「美しく眠る」をコンセプトに、多くの女性から絶大な支持を集めるオーガニックコットンブランド『nanadecor(ナナデェコール)』。そのディレクターを務める神田恵実さんは、2021年よりオンラインコミュニティ「My organic labo(マイオーガニックラボ)」を主宰しています。 メンバーと共に島根県奥出雲の棚田でコットンやお米を育て、マインドフルネスの瞑想会を行い、自身の本質的な強みを引き出す「編集塾」を開催する。その活動は、もはや単なるブランドとファンという枠組みを遥かに超え、現代女性が「生き方」そのものをアップデートしていく共創の場となっています。 なぜ、ファッションやライフスタイルの提案に留まらず、コミュニティという形で個人の「より良い生き方」の支援にまで踏み込むのでしょうか? 恵実さんのキャリアの原点、マインドフルネスとの出会い、そしてコミュニティの先に見据える「好きな人と本気で働き、本気で遊ぶ」新しい社会のあり方とは。恵実さんに伺いました。
My organic labo(マイオーガニックラボ) オーガニックコットンブランド『nanadecor(ナナデェコール)』のディレクター・神田恵実さんが主宰するオンラインコミュニティ。「深く眠り、心を整え、体を動かし 自分の内なる種を芽吹かせていく」をコンセプトに、「1年間の変容テーマ」を設け人生をエンターテインするためのコンテンツ&イベント、専門的に深く学ぶ編集塾、マインドフルネスなど各種プログラムを行っている。nanadecorが島根県奥出雲の山王寺の棚田で生育するコットン畑でのリトリートは5月の種まきと11月の収穫と年2回。リアル/オンラインいずれも豊富なアクティビティが実施されている。My organic laboの詳細・入会はこちら▼ https://myorganiclabo.love/about
ファッションエディター時代にマインドフルネスが教えてくれた「本気で人生を楽しむ」ことの大切さ
DSC08596.jpeg 8.98 MB ーー恵実さんがディレクターを務める『nanadecor』は、多くの女性にとって憧れのオーガニックコットンブランド。そこからさらに一歩踏み込んで、オンラインコミュニティ「My organic labo」を立ち上げた背景には、恵実さんご自身のどのような問題意識や人生の転換期があったのでしょうか。 神田恵実さん(以下、恵実さん): 実は、最初から「オンラインコミュニティをやろう!」と意気込んで始めたわけでは全くなくて(笑)。一番の原点は、島根県奥出雲での「出雲コットン」との出会いでした。毎年みんなで種を植えて、収穫して、それを商品にして届けていくという活動をしているのですが、コットンの栽培って本当にお手伝い(人手)がいないと成り立たないんです。そこで「
みんなで育てていく、本気で手伝ってくれる仲間と共にプロジェクトを育てていきたい 」と感じたんです。同じ価値観の皆さんともっと密につながっていきたいと思っていたこともあり、始まったのが、My organic laboでした。
ーー仲間づくりの場としてのMy organic laboだったんですね。しかし、今の活動を拝見すると、マインドフルネスや生き方・キャリアを見直す支援をしていたりと、より人生やマインドにフォーカスした活動もされていますね。 恵実さん: My organic laboではなぜブランドやオーガニックコットンだけでなく、「生き方の見直し」や「マインドフルネス」といったテーマを掛け合わせているのかというと、それは私自身がブランドを立ち上げるまでのキャリアや、その中で覚えた「違和感」が関係しています。
私は『nanadecor』を立ち上げる以前は、ファッションエディターとして、言葉通り「猛烈に」働いていました(笑)。ただ、当時を振り返ると、本当に素晴らしい思い出しかありません。
ーー仕事が楽しくて仕方がなかったんですね。 恵実さん: 本当に楽しかったですし、お金も稼いできました。もちろんものすごく忙しかったですが、自分が心からおもしろいと思える仕事だったので、精神的なストレスは全くありませんでした。だから私は今でも純粋に、「
みんなも自分が心からおもしろいと思える仕事に就いたほうがいいし、自分の今の時間を1ミリも無駄にせず、やりたいことをやる生き方をしたほうがいい 」と本気で思っているんです。
海外出張へでたり、自分のイメージを撮影で具現化したり、充実した日々。その華やかさの裏ではみんなが熱く真剣に働いていました。デニムを100本履き比べして書き分けたり、徹夜して撮影して、次の日は朝から展示会まわり、また夜になると徹夜して原稿を書き続けるという……体力勝負、過酷な一面もありました。
そんな経験を全力でしてきたからこそ、私は「人生はより濃密に生きたほうがいい」と強く思うようになりました。ですが、
