コミュニティ熱量研究所 – 対談まとめ「コミュニティxデータ」で “所長” ことデータサイエンティスト鈴木がOSIROユーザーのリアルなコミュニティ運営に迫る『コミュニティ熱量研究所』。
コミュニティ運営の成功の裏には “コミュニティマネージャー” と呼ばれる人達のたゆまぬ努力があります。オーナーが兼任するケースも多くありますが、今回は現役でコミュマネとして活躍するWasei Salon長田さん、Letus水谷さんをゲストに迎えコミュニティマネージャー視点から見るコミュニティ運営を伺いました。
対談 Vol.04長田涼さん / Wasei Salonコミュニティマネージャー
水谷明日香さん / Letusコミュニティマネージャー
対談動画フルバージョン | 2021/09/30
『Wasei Salon』〜 これからの“働く”を考えるコミュニティコミュニティ開始日: 2019年8月
参加費:一般 1,650円・学生 825円 / 月(税込)
メンバー数:開始時28名 – 9月対談時点80名
『Letus』〜 投資のスクールで得た経験知を仲間と共有し学びを深めるコミュニ ティコミュニティ開始日: 2017年7月
参加費:5,500円 / 月(税込)
メンバー数:開始時10名 – 9月対談時点220名
〈目次〉
・コミュニティマネージャーになった経緯
・前例がないコミュマネのチャレンジ
・居心地の良さを創るための取り組み
・メンバーのアクション力を引き出す工夫
コミュニティマネージャーになった経緯
オシロ鈴木(以下、所長) : まず最初にお二人がコミュニティマネージャーになった経緯を教えていただけますか?
長田 : 僕は、Wasei Salonがあったところに入ったというわけでなく、Wasei Salonの主宰者で株式会社Wasei代表の鳥井さんと出会い、彼の中でこういうコミュニティをつくりたいという構想があって、それを相談いただき、じゃあ一緒にやろうとなって、立ち上げのところからご一緒させてもらいました。それで、結果としてコミュニティマネージャーになったというのが、3年半くらい前の話になりますね。
水谷 : 弊社はもともと投資を学び合う場所ではあったので、コミュニティのような人が関わる場所はいくつかあったのですが、オフラインで少しやっているだけで、今みたいなLetus主体ではなかったんです。
4年くらい前に、弊社の代表とつながりがあったコルクラボさんがいろいろと活動をされていて、OSIROというシステムでやっていると教えてもらい、ここだったら自分たちが実現したいコミュニティのスタイル、オフラインとオンラインを掛け合わせた場所を作れるんじゃないかということでコミュニティを立ち上げることになりました。
当時、コミュニティ事業はなかったのでどこの部署がやるの?となった時、広報部で私が携わることになりました。
前例がないコミュマネのチャレンジ
長田 : コミュニティの価値を自分たちで描くわけじゃないですか。そのために具体的にどういうことをやってきたのですか。
水谷 : 当時は模範となったコルクラボさんの形があって、"コミュニティを育て、人が集まり、熱量が高まると、また人が集まって居心地の良い場所になる"ことが、最終的に企業としての価値、ブランディングの向上につながるのではと感じていました。
なので利益との兼ね合いは一旦度外視して、まずは居心地の良い場所、人が集まる価値の高い場所をつくろうと考えてやっていましたね。
長田 : 今はコミュニティの事例が増えたので、いろんな情報がインプットできるようになりましたが、4年前はそもそも情報が全然なかったじゃないですか。その中でコルクラボさんという見本となるコミュニティがいたのは結構大きいかもしれないですね。
水谷 : 長田さんが3年半前にWasei Salonに参画された時は、初のコミュニティマネージャーだったわけですよね。
長田 : そうですね。当時は周りもコミュニティマネージャーはあまりいなかったですね。コミュニティーオーナーは増えてきた印象があって、、ホリエモンさんや箕輪さんのようなインフルエンサーの方がオンラインサロンを生み出していくっていう流れはきていましたね。
コミュニティマネージャーとして名乗っていた人は数える程しかいなくて、コミュニティマネージャーってみんな何やってるの?みたいな感じで。
コルクラボさんみたいにコミュニティとして参考にできるものはたくさんあったのですが、コミュニティマネージャーがどう動くかみたいな話は全然可視化されていなかった。
水谷 : 私もコミュニティマネージャーとしての立ち振る舞い方が全くわからなかったので、OSIROさんに手取り足取り教えてもらっていたのを覚えています。
本業では"スクールと生徒さん"という1対1の要素がメインなところから、生徒さん同士を繋げる形をつくる必要があるので、私たち運営も参加する生徒さんも文化形成が大変でした。
主体性を発揮し、"学ぶことが楽しいんだ"という文化をどう浸透させていくかというのは、運営の立ち振る舞いとしてかなり意識していたなと思いますね。
私たち運営からの答えを待つのではなく、発信することやイベントを主催することを楽しんだり、自分が学んだことをアウトプットすることで反応が返ってくるという連鎖をコミュニティの中でどう生み出すのかは結構考えたと思います。
そのために、最初に入ってくれたコアメンバーと密にコミュニケーションをとって、一緒に企画する取り組みをよくやっていました。
居心地の良さを創るための取り組み
所長 : 居心地の良いコミュニティづくりというテーマに対して、どういう人を入れていくか、どうサポートするかは大切な部分だと思っています。
