 木村祥一郎さん 一方、木村さんが家業に戻った際、「会社は混乱状態だった」と語ります。当時の木村石鹸は外部から招聘した経営者2名の改革が失敗し、経営が悪化。信頼関係が崩れ、多くの社員が離職していました。木村さんは父からの要請を受け、41歳で家業に戻り、まずは経営の立て直しに着手。財務の改善と収益構造の見直しを進めましたが、やがて「数字を立て直せば解決する、という発想が誤りであると気づいた」といいます。
家業の経営再建の中で、木村さんが重要性を感じたのも「道徳」だったといいます。木村石鹸では15年以上前から先代主導のもと道徳の勉強会を続けていました。
家業に戻った当初、木村さんは「その意義を疑問視していた」と語ります。しかし、木村さんはやがて「この会社には本当にいい人が多い」と感じるようになります。その理由を探る中で、道徳の勉強会が単なる知識習得ではなく、企業文化の基盤を形成し、価値観を社員に根づかせる役割を果たしていたことに気づきました。
木村さんは「一見、経営に非効率に見える取り組みが、実は会社の強さや魅力を生み出していた」と振り返ります。
DSC01129.jpeg 1.46 MB 株式会社マザーハウス 代表取締役副社長 山崎大祐さん 山崎さんは、企業の独自性や価値を守る上で、“非効率な取り組み”が重要になると指摘。企業文化の形成に悩む経営者から相談される際、山崎さんは必ず「社内でいちばん非効率なことは何か?」という問いを投げかけるといい、その理由を「非効率とわかっていながらも取り組んでいることにこそ、企業の魅力や強みを見出せる」と説明しました。
このような議論を踏まえ、山崎さんは長坂さんと木村さんに、アトツギ企業へのエールを求めました。
長坂さんは、経営理念を再構築した翌年、企業内に理念が浸透しないことに悩み、ある経営者の方に相談した際のエピソードを紹介。その経営者からは「今やっていることを10年続けたら、少しだけ会社が良くなるかもしれない」とアドバイスをもらったといいます。
それ以降、課題が生まれるたびに理念に立ち返り、試行錯誤を重ねていった結果、少しずつ理想とする企業の姿へと近づいていきました。そして長坂養蜂場は2020年に『第10回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞』で審査委員会特別賞を受賞します。このような経験を踏まえ、長坂さんは以下のように語りました。
「企業経営は、どうしても短期的な成果を求めがちです。でも、本当に大切なものは、じっくり時間をかけなければ育たない。焦る気持ちは当然ありますが、人や組織が成長するには、それに見合った時間が必要です。だからこそ、経営者の皆さんには、短期的な成果だけでなく、10年、20年という長い時間軸で会社を見つめてほしいと思います」
木村さんは長坂さんの言葉に「続けることの大切さ」を再認識したと語ります。何かを始める前に“費用対効果”を考えてしまうと、結局何もできなくなってしまう。木村さんは「義務教育と同様に、企業経営も長い期間で継続して取り組むことで意味がわかるもの」と説きます。
一方で、木村さんは経営をしている中で効果が見えてこず焦りが生まれてしまうことへの理解も示しつつ「続けてみると思わぬ価値が生まれることもある」と語り、最後に以下のようなエールを送りました。
「アトツギの皆さんに『続けることの大切さ』を伝えたい。もちろん、すべてのことを無理に続ける必要はないですが、『これはやるべきだ』と決めたことは、すぐに結果が出なくても、粘り強く続けてみてほしい。いい会社は最終的に儲かると思っています。理念に沿って誠実に経営をすれば、結果的に利益はついてくるはずです。だから、皆さんも一緒に、いい会社を目指して頑張りましょう」
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父と娘で刻む新しい1ページ
DSC01280 2.jpeg 4.07 MB 画像中央:株式会社能作 代表取締役会長 能作克治さん、画像右:同社代表取締役社長 能作千春さん セッション2では「父と娘の新しい1ページ」をテーマに、
株式会社能作 の代表取締役会長 能作克治さんと同社代表取締役社長の能作千春さん、そしてモデレーターとして
株式会社大都 の代表取締役 山田岳人さんが登壇し、親子でバトンを受け渡し事業を成長させるプロセスについて語り合われました。
能作会長が家業に入った当時、同社は主に仏具や茶道具の素材提供を担う企業でしたが、2002年から自社商品開発に取り組み、少しずつ業態を変えていったといいます。その結果、当時数名だった社員数は現在では約250名にまで増やし、産業観光(※)を取り入れながら、伝統産業の新たな可能性を切り拓きました。