今の現代社会を生きる多くの女性たちを見ていると、このバランスが完全に崩れているように感じる んです。みんな仕事や家事を一生懸命やっていて、毎日を生きるだけで精一杯になって、心が窮屈になってしまっている。
ーーバランスが崩れているとはどういう状態なのでしょうか? 恵実さん: 自分の人生を心からエンジョイする「遊び」のメーターが圧倒的に足りていないように感じています。私自身、サーフィンをしたり、ヨガをしたり、そしてそれがまた仕事につながってくる、というような循環の中で働いてきました。自分へのご褒美やお稽古事のような感覚で「MBSR(マインドフルネスストレス低減法)」という8週間の瞑想プログラムを何年も続けて受けていた時代があります。その指導者養成講座に進んでトレーニングを受けている途中でハッと気づかされた瞬間もありました。
「
人生の中において、今この瞬間が大切な場所であると同時に、1か月の中のこの時間も、5年の中のこの時期も、そして子育て期という限られた時間も、すべてが人生の愛おしい瞬間なんだ。仕事ばかりしていると、あっという間に子どもや家族との時間が過ぎ去ってしまう 」と思ったんです。「仕事と同じモチベーションで、本気で遊んでいるのか?」と自分に問うと、私は放っておくと仕事に意識のシェアが100%いってしまうタイプです。だからこそ「本気で遊ぼう=人生をエンターテインしよう」と決めました。
本気で人生を楽しむための仕込みを自分でする。そうすることで、人生のバランスが劇的に取れるようになったんです。
ラボのメンバーたちにも、まずはこの「本気で楽しむメーター」を取り戻してほしい 、そう願っています。
「肌感覚」が一致していることは、表面的な会話を何時間重ねるよりも遥かに強い、深い信頼関係を生み出す
DSC08332.jpeg 8.64 MB ーー現代女性の多くが「責任」や「義務」に追われ、人生を楽しむメーターが下がってしまっている。その中で、恵実さんが提供する『nanadecor』のプロダクトと、My organic laboでの活動が、メンバーにとっての救いになっているのですね。 恵実さん: そうなってくれていると嬉しいですね。ラボの大きな特徴として、
メンバー同士が初対面であっても、驚くほど一瞬で腹を割って人生の深い話ができる という点があります。上辺だけの「素敵ですね」「すごいですね」という褒め合いや探り合いの時間が、うちのラボには一切必要ないんです。
ーーなぜそのようなコミュニケーションがとれるのでしょうか? 恵実さん: 理由は2つあると思っていて。1つは、みんなが「nanadecor」という共通のプロダクトを愛してくれていること。そしてもう1つは、全員が「マインドフルネス」という共通の精神性を持っているからです。
nanadecorのパジャマは、一般的な感覚からすると少しハードルが高いと思います。しかし、それを「
毎日頑張っている自分の心と身体をいたわるために、本当に心地よいものを自分に与えてあげよう 」と思える人たちが集まっている。この時点で、ある種の価値観をともにする方々が集まってくれていると思います。
「オーガニックが好き」と言っても、どこに投資するかは人それぞれ違います。私たちのブランドは、オーガニックというジャンルの中でも「もっと自分の生き方を変えたい」と思っている方や、オーガニックコットンの究極の心地よさに自分の心身を救われた経験を持つ、いわば「
パジャマに活路を見出しているようなメンバー 」が集まっているんです。
ーーたしかに、nanadecorのプロダクトが持つ心地よさは、言葉で説明しがたいほどの域に達しています。「肌感覚」を共有できるというのは、ある意味で究極の価値観の一致かもしれません。 恵実さん: 例えば、nanadecorは著名人の方や表舞台で活躍する方、経営者の方々の愛用者も多いので、皆さんがご自身をサポートしてくれる下着やパジャマの存在を大切にしていることを知っています。私もお客様もみんなお気に入りの素材があり、すぐにその素材の話で互いにつながれる。こうしたご自身を包む感覚に敏感な方は、立場もなにも関係なく、同じ価値観を持っていると感じます。まさに試着室を通した「裸の付き合い」なんですよね。
「これ、本当に気持ちいいよね」という肌感覚が一致していることは、表面的な会話を何時間重ねるよりも遥かに強い、深い信頼関係を生み出します 。
そういえば以前、サロン(※)で私がお客様と話している時に、オシロのスタッフの方がいらしたことがありました。接客の様子を見て、後からポロっと「初対面のお客様なのに、なんであんなに深い人生の話をしているんですか!?」と驚かれていました(笑)。
