俳優・画家の鈴木杏さん(以下、杏さん)がOSIROのプラットフォームを通じて主宰する「シェアアトリエぷくぷく」は、2026年4月に1周年を迎えました。「誰もが安心して表現にチャレンジできる場」を求めて立ち上げたシェアアトリエぷくぷくは、今やメンバーそれぞれの“才能が発酵し発光する”豊かな土壌へと成長しています。
現在では数多くのギャラリーで個展を開催し、画家としても高い注目を集める杏さんですが、なぜシェアアトリエぷくぷくのような「創作や表現することの楽しみを分かち合う場」を創設したのでしょうか?
シェアアトリエぷくぷく創設の背景や想い、コミュニティとしての現在の姿、そして杏さんが思い描く未来の姿を聞きました。
シェアアトリエぷくぷく
俳優・鈴木杏さんの発信を通じて、表現活動を行う仲間同士が集い、創作物を共有、応援しあうことで才能を発掘していくオンラインコミュニティ。
「みんなの才能が発酵し発光していく場所」をコンセプトに、誰もが安心して自由に作品や創作物を発表し、自己表現できるような場を醸成している。コミュニティ内では鈴木さんがInstagramで発表していた1日1枚の絵の投稿を移行した「いちにちいちまい(毎日投稿)」のほか、毎月1回オンライン上でメンバーさんとテーマを決めて共有会を行う「みんなで発酵わいわいタイム」、それぞれの創作やお題投稿で発表された鈴木さんやぷくぷくさん(コミュニティメンバー)の作品を週1で公開する「みんなの作品」など、鈴木さんとともに創作を楽しめる環境となっている。
また、シェアアトリエぷくぷく限定ストアでは、鈴木さんのオリジナルTシャツや原画が販売され、鈴木杏さんの作品といち早く出会える。
シェアアトリエぷくぷく 新メンバー募集中!
シェアアトリエぷくぷくは毎月2日から9日までの間、「ぷくぷくさん(創作・交流プラン)」の新メンバーを募集しています。鈴木杏さんの日常や創作を楽しみつつ、自分自身も創作にチャレンジしてみたい方、創作やものづくり仲間をつくり、表現することを楽しみたい方は、ぜひコミュニティの情報をチェックしてみてください。
※「ほっこりさん(閲覧・応援プラン)」は随時募集しています
シェアアトリエぷくぷくの詳細・入会申し込みはこちら▼
https://pukupuku-anne.com/about
シェアアトリエぷくぷく公式Instagramはこちら▼
pukupuku.anne.official
自分を表現すること、創作することは、どんどんチャレンジしていい
DSC06156.jpeg 5.47 MBーー杏さんは2016年から創作活動を始め、現在はさまざまなギャラリーに招かれ個展を開催するほど画家としても注目されています。そのような中で、なぜ杏さんは「シェアアトリエぷくぷく」という場をつくろうと思ったのでしょうか?
鈴木杏さん(以下、杏さん): シェアアトリエぷくぷくの運営を担当しているオシロの
おぎーさんからお声がけいただいたタイミングは、ちょうど私が長野に移住して、そこでの生活や創作活動のアウトプットをどうしようかとマネージャーさんと話し合っている最中のことでした。
発信はしたいものの、創作活動や私生活のことをSNS上で不特定多数の人に向けて開示するのは少し不安があって、「もう少しクローズドな形をとれるいい方法がないかな?」と探っていたところでした。そんなときにおぎーさんから「アートを軸としたオンラインコミュニティやってみませんか?」と声をかけていただいて。その時は「あらま!そんな方法があったの!」と思いました(笑)。
ーー良いタイミングで提案されたのですね(笑)。一方で「クローズドな場での発信」と考えるとメルマガやファンクラブなどもありえたかと思います。相互交流が生まれるオンラインコミュニティを選んだのには、どのような想いがあるのでしょうか?
