OSIRO Dialogue – 対談まとめ SNSとオンラインコミュニティはどう違うの?
ファンクラブとオンラインコミュニティの違いってなに?
多くの人が感じる疑問だと思います。
そんな疑問に答えてくれるコミュニティがあります。
ライフスタイルモデルとして活躍し、アンダーアーマーグローバルアンバサダーも務める栗原ジャスティーンさんが主宰するコミュニティ『Schellin Fit』。
今年5月、「フィットネスを通してライフスタイルを豊かにする」のコンセプトのもとフィットネスコミュニティとしては日本最大規模となる1000人以上のメンバーでスタートしました。
SNSを中心に活動してきた栗原さんにコミュニティ活動や運営、また今後の展望まで、コミュニティプロデューサー高田がお話を伺いました。
Vol.05 栗原ジャスティーンさん
ライフスタイルモデル /『Shellin Fit』主宰者
〈目次〉
・コミュニティを始めた経緯
・SNSとは異なるコミュニティならではの発信
・メンバー約1000名 〜 Schellin Fitの運営の取り組み
・メンバーを主役にするためのコミュニティ運営の工夫
・コミュニティがあるからこそ実現できたこと 〜 Schellin Fitのこれから
コミュニティを始めた経緯
高田:コミュニティを始めるまでに7、8年構想期間があったとお伺いしていますが、実際に始めた理由をお伺いできますか。
栗原:私自身10代の頃は、トレーニングやダイエット、ポジティブなマインドを作るという人生にとってすごく大事な部分にとても苦労していました。20代になりいろんな経験を積んで、その頃の苦労やネガティブだったものをやっと変えることができました。
なぜ当時それほど苦労したかというと、メディアで得る情報が正しいとは限らない、けれど悩んでいる時って何でもそれが本当だと信じ込んでしまうんですよね。そしてどんどん自分の身体を害して、メンタルも落ちてしまうスパイラルにはまってしまったんです。
でも、これだけいろんな情報がある中で、それは仕方ないことだと私は思っています。
だから、私みたいに苦労している人に「ここならちゃんとした情報があるよ」と、そういう場所をつくりたいと7年ほど前に決意しました。
高田:7年前はロスにお住まいですよね。
ロスでフィットネスに取り組もうと思われたのには、どんなきっかけがあったんですか。
栗原:ロスに引っ越して、街中ではみんなブラトップにレギンスでヨガマット抱えて歩いて、すぐにできた友達も「毎週ヨガ行こうよ」と。みんなで体を動かすことを楽しむ雰囲気があって、元から運動が大好きだったので、すごく楽しくて。
ボディービルのメッカと言われるベニスビーチのゴールドジムに通うようになり、そこは女性が多いのですが、その女性たちがみんな本当に自信に溢れていて、きれいで。顔のパーツが良い、身体がどうという以前に、内側からのエネルギーや自信があまりにもすごくて、私も彼女たちみたいになりたいと思い入り込んだという感じです。
高田:日本でもそういう文化ができたらいいなと、その一歩としてSchellin Fitがあったわけですね。
SNSとは異なるコミュニティならではの発信
高田:今回対談の大きなテーマとして"SNSとの違い"を掲げています。SNSもいろいろされていると思いますが、意識して発信を変えたりしているのでしょうか。
栗原:まずコミュニティとその他のSNSの違いは、有料か無料かという大きな違いがあります。
お金が発生するしないの差は、提供する情報クオリティにあるので、Twitter、Instagram、ブログでは詳しいトレーニング情報や効果は発信せず、みんなの気分が良くなることや、私生活、その時の気分を発信しています。
その一方で、コミュニティはお金が発生する以上ちゃんとした情報を提供します。払っていただいている対価以上のものをみなさまに提供するという意識を持ってやっています。
高田:有料だからこそ、それだけの価値をみなさんに提供したいという想いで変えているということですね。
栗原:そうですね、Youtubeは年に2回くらい8分程度の動画をアップするだけなんですが、コミュニティ内では毎月10本くらい配信しています。意識の上でもそれくらいの違いがやっぱりあります。
メンバー約1000名 〜 Schellin Fitの運営の取り組み
高田:Schellin Fitをどうやって運営しているのかというところをお聞きしたいと思います。
今約1,000名のメンバーさんがいらっしゃると思いますが、運営体制はどのような感じなのでしょうか。
栗原:今は、私と編集周りを担当してくださるカメラマン、メール対応などをしてくれる運営スタッフの3名です。
高田:ジャスティーンさんは、その中でトレーニングの動画だったり、ニュースレターを書いたり、ほとんど一人でやられているという感じですか。
▲ 毎月たくさんの企画をジャスティーンさん自ら手掛け、カレンダーも自作ている
栗原:中のことや企画、コラボレーションは、今のところ全て私がやっています。活動内容も変化を持たせた方がみんな新鮮味があって楽しいと思うので、私だけではなく毎月新しいトレーナーさんを呼んでいるんですが、そういう方のキャスティングとやり取りも全て私がやっています。コンテンツの画像もコミュニティのイメージがわかりやすくなるように全部自分で考えて作っています。
高田:メンバーさんが運営を手伝ってくれたり、運営に参加したりするような機会はあるのでしょうか?