※自社工場や産業遺構を観光スポットとして開放し、産業資源として活用すること 事業承継後の現在では千春さんが代表となり、千春さんの夫が工場長としてものづくりの現場を支える体制をとっています。この決断の背景には「経営は私が、現場の支えは夫が」という役割分担の考えがあったといいます。千春さんは「私は世界や国内で能作のブランドを広め、新たな事業を生み出すことに集中し、夫は工場を支え、家庭では子どもたちの成長を見守る役割を担っています」と説明しました。
DSC01299 2.jpeg 3.89 MB そのような千春さんも「最初から事業を継ぐつもりはなかった」といいます。
千春さんは大学卒業後、神戸でアパレル業界の編集者として働いていました。しかし、ある日、職場の憧れの先輩が「この商品、おしゃれじゃない?」と紹介したのが、能作の商品だったといいます。
それがきっかけとなり、千春さんは能作のものづくりに興味を持ち、小学生以来となる工場訪問を決意します。その際に、父である能作会長が中心となり、社員たちがいきいきと働く姿を見て、「こんなに楽しそうにものづくりをする環境があるんだ」と強く感じたそうです。その後、自分の意思で能作への入社を決めました。
事業承継後の挑戦として、千春さんは産業観光に注力し、工場見学を毎日無料で開催する体制を整えました。また、工場内には体験工房やカフェを併設し、能作の製品を使った体験提供を推進します。
さらに、地域の魅力を発信するために旅行業の許可を取得し、ツアーの企画・運営にも着手しました。ブライダル事業として「
錫婚式 」という新たなサービスも展開し、結婚10周年を迎えた夫婦に向けた特別な式を提案するなど、多岐にわたる取り組みを進めています。
一方で、事業承継には苦労もありました。千春さんが代表就任を意識したのは2019年のことです。能作会長が急な体調不良で入院し、1年間会社に出られない状況になったことで、「いざというとき、自分が会社を引っ張らなければいけない」と強く自覚するようになりました。当時、夫が社長になる選択肢もありましたが、「どちらが代表になるべきか」を話し合う中で、千春さん自身が決断し、家業を引き継ぐことを決めました。
能作会長は、事業承継の最大のポイントは「承継できる会社にすること」だと語ります。後継者がいないのではなく「継ぎたいと思える会社が少なくなっている」と指摘し、「会社が魅力的であれば、自ずと誰かが継ぎたくなるはず」と強調しました。
この言葉に、山田さんも深く共感し、「企業の価値は数字だけではなく、存在価値が大事。能作さんの取り組みは、まさにその本質を体現している」と述べました。
DSC01320 2.jpeg 1.11 MB 株式会社大都 代表取締役 山田岳人さん また、能作では営業部を置かず、産業観光を通じてブランド価値を高めています。お客様が自ら訪れ、製品を知り、地域全体が能作を応援する仕組みを築いたことで、営業をしなくても自然と認知が広がっていったといいます。この考え方は、単なる売上向上だけでなく、地域との共生を意識した持続可能なビジネスの形を示しています。
そして、千春さんには、次の世代への想いもあります。自身が父の仕事を楽しそうに見ていたように、「子どもたちにも『仕事は楽しいものだ』と感じてもらいたい」と話します。
最後に、山田さんは「親子でバトンを渡していく姿勢が素晴らしい。そして地方だからこそできることがあるというのは、大きな学びになりました」とセッションをまとめました。
事業承継は簡単なものではありませんが、企業が社会に対してどのような価値を提供できるかを考え続けることで、次の世代へと自然に引き継がれていく。そう感じさせられるセッションでした。
未来を切り拓くディープテックの可能性
DSC01409 2.jpeg 3.52 MB 続くセッション3では「未来を切り拓くディープテックの可能性」と題した議論が行われました。登壇者は、KOBASHI HOLDINGS株式会社 代表取締役社長の小橋正次郎さん、株式会社Aster CEOの鈴木正臣さん、松尾産業株式会社 代表取締役社長の松尾尚樹さん。それぞれがディープテック分野への関わり方や、家業との親和性について語られました。
セッションはまず、モデレーターを務めたベンチャー型事業承継の奥村真也さんから、「ディープテック」について説明されました。ディープテックはIT(情報技術)ではなく、「科学技術」を基盤とした技術革新によって社会課題を解決するビジネスを指します。
DSC01365 2.jpeg 1.01 MB ベンチャー型事業承継 奥村真也さん 奥村さんは「これまではITテクノロジーが社会変革の中心でしたが、未だ解決されない課題が多くあります。例えば、地震やエネルギー問題などはITだけでは解決できません。これらの課題に取り組むのがディープテックであり、社会からの期待は今後より高まっていくことが見込まれます」と説明します。
アトツギ企業がディープテックに挑戦する意義について「スタートアップは、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達を行いますが、VCの投資回収期間は10年程度と短期的な成果が求められます。しかし、ディープテックは社会実装に時間がかかるため、この期間では不十分です。その点、アトツギ企業は長期的視点で事業を推進できる強みがあります。さらに、家業の持つ生産設備や技術、ネットワークを活用できるため、スタートアップよりも有利な立場にあるのです」と述べました。