nanadecorはそんな人の緊張をゆるめてくれる存在であり、この場所自体が深い話をすぐにできる場にできあがっています。お家のように温かくて、どれだけ人がたくさんいても、皆さんがお好きな素材でリラックスできる。友だちのお宅に招かれたようなアットホームな空気感が持つ力もすごく大きいです。
DSC08249.jpeg 7.71 MB ※「 salon de nanadecor 」東京・表参道にあるnanadecor直営店 ーープロダクトと場所への絶対的な信頼があるからこそ、心が解けて本音を言えるのですね。ただ、現代社会の忙しさの中にいると、そもそも自分の本音や「これが嫌だ」「これが心地いい」という感覚自体が鈍くなってしまうことも多いのではないでしょうか。 恵実さん: まさにその通りなんです。多くの人は、日々のストレスや「不快な環境」に慣れすぎてしまって、感覚が麻痺しています。
不快を感じなくなってしまうからこそ、マインドフルネスを取り入れたり、このラボという環境に身を置くことが大切 になります。
ラボでは月に1回、みんなで集まりマインドフルネスを行う瞑想会を定例にしていますが、そこがみんなにとっての「アンカー(心をつなぎ留める場所)」になっています。瞑想会では大体みんなお互いの近況を知っていて、「今、会社でこういう葛藤があって...…」「夫とこういうことがあって...…」という本音を、ちらほらと腹を割って話します。そこで
自分の「快・不快」に気づいていくプロセスが、私が普段発信している内容や書籍のメッセージに、少しずつ紐づいている んです。
ーーMy organic labo自体が、本来の自分に立ち返らせてくれる場所になっているんですね。 恵実さん: 忙しくて疲れ果てた時に瞑想会に参加してゆっくり眠ったり、時々奥出雲の豊かな自然に足を運んで泥に触れることで、「あ、そうだった、そうだった」と本来の自分を思い出す。自分のペースを選びながらどこかしらの活動に参加することで、いつでも「本来の自律した自分に立ち戻る」という仕組みにしている、という感じでしょうか。
もし毎日が不快で埋め尽くされているのだとしたら、我慢し続けると最終的に体を壊します。その前に「やめる勇気」も必要だと本気で思っています 。自分の人生の選択肢は、常に自分自身にあるということを忘れないでほしいし、辞めるのか、続けて別の楽しみを見つけるのか、その選択肢をラボで見つければいい。
「好きな人と本気で働き、本気で遊ぶ」自律した強い女性たちのネットワークを共創していきたい
DSC08323.jpeg 2.53 MB ーー奥出雲のお話で事前にお聞きしましたが、My organic laboはメンバーの方々に驚異的な「現場力」があると伺いました。 恵実さん: そうなんです! ラボのメンバーの方々は気づきが深いので、指示をされずに仕事を見つけて動いているとか、予定をざっくり立てているだけで、自然とオーガナイズされていくようなムードがあります。みんな自主的にその場で必要な役割を見つけて、シャキッと黙々と動いてくれる。これは
メンバーに自律した女性が多いMy organic laboの圧倒的なすごさ だと思いますね。
先日SNSで見かけた採用に関するセミナーで、ほぼ日の糸井重里さんたちが「宅配便が届いた時に、さっと率先して席を立てるような人が今の時代に一番優秀で、採用すべきポイントだ」というような記事をみた覚えがありますが「それってまさに、ラボのメンバーの動きそのものだな」と、深く納得してしまいました(笑)。ただ、そういった自律性は言葉で教えようと思ってもなかなか教えられません。本当に気持ちの良いメンバーばかりが集まってくれていると思います。
ーーなぜそこまでメンバーの皆さんが愛情と熱量をもって動いてくれるのでしょうか。ブランドとファンという関係を超えた「共創」の秘訣はどこにあるのですか? 恵実さん: それは、私たちが「ポジティブなエネルギー」でつながっているからだと思います。私たちのブランドは、自分たちを持ち上げて他者を貶したり、他の価値観を認めないということは決してありません。
私は純粋に「みんなで幸せに、心地よく楽しく生きていこう」というポジティブな想いだけでプロダクトをつくっていますし、コミュニティを運営しています 。ですからラボの中ではまずは傾聴し、自分も他人もジャッジすることなく、ありのままで良いと思っています。否定することは一切なくて、起こったことは、出来事として認めていけばいい。
自ずと前向きでハッピー軸の人たちの輪が広がり、みんながつながっている のかもしれません。
ーーなるほど。恵実さんとメンバー、そしてメンバー同士が根底にある想いで共鳴しあっているからこそ、互いに信頼できる仲間だけが集まる場所になっているのですね。 恵実さん: 私は会社を経営しているので長期戦で「この人!」と決めた魅力的な人は、全員一本釣りでスカウトし続ける習性があります(笑)。
私は自分の人生の時間を、大好きな人とだけ関わって仕事をしていきたいと思っていて、それを実現しています 。