栗原:みなさんいろんな意見やアドバイスをくれたり、新しく入ったメンバーが迷っている時には教えてあげたり、自発的に動いてくれています。
コミュニティ内ではメンバー自らイベントを自分で立ち上げられるので、積極的に企画してくれたり。グループも朝活、ランニング部など、盛り上がっていますね。
メンバーを主役にするためのコミュニティ運営の工夫
高田:コミュニティを運営していても、オーナー主導の発信になってしまい、メンバーさん同士の活動が起きないというのは、みなさん悩まれているところだと思うんですね。
Schellin Fitがこれだけ盛り上がっているのには、どんな要因があると思いますか。
栗原:目的がジャスティーンのコミュニティではないというところだと思います。「みんなで自分の力で人生をより良くしよう」という同じ目標を持った人たちが集まっているコミュニティなので、私のファンクラブという感覚ではありません。
だから私から一方的ではなく、メンバー間でも「人生をより良くするにはこういうのが必要なんじゃないか」とか、そういう提案をみんなで一緒に考えていく場所になっていて、私はただその場所を提供している感覚です。
みんなのバランスを見ながら、私は必要に応じてリーダーにも、友達にも、中和役にもなります。リーダーとして突っ走るだけでなく、時には一歩引いて一緒に参加したり、みんなが同じ目標を持って活動するスペースをつくり上げるというイメージです。
▲ さまざまなトピックで盛り上がるグループがたくさん
高田:ジャスティーンさんのようにSNSで影響力のある方がコミュニティを運営すると、1対1、つまりファンとジャスティーンさんという構図になりがちなところ、Schellin Fitではそれが起きていないということなんですね。
コミュニティに向いている人・向いていない人に関して、ジャスティーンさんなりに考えはありますか。
栗原:信念を持っていない人は向いていないと思います。「これをやりたい」という強いものがなければ、絶対にできない。例えば、「なんとなく今時間があるから始めてみようかな」「影響力があるからやってみようかな」では、絶対にできない。
私の場合は、本当に苦労した分「それを変えたい、苦労してほしくない」という強い気持ちがあります。そこが軸となっているので、ぶれることなくできているのですが、その強い軸となるものを持っていないとできるものではないと思います。
高田:ジャスティーンさんの場合、“動画を配信して、フィットネスプログラムを提供する” みたいなやり方もできたと思うんですね。それでもあえてコミュニティを作ったのはどうしてですか?
栗原:ここが7年かかった理由でもあるんですが、私は実際自身が身体も心もネガティブだったところからボジティブになるという経験を経ています。
「今は幸せです、ポジティブです」とSNSで発信している人が結構いますが、その中で本当に変われた人って意外と少ないと私は思っています。表面上の気持ちは「今輝いている」「ポジティブ」と言っていても、内面から本当に変わるのはすごく難しくて。
本当に変えるためにはトレーニングを真似するだけではだめですし、トレーニングだけやろうとしても続くものではありません。
よくあるのは、トレーニングをすること自体が目的になってしまい「人生を楽しくするため」「健康になるため」など最終的なゴールを忘れて、とりあえずジムに行って体を変えようとしてトレーニング中毒になってしまうこと。
本当に変わるためにはトレーニングだけではダメだということをこの7年で学びました。じゃあどうすればいいかというと、マインドから変えなくてはいけない。それは、毎月リフレッシュしてゴールにはしごを掛けて登っていく感覚。
そのはしごを掛けるためにも、マインドセットで必ずそのゴールを設置するというのが大切なんです。
ただ、独りだと目標って継続しにくいですよね。日々の目まぐるしい生活の中で、今年の初めに掲げた目標なんてみんな忘れちゃいますし。でも誰かにサポートされていると目標って忘れないんですよね。だから、みんなでサポートしあう。
コミュニティ内でも「ネガティブな気持ちになったら言っていいんだよ」と伝えています。みんなでポジティブなエネルギーで声をかけてサポートする。すると、またやる気が湧いたりするんです。
私は「行動・マインド・チーム」がすごく大事だと考えていて、この3つを軸にした場づくりを心掛けています。
高田:学生時代の部活をイメージしました。全国制覇みたいな目標・コンセプトがあって、そこに向かって、みんなでそれぞれ目標を立ててやっていくことでそのビジョンが叶っていく。そのためには一緒にがんばる仲間が必要。
栗原:誰かが頑張っているのを見ると、“わたしもやろう!”という気持ちになりますよね。
TwitterやInstagramにはトレーニング以外の情報も沢山ありますが、コミュニティという心地良い枠の中では、ページを開くとみんなのポジティブでエネルギッシュな活動を見て自然とパワーを得ることができる。“あの人も挑戦しているなら私も頑張ってみよう!”とか。
コミュニティに入って、仲間の努力を見て、“私も!”と目標ができる。良い連鎖がいっぱい起こっています。
これも全て、自分たちでブログが書けたり、つぶやきが書けたり、コミュニティという枠だからこそ起こるんだろうなと思っています。私がただトレーニングを提供するだけだったら、今の様な場はできていないはずです。