DSC01384 2.jpeg 451.44 KB KOBASHI HOLDINGS株式会社 代表取締役社長 小橋正次郎さん このような説明を踏まえ、まずは各社の事業について紹介されました。
小橋さんは「
KOBASHI HOLDINGS は1910年創業の農業機械メーカーだが、国内市場の縮小に危機感を覚え、事業の多角化に取り組んでいる」と語ります。同社は、ディープテック分野のスタートアップに対して資金提供や製造支援を行うことで、新しい技術の社会実装をサポートしている。「我々が100年以上培ってきたものづくりの知識やノウハウを、ディープテックベンチャーと共有し、彼らの技術を実用化へ導くことが使命」と強調しました。
DSC01394 2.jpeg 472.56 KB 株式会社Aster CEO 鈴木正臣さん Aster は自社開発の耐震塗料「Aster Power Coating」により「地震犠牲者ゼロ」を目指すスタートアップ。鈴木さんは元々、家業である建設会社に関わりながら、新規事業として耐震補強技術の開発をスタートしています。「家業の設備やネットワークを活用しながら、スタートアップという形で独立しました。私たちのミッションは『地震犠牲者ゼロ』。家業の一事業としてやっていくよりも、スタートアップとして独立して事業にコミットした方が、世界を変える大きな挑戦ができると考えたためです」と創業の経緯を語りました。
DSC01405 2.jpeg 851.16 KB 松尾産業株式会社 代表取締役社長 松尾尚樹さん 一方で、松尾さんは「
松尾産業 は商社として長年にわたり様々な技術と関わってきたが、持続可能な事業を確立するためにディープテック分野への投資を進めている」と語ります。同社は、100%子会社で人工ダイヤモンドの製造を手掛けるなど、新しい技術の社会実装を模索しています。それを踏まえ、松尾さんは「ディープテック事業は市場形成に時間がかかるため、長期視点を持てる家業の強みを活かすことが重要だ」と説明しました。
講演では「ディープテック分野における協業の重要性」も議論されました。鈴木さんは「ディープテックは単独では成立しにくく、大学の研究者や他の企業との連携が不可欠」と指摘。「事業をスケールさせるためには、総合商社や政府機関とも連携する必要がある。重要なのは、企業の規模ではなく、目的を共有できるパートナーを見つけること」と強調しました。
さらに、家業がディープテックに取り組む上での課題として「しがらみ」の問題が挙げられた。鈴木さんは「家業には歴史や従業員の雇用があるため、大胆な変革が難しい場合もあります。しかし、家業のリソースを活かしながら、スタートアップの機動力を取り入れることで、ディープテック事業を成功させることができる」と強調しました。
最後に、世界市場への展開についての議論も行われた。小橋さんは「海外の企業が日本の製造技術を求めており、すでに世界と一緒に事業を進めている」と説明します。鈴木さんは「日本人の信用力は依然として高く、特に耐震技術の分野では日本の知見が強みになる」と語りました。
本セッションを通じて、ディープテックと家業の親和性、資金調達や長期的視点の必要性、協業の重要性、そして世界市場への展開についての具体的な議論が交わされました。家業の強みを活かしながら、新しい技術の社会実装を目指すことが、未来を切り拓く鍵になるという認識が共有されたセッションでした。
過去と未来をつなぐ地域の魅力とは
DSC01456 2.jpeg 2.14 MB 「過去と未来をつなぐ地域の魅力とは」をテーマとするセッション4では、地域の歴史や文化を活かしながら未来を創造する方法について議論が交わされました。登壇者には、
レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役社長CIOの藤野英人さんと、
公益財団法人大原芸術財団 代表理事の大原あかねさんが招かれ、モデレーターのベンチャー型事業承継 代表理事の山野千枝さんとともに、地域の持つ可能性や課題について深く掘り下げました。
冒頭、山野さんは「この2日間、『Long termism(長期的視点)』をテーマにアトツギ企業ならではの長期思考や時間軸を議論してきました。今回のセッションでは、地域の魅力をどのように未来につなげていくかを考えていきたい」と述べ、本テーマの趣旨を説明しました。
DSC01473 2.jpeg 861.22 KB 公益財団法人大原芸術財団 代表理事 大原あかねさん はじめに、大原さんから大原芸術財団の取り組みが紹介されました。大原さんは倉敷に300年続く大原家の10代目。家業がないという特殊な環境の中で、大原さんは創業者の理念を継承することを使命とし、「私が継いでいるのは精神的な遺産。歴史を受け継ぎ、未来に活かしていくことが私の役割」と語ります。