杏さん: 私は美術について教えたりとか、レクチャーしたりもできません。なので、むしろ私も画材や技法についてもっと知ることができて、みんなでシェアできたりもする場所をつくりたいと考えました。加えて、
私だったら創作活動や表現のハードルを下げることはできるんじゃないかとも思いました。
そう思えたのは、私が初めて開催した個展に来てくださった方から「自分もなにか描いてみたくなった!」「久々に創作を再開してみたくなった!」というお声をたくさんいただいたのをふと思い出したからなんです。私が自由気ままに創作している作品を観て、みんなが「芸術ってこんな感じでいい。自分が表現したっていい」と感じてくださったんだと思うんですよね。そんな言葉をいただいていたから、
「自分を表現すること、創作することはどんどんチャレンジしていい」というメッセージであればみんなに伝えられるし、分かち合えるんじゃないかと思いました。
ーー杏さんだけの創作活動の場ではなく、集まった方々も表現や創作にチャレンジし、その楽しみを分かち合える場にしたかったということですね。
杏さん: でも、立ち上げの際には本当に悩みました。ロケ地を車で行き来している時や滞在しているホテルの部屋とかで「どういうコミュニティになっていったらいいんだろう?」とずっと脳内打ち合わせをしている状態でした。
私がSNSで発信することに少し緊張してしまうように、集まってくださった方々も自分の作品を投稿するときにはとても緊張するだろうから、
最初の一歩を踏み出すハードルをできるだけ下げたかったんです。
「安心安全のコミュニティという場をつくって、どんどん自分が描いたものやつくったものをシェアできるようになってくれたらいいな」と、そんなことをずっとずっと考えて、ようやく今のシェアアトリエぷくぷくの形になっていきました。
トップ画像福福0401ver..jpeg 482.93 KB現在のシェアアトリエぷくぷくのメインビジュアル(画:鈴木杏さん)ーーたしかに。自分の拙さをさらけ出すのが恥ずかしいというのもありますが、ほかの人の目やリアクションが怖いという理由でためらってしまう方は多いと思います。杏さん: 私もちょうどコミュニティを立ち上げようと思っていた時期に、アーティストの方が制作過程をSNSにアップしたら、心ない言葉を投げかけられたというのを身近なところで耳にしていて。シェアアトリエぷくぷくには、もちろん既に画家活動をされている方もいますが
「これから創作にチャレンジしてみたい!」と思って入ってくださる方も多いです。私もそう思って入ってくれるのはとても嬉しくて、大歓迎なんです。だからこそ、そうした生まれたての才能が、一つの心ない言葉で傷ついて表現することをやめてしまうのは、とても嫌です。
もしかしたら、その才能は世界に羽ばたくポテンシャルを持っている可能性だってあるわけで、それが育っていかないのであれば、全人類にとっての損になります。クローズドなコミュニティをやる意味は、そうした心理的安全性や「みんなが朗らかにいることを前提とした優しい場所である」という前提を、しっかりつくれることにもあると思いました。
シェアアトリエぷくぷくは「思わぬ才能と出会える場」になっている
DSC06140 (1).jpeg 6.05 MBーーシェアアトリエぷくぷくは「みんなの才能が発酵し発光していく場所」をコンセプトにしています。才能が芽を出すためには、やはり自分自身の表現を安心して発表できる土壌が求められるということですね。
杏さん: そうなんです。やっぱり
アウトプットをしていくことも大切で、それができる場をつくりたいというのも、コミュニティをつくった理由でもあります。「家は三回建てないと満足しない」といいますが、まず最初にやってみると「もっとこうすればよかった」というものが出てくるものです。でも、それはやらないと見えてこないものだし、アウトプットをし続けなければその先には行けません。
だからこそ、
安心してアウトプットができる場があることはとても大切だと思っています。SNSは誰に響いてるのかがわからず、たまに暗闇にボールを投げているような感覚にもなります。それに、やっぱり誰かと比べてしまいがちなんですよね。誰かと比べる必要なんてなくて、自分には自分の素晴らしさがあるのに、人の良いところが見えて自分の悪いところばかりが見えてしまったりもして。そういうのも、とてももったいないと思うんです。
ーー2026年4月の杏さんの個展『やどる』の開催に合わせて、メンバーの皆さんの作品を集めたZINEを制作しました。先日みなさんの作品を拝見しましたが、みなさんの個性がよく表れている、とても素敵な作品ばかりでしたね。
杏さん: そういっていただけると本当に嬉しいですね。芸術にはもちろん「上手い」と「下手」という評価軸もありますが、それだけではありません。私たちはその人が「その人自身」を発揮しているものを観た時に、優劣を超えて感動するのではないかと思っています。
一番の見本は1〜5歳くらいの、まだ誰かと比べることが始まる前の子どもたちの絵です。その子が「その子自身」を思い切り発揮している。そんな子どもの輝きは、とても美しいです。でも、それは誰もが絶対にやったことがあるから、みんなそれを思い出せばいいだけで、またできるはずなんですよ。
表現をきっかけにして、みんなが自分自身を発揮できるようになれば、世界はもっと生きやすくなると思うんです。自己をもっと肯定できるようになれば、誰かのこともより尊重できるようになるし、その人のスペシャリティをちゃんと認めてあげられるようになっていくと思いますから。
DSC06418.jpeg 5.26 MBシェアアトリエぷくぷくのZINEプロジェクトに寄せられた作品たちーー多彩な作品が日々投稿されているシェアアトリエぷくぷくですが、杏さんとしても創作のヒントをもらったり、インスピレーションが刺激されることはあるのでしょうか?