大人になると、お互いに忙しくなり友だちと全然会えなくなってしまいます。だけど、一緒に仕事をしていれば、絶対的に会う時間がつくれますよね。ですから
私の周りは、本当に好きな人で固めたい 。大体みんな、将来的に一緒に働くつもりでスカウトベースで巻き込んでいます。
ーーそれでは最後に、今後の展望についてお聞きしたいです。My organic laboは7月からリニューアルするようですが、今後コミュニティとしてはどのような成長を目指しているのでしょうか? コミュニティを育てていくうえで大切にしているのは、単に会員数を増やすことではありません。
自分の人生のハンドルを自分で握り、互いに刺激し合いながら、それぞれの場所でしなやかに行動していける仲間と出会い、つながっていくこと です。だからこそ、今年7月のリニューアルでは、季節や年月のバイオリズムに寄り添いながら、
自分自身を見つめ、整え、行動へとつなげていく「各月のテーマ」を設けた年間プログラムをスタート させます。
さらに
9月からは、新講座として「編集塾 ライフチェンジコーチング」も始まります 。AI時代だからこそ、自分の経験から生まれた視点を見つけ、これからの生き方につながる視座を磨いていくことが大切だと感じています。この講座では、まずプロフィールと向き合い、これまでの人生や仕事、好きなこと、得意なこと、これからの働き方を見つめ直します。プロフィールは、単なる自己紹介ではなく、未来へ向けた自分の意思を宣言する場でもあると思うんです。
ひとりでは見つけにくい自分の役割や可能性を、仲間とともに掘り起こしていく。そんな温かなクラスにしていきたい ですね。
のんびり人生を過ごしていると、あっという間に5年10年と経って年齢を重ねてしまいます。自分自身にしっかりと投資をして、意思を持って行動変容を起こし、自分の人生の成果を出していく。そういう
自律した強い女性たちのネットワークを、これからも皆さんと一緒に共創していきたい と思っています。
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nanadecor(ナナデェコール) ファッションエディターの神田恵実さんが2005年に立ち上げたオーガニックコットンブランド。「美しく眠る」をコンセプトに、オンからオフモードへと切り替えるためのオーガニックコットンのナイトウェアや下着、アパレル、寝具などを展開している。2021年からは島根県奥出雲の山王寺の棚田でコットンを種から育てる「nanadecorコットンプロジェクト」を始動し、恵実さんが主宰するオンラインコミュニティMy organic laboのメンバー、現地で農家を営む藤原潤さんと共にパーフェクトジャパンメイドのピュアコットンの収穫、プロダクト販売を行っている。このようなピュアジャパンメイドのコットンを持続的に生育・収穫し、日本ならではのものづくりの価値を再定義し、 未来につなげていくための取り組み「Seed to Future」にも取り組んでいる。nanadecor公式サイトはこちら▼ https://www.nanadecor.com/ 「Seed to Future 2026」プログラムの詳細・参加はこちら▼ https://www.nanadecor.com/view/item/000000002446
神田恵実さん nanadecor Director, Juliette主宰。 睡眠改善インストラクター、AMPPルボアフィトテラピーアドバイザー、マインドフルネス指導者(MBSRストレス低減法、オックスフードMBCT-L)趣味はサーフィン、スキンダイブ、スノーボード、海山川でのフィールドワーク。 編集者時代からオーガニックな思想や文化を30年以上世界中で見続けてきた視点から著書『My organic note 』を、緊張をゆるめて眠ることを『頑張りすぎているからだとこころを休ませる本 ゆるめる自分 』(共にワニブックス)にて伝えている。ファッション誌の編集者として濃厚に仕事をこなし、駆け抜けた20代、昼夜問わない生活の中で"オーガニックコットンに出会い、睡眠の大切さを知り、QOLとフィジカルが激的に改善。それをきっかけとして、頑張りすぎる女性や、睡眠に悩む、眠れぬ人を眠れる人へ導くオーガニックブランド「美しく眠る nanadecor」をスタート。ビジネスを通じて、「オーガニックであること」が物事の本質を捉える生き方であることを知り、循環型社会の仕組みづくりや女性の雇用支援、衣食住にまつわる様々なオーガニックライフの提案を行っている。全員働き方が異なるフレキシブルな雇用形態で経営するJuliette は2005年創業。娘と夫と葉山の山の中で暮らしている。Instagram▼ emikanda_nanadecor