続いて、藤野さんは地域創生の取り組みについて自身の視点を共有しました。「私は富山県出身ですが、地方にいると他の地方のことを意外と知らないことが多い。自分たちの地域の立ち位置を知るためにも、他の地方に目を向けることが大切」と述べました。
また、藤野さんは「地方の魅力をどう発信するかが重要」とし、富山県射水市にある内川エリアは「日本のベネチア」と名付けることでブランド化している事例を紹介し、「旗を立てることが大事。そうすると、その地域が気になって訪れる人が増える」と説明しました。
これに対し、大原さんも「地域には命があり、土地の声を聞くことが重要」とし、歴史や文化の尊重しつつ、その魅力を表現し発信していく姿勢が地域の発展につながると述べました。
DSC01443 2.jpeg 724.35 KB レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役社長CIO 藤野英人さん セッションの後半では、地域の課題についても議論が交わされました。参加者から「私たちが事業を営む地域では、名古屋が近いこともあり危機感が薄い。どうやって火をつければいいのか」と質問が投げかけられました。
これに対し、藤野さんは「富山県と愛知県は製造業が盛んな点で似ている。経済的に安定していても、人々がワクワクしなければ地域は活性化しない。『もっと自由に生きる』という価値観を前面に出すべき」とアドバイスを送りました。
最後に、藤野さんと大原さんが参加者へメッセージを送りました。
大原さんは「過去の歴史と未来の希望を結ぶのが現在。歴史を受け継ぎながら、未来に向かって行動することが大切」と語りました。
藤野さんは「成功とは準備と機会が出会ったときに生まれる。まずは自ら動き、機会を増やすことが大切」と述べ、積極的な行動を呼びかけました。
DSC01427 2.jpeg 1.08 MB ベンチャー型事業承継 代表理事 山野千枝さん 山野さんは最後に「歴史を学び、外の世界を知ることで、自分たちの立ち位置が見えてくる。私たちは常にメタ視点を持ち、地域の魅力を深掘りしていくべき」と締めくくり、セッションを終了しました。
アトツギたちによる企業や地域の持続的な発展を模索する場
DSC01196 2.jpeg 3.91 MB 大阪市生野区でアルマイト処理の技術をさまざまな領域に応用する 有限会社電研(DENKEN) の展示 AVS2024の会場内では、セッションだけでなく全国のアトツギたちが事業で取り組む挑戦を展示するショーケースも設置され、家業の強みを活かしたさまざまな製品が紹介されていました。
DSC01219 2.jpeg 5.57 MB 東京都稲城市で肢体不自由のある方々向けの入力デバイス、アームサポートなどを中心とする「アシスティブ・テクノロジー」を開発・販売する テクノツール株式会社 の展示 そのほかにも、会場では同時開催で全員参加型のワークショップの要素を持ったセッションや、ファーストで開催されているイベント「アトツギバー」の拡大版が開かれるなど、セッション以外にも学びや交流を深めるコンテンツが用意されているのが印象的でした。
DSC01258 2.jpeg 2.18 MB 「みんなで考える理想的な中小企業の組織づくり」をテーマに、全員参加型セッションを行う 側島製罐株式会社 の石川貴也さん(画像中央) 高い熱量のうちに幕を閉じたAVS2024。本カンファレンスでは事業承継をしたアトツギだけでなく、多種多彩な知見を持つ有識者からも意見を交わされ、過去の遺産と未来への挑戦をつなぎながら、企業や地域の持続的な発展を模索する場でした。
オンラインコミュニティであるファーストも、現在大幅なリニューアルを実施し、これまで以上に全国のアトツギ同士のつながりと学びをもたらす有益な場を提供していく予定です。
中小企業は企業総数の99.7%を占め、日本の産業を支える存在。代々続く家業を受け継ぎ、企業とともに唯一無二の技術の存続を担うアトツギも少なくありません。そのような家業と技術、ノウハウを受け継ぎ、現代にアップデートさせるアトツギはまさに、日本の国際競争力の源泉であり、未来の希望ともいえます。
そのようなアトツギの活躍を応援できる場を醸成できるよう、オシロは今後もファーストを支援して参ります。
ファースト 「挑戦するアトツギが日本経済に地殻変動を起こすエコシステムを実現する」を掲げる一般社団法人・ベンチャー型事業承継が主宰するアトツギのためのコミュニティ。 「自分らしく家業を継ぎたい」「家業を成長させたい」そんな未来志向のアトツギが集まり、社長になるまでの学びを得る「予備校」のような場を提供。アトツギが自らの機会を創り出し、課題を解決する中で、経営者としての成長を実感できることを目指す。https://atotsugi-1st.com/about