杏さん: とても刺激されています!
シェアアトリエぷくぷくには、立体作品や版画、さらにはラグや布を組み合わせた作品をつくっている方もいたりと、創作の幅も実に多彩なんです。そんな作品たちを観て「そっか、そういうのもできるんだ!」と思うことが本当に多いです。まだ身体が追いついてなくて自分自身で創作にチャレンジできてはいないのですが、とても学び深いと感じています。表現の仕方で一番「そういう発想があったか!」となるのは、説明的じゃないんだけど伝わる作品を観た時です。そういうのを見ると、やっぱりグッときますね。
あとは、
メンバーさんが自分の新しい表現方法に出会う瞬間に立ち合えるのは、やっぱりすごく嬉しいです。例えば、絵を描いている人が、違う画材に出会ったり、新しい描き方を見つけたりすることで、その人の表現がより成長していくことがあります。そんなプロセスを見ていると、すごく貴重な体験をシェアしてもらっていると感じます。
ーーたしかに、そういった瞬間はまさに一期一会の機会です。特にシェアアトリエぷくぷくは創作未経験だった方も多いですが、入会してから創作にチャレンジし続け、素晴らしい作品を公開している方もいますね。そういった才能が開花する過程に立ち合えるのはまさに貴重で、尊い時間だと思います。
杏さん: 私たちは普段、画家活動をしている人たちが個展などで展示する「完成された作品」しか見ることができません。もちろんそれを観ることも素晴らしい体験ですが、まだ無名で可能性しかない人たちが、
まさに今才能に目覚めていく途上にある作品をたくさん観れる場所は、とても貴重です。これは私たち自身にとってだけでなく、芸術文化という面においても、非常に価値のある場所になっていると思っています。
シェアアトリエぷくぷくでは、本当に生まれたばかりの、できたてホヤホヤの作品を観ることができますが、このような場所は日本中探してもなかなかありません。なので、ぜひ美術業界の方々にもコミュニティの中を覗いてみていただきたいですね。
シェアアトリエぷくぷくは、すでに「思わぬ才能と出会える場」になっていると思います。
「伝わる」からこそ、描けること、話せることがたくさんある
DSC06066.jpeg 6.2 MBーー杏さんとしては、今のシェアアトリエぷくぷくをどのように感じていますか?
杏さん: 想像していた以上に、私たちが思い描いていた理想のコミュニティの姿が実現していると思っています。コミュニティの土壌は、私たちが「こうなったらいいね」と言ってできあがるものではありません。最終的にコミュニティを形づくってくださるのは、やはりメンバーさんだからです。それが、
オープンしてから1年間でこれほど素晴らしい場になってくれたのは、本当に嬉しいです。
ーーそこにはどのような要因があるのでしょうか?
杏さん: それはひとえに、
コミュニティで創作を楽しんでいるぷくぷくさんたち、そして私たちを見守って応援してくださっているほっこりさんたちのおかげだと思っています。メンバーさん同士のやり取りの温かさ、こうしてできあがったみんなのZINEに対しての熱意とクオリティの高さ、そしてZINEに限らずみんなが日々持ち寄ってくれるアイデア。どれもが当初の私の想像をはるかに超えた、本当に素晴らしいものです。
みんなが本当に楽しみながら、真剣に作品をつくってくださっているのを見ると、
シェアアトリエぷくぷくには無限大の可能性があると感じます。こういうことがどんどん積み重なっていってくれたらいいなと、心から思っています。
DSC06850 (1).jpeg.jpeg 4.36 MB個展『やどる』の会期中にはシェアアトリエぷくぷくのメンバー限定ギャラリートークを実施。メンバーに自身の作品を紹介・解説する鈴木杏さんーークローズドな場があるからといって、必ずしものびのびと活動ができるとは限りません。ポジティブなことだけじゃなく、時には弱音も吐ける。そんな関係性が生まれているのが、シェアアトリエぷくぷくの素晴らしさだと思います。
杏さん: 私もそこがとても良いところだと思っています。現実世界だと、どうしてもお仕事や生活のために無理をしたり「しっかりしなきゃ」と気を張らなければならない時が多いですよね。特に現代では「弱い存在」では生きづらいことが多いと感じています。でも、私たちは「強い存在」だけでいられるわけではなくて、
「弱くてもいいんだよ」って言ってもらえて、弱い自分のままでいられる場所が、どこかしらに必要なんです。
弱い自分を認めることこそ、自己肯定だと思います。社会の基準に当てはめた自分ではなく、ありのままの自分を認めてくれる。そんな場所が一つでもあるだけで、多分私たちは、生きていける。だから、
シェアアトリエぷくぷくが、よりそういう場所になっていってくれたらいいなと思っています。
ーー近年、アートによって心身の健康や社会的つながりを促進する「文化的処方」という取り組みが世界的に注目を集めていますが、シェアアトリエぷくぷくはまさに文化的処方が自然に取り組まれている場所だと思いました。杏さんにとっても、そういった実感はありますか?