高田:別の軸で、“コミュニティがあったからできた”と感じることはありますか。
栗原:今言ったようなポジティブな連鎖が起きたり、“人の役に立とうと”思える人が増えてきているのを感じます。
例えば、モンテッソーリ教育の知識があるメンバーが “子育てで悩んでいる人がいるかもしれない" とイベントを立ち上げたり。受け身ではなく、みんなが “人の役に立つには何ができるんだろう"と考える場所になっています。
今朝もイベント内ですごく笑っていたらしくて、“大人になってから思いっきり笑える友達ができたのは初めて!”という声もあったり。
女性は妊娠出産を経験して、産後鬱になる方もいたり、友達がいない、家族が周りにいないという女性も意外と多くいます。
大人になってから新しい友達を作るのってすごく難しいんですよね。
そういうのも含めて、「新しい仲間に出会える場所」。
これが私がコミュニティをやりたかったもう一つの理由です。
今朝笑い合えたメンバーも、新しい友達がいなかったら、笑うことができなかった。
新しい出会いがあり、新しい友達ができたからこそ、朝から笑って過ごすことができた。
新しい仲間に出会えるということは、コミュニティの本当に素敵なところだなと思います。
高田:Schellin Fitは今すごく良い状態だと思うのですが、今後ジャスティーンさんはどうしていきたいとお考えですか。
栗原:この軸をぶらさず、みんなのエネルギーを広げていきたいと考えています。
例えば、Schellin Fitのメンバーが職場でもポジティブなエネルギーを放って、良い雰囲気を作れたり、家庭ではそのパワーで子供が活発に明るくなったり、夫がもっと明るくなったり。
そういう連鎖が実際に起こり始めていて、「Schellin Fitに入ってから、笑顔が増えたよね」「私が運動始めたから夫も運動始めたんです」「機嫌が良い時間が長くなったんです」という声を聞きます。
メンバーが全国にいるので、メンバーの周りがどんどん明るくなって、全都道府県に “運動って素晴らしい” ということがもっともっと広がればいいなと思っています。
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栗原ジャスティーン
TV、雑誌、SNSなどのメディアを通してフィットネスカルチャーと「美しさの多様性」を広める活動を発信。15万人のインスタグラムフォロワーを誇る。
小学生の頃から本格的にテニスに取り組み選手育成コースに所属、中学生でモデル活動をスタート。がっちりとしたアスリート体型だったことから“モデル体型になるため痩せて”と言われ、無理なダイエットを続けた結果4年ほど摂食障害に苦しむ。
21歳で香港のモデル事務所に移籍したことをきっかけに、読書と瞑想習慣を身につけ心を豊かにする方法を見つける。その2年後、昔からの夢を追いかけLAに移住、現地のタレント事務所に所属。そこで通い始めたベニスビーチやハリウッドのジムで輝いている女性トレーニーに影響を受けて本格的にトレーニングを始める。ここで初めて心と身体のバランスが取れたトレーニング方法に出会い、その健康美を広く伝えるため日本へ帰国。
2016年からDNS、アンダーアーマーアンバサダーに就任。
2019年からはアンダーアーマーグローバルアンバサダーを務める。
2021年5月日本最大規模の女性フィットネスコミュニティ"Schellin Fit”をスタートさせる。
▼ Schellin Fitの活動についてはこちら
フィットネスを通してライフスタイルを豊かにする
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コミュニティプロデューサーによる、コミュニティダイアローグ
『OSIRO Dialogue』コミュニティープロデューサーによる、コミュニティダイアローグ
日々コミュニティ運営者と伴走するコミュニティプロデューサーが何より大切にしていること、それは「ダイアローグ」。 コミュニティオーナーが本気でやりたいことを理解し、 どうやってコミュニティで実現するかを共に考え、伴走します。このシリーズではそんな一コマをシェアしていきます。
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高田 和樹コミュニティコンサルタント・プロデューサー
アパレル、大手メディア運営企業、外資系研修会社等を経て、プロのカヌー選手として国内外を転戦。アスリートの傍ら、オンラインコミュニティ黎明期の2010年代からコミュニティプロデューサーとして活動開始。会員組織の活性化はもちろん、コミュニティを起点とした新規ビジネス創出を得意としている。理論だけでなく、自らコミュニティを運営してきたリアルな成功、失敗体験に裏打ちされたアドバイスで大手出版社、メディアコンテンツのコミュニティDXを推進。SNS運営やPCのセッティングまで「コミュニティ成功のためならできることは何でもやる」のが信条。最近の趣味は焚火。以来、コミュニティと薪に火を着け続けている。
・約1年で会員数100人アップ!そのポイントは?
・アップデートを繰り返し改善を続けるその意図は?
・会社のなかで、コミュニティの立ち位置はなにか?何を求められているのか?KPIは?
・学生アンバサダー制度。どういう経緯で?
・企業とメンバーの業務案件マッチング。それが実現可能になったのはなぜか?
Text: 村山 愛津紗 / コミュニティアドバイザー・ライター