杏さん: むしろ私が一番実感しているかもしれないですね(笑)。 でも、それは「伝わる」っていう実感があって、変に誤解もされないという前提があるからこそ。絵を描くことはもちろん、文章を書くことだったり、こうして話すこともそうです。
ここだからこそ描き(書き)たいこと、話したいことがたくさんある。
それは私にとってもすごくありがたい場所で、
ここでの発信をすることを通して、ひっそり鍛えられていってるものも多いと感じています。ちょっとどこか、みんなを巻き込んだ自主練みたいなことをやっている感覚もあって(笑)。でも、みんなにとってもそれでいいと思うし、いざ自分が個展やライブなどでなにかを発表する時までの、練習の場所になってくれたらいいなとも思っていますね。
シェアアトリエぷくぷくの1周年はZINE、2周年はグループ展の開催
DSC06780.jpeg 6.06 MBーー2026年は、杏さんにとって「俳優生活30周年」「画家生活10周年」「シェアアトリエぷくぷく1周年」と節目が重なっています。ご自身のキャリア、そしてシェアアトリエぷくぷくの今後のご展望についてお聞かせください。
杏さん: 2016年に「ほぼ日手帳」に絵を描き始めてから、今年でちょうど10年になります。今年は立て続けにギャラリーでの展示が続いているので、「10年続けていると、こんなふうに道が開けていくんだな」というのをしみじみ実感しています。今もちょうど個展を開催しているのですが(※取材時)、
いよいよ本格的に「画家」になってきたという感覚があります。
もちろん、俳優として30年も活動させていただいていることはすごいことで、活動を支えてくださっているすべての方々には感謝してもしきれない想いを持っています。俳優としてのキャリアはずっと地道に、着実に積み上げてきたものだと思っているので、それ以外に方法はないと思っています。今後も地道に、着実に活動していきたいですね。
ーー最後に、シェアアトリエぷくぷくの今後についても教えてください。
杏さん: 「シェアアトリエぷくぷく」も1周年! いよいよ2年目に入ります。実は、
すでに来年、ぷくぷくさんたちとのグループ展を開催することが決定していて、打ち合わせも始まっているんです。1周年の成果が今回のZINEだとしたら、2年目はグループ展で形にしていきます。
最初の1年は、コミュニティの空気感や関係性といった「土台」をつくることにしっかり時間をかけられました。だからこそ、
2年目はもう少し「外に広がっていくこと」を意識していきたいと思っています。 シェアアトリエぷくぷくに参加してくれる人がもっと増えてくれたら嬉しいなとも思いますし、このZINEを片手に「シェアアトリエぷくぷくですよ〜!」って、いろんなところに宣伝しに行けたらいいですね(笑)。
この1年で土台が強固になったから、今後メンバーがぐっと増えたとしても、もうブレない場所になっていると思うんです。むしろ人が増えることでより活気が出て、お互いに刺激し合える、さらに良い場所になっていくだろうと確信しています。
DSC06924.jpeg 8.68 MB
鈴木杏さん
1987年生まれ。東京都出身。
1996年にTVドラマでデビュー後、多くのドラマ、映画、舞台で活躍。
近年の出演作に、NTV「ホットスポット」、NHK「大奥」第2シーズン、舞台「骨と軽蔑」など。
俳優活動を続けながら、2018年にクラウドファンディングで、イラスト&エッセイ集「すきま」を出版、2022年にgoen゜vol.5「この世界、すべてがキャンバス 鈴木杏のアトリエ展」、2026年に SISON GALLERyにて「 やどる 」 “Something begins to live” と題した個展を開催するなどアーティスト活動も行う。2025年4月27日の自身の誕生日には「それぞれの表現を応援しあえる場所をつくりたい」という想いからオンラインコミュニティ「シェアアトリエぷくぷく」を創設。
鈴木杏さんプロフィール・最新情報はこちら
鈴木杏さん公式Instagramはこちら
関連記事
鈴木杏さん主宰「シェアアトリエぷくぷく」のZINEプロジェクトに密着!コミュニティ発のZINEが生まれるまで
鈴木杏さん主宰「シェアアトリエぷくぷく」座談会 “他者と比べない、自分をジャッジしない。誰もが表現を楽しみ、分かち合える場所を”