Wasei Salonさんは30名くらいからコミュニティをスタートし、今は80−100名くらいの方で安定しています。 "どういうタイミングで人を入れていくか"はすごく大事なポイントだと思っていて、Wasei Salonさんは毎月メンバーを入れているところが特徴的ですね。
Letusさんは、2019年3月くらいから会員が一気に増え、2年以上200名をキープしています。2,3ヶ月に1回、新規メンバーを入れるという集客方法をされていますね。
▶︎ Wasei Salon: 3つのポイントと文化
長田 : 人を増やしたいというのはあまり思っていないです。それよりも、いかにWasei Salonの価値に共感した人がちゃんと集まってくれるかということを大事にしています。
入会は月1回招待する形をとっていて、招待する方々は3つの条件を満たしている方に限定しています。
1)事前登録ページから登録してくれた人
2)事前登録後のアンケートフォームに回答してくれた人
3)Wasei Salon主催のイベントに参加したことがある人
この3つ目のハードルがめちゃくちゃ高い。
この条件でやっていけば、本当にWasei Salonを大切にしてくれる人たちが集まってくれるという感覚があります。入会のハードルを下げたくないというのは、僕たち運営がいつも考えているポイントです。
なぜなら、(入会条件が多少厳しくても)こっちの方が結果としてみんな幸せだよねということをすごく感じていて。よく聞くようなコミュニティで起こるエラーは、うちでは1回も起こっていないぞと。入り口設計のところであれだけこだわってやってきたからだなと思っているんです。
主催のイベントでも、Wasei Salonについて簡単に話をさせてもらいますし、Wasei Salonの空気感を体験してもらう読書会なども開催して「こういう人たちがWasei Salonにいるんだ」「こういう空気感で活動できるんだ」ということを感じてもらい、コミュニティに入ってからも馴染んでくれているので、そこに大きなポイントがあるんじゃないかと感じていますね。
▶︎ Letusの集客:学びと共有の場所
水谷 : うちの場合は、広く一般の人に入ってもらうというよりも、学校がまずあるので、母体となる学校に通っている方をコミュニティメンバーの対象としています。
入会の時は、スクールの通学状況、なぜ学びたいのかというアンケートをしっかりとるようにして、入ってもらっています。それを2,3ヶ月に1回というスタイルでやっています。
最初の2年間は招待制で、こちらからお声がけをして特別会員として入っていただく形でコミュニティをしっかり作り上げ、その後スクール生が希望すれば誰でも入れるように切り替えて、そのタイミングで人数がぐっと増えた感じですね。
所長 : 卒業生の方がコミュニティに入る一番の動機や目的はどのようなことなのでしょうか。
水谷 : 大きく2つだと思います。まずは学び続けられる場所を求めている。スクールを通してしっかりと学んでいても、実践の場に行くといろんな壁にぶつかるので、それをコミュニティに属して解決するイメージですね。あとは、純粋に投資やお金のことについて話せる場所がないので、気兼ねなく話したいということ。お金や投資のことって思い切って話せないですよね。
運営の工夫としては、私たちが運営として説明会や交流会をするのではなくて、メンバーに一緒に入ってもらって、運営サポートメンバーと、私と、新規メンバーと、という感じで一緒に交流会や説明会を運営し、しっかりとコミュニケーションをとる場をつくるようにしていますね。
メンバーのアクション力を引き出す工夫
所長 : リアルな数字になるのですが、お二人のコミュニティの解約率のデータもお見せしたいと思います。ちなみにOSIROのコミュニティの中で解約率の平均が月に7-8%です。
Wasei Salonさんの場合は、平均の解約率が4.5%。居心地の良いコミュニティになっていることが数字にも出ています。
Letusさんは、会費は月額5,500円なのですが、それでも解約率が3.9%。こちらも低い数字になっています。継続して学ぶコミュニティになっているように思います。
先ほど、メンバーの方に主体的にどう動いてもらうかみたいな話があったと思うのですが、OSIROではメンバーのアクション量を示す指標を「熱量」と呼んでいます。コミュニティのアクションは、イベントやブログ、チャットなどいろんなコミュニケーションがありますが、そういったアクションを一つの指標にまとめたものが「熱量」です。OSIROでは、この熱量が200あるとコミュニティがとても盛り上がっている状態としています。
Wasei Salonさんは200くらい。中でもイベントがすごく多くなっています。Letusさんは160くらいなのですが、学びという部分でブログの投稿が多くなっています。
長田 : うちの場合は、コンセプトに「これからの働くを考えよう」というテーマをおいています。なので、一見「働く」に関することばかりやっているように思われるのですが、実は「働く」というテーマをど真ん中においたイベントはあまりないんですよ。
"自分が納得できる「働く」を実現するってことは、つまり納得した人生を生きることだ"というくらい「働く」を広く捉えていて、哲学的な問いを考える対話型のイベントがすごく多くなっています。例えば、「今の時代にあう結婚とはなんだろう」とか、「楽しく働くってできるものなのか」とか、価値観の交換みたいな対話が起こるイベントが多いです。運営が主催しているイベントは数えるほどしかなくて、月20のイベントがあるとしたら、たぶん2、3。あとはメンバーの方々がそれぞれ企画してくれています。
水谷 : メンバーから声が上がりやすいのは、当初からなのですか?
長田 : これは本当にコロナのおかげがあって。
以前はリアルの場のイベントが多かったのですが、会場費などの運営コストが高いので、できても月2,3回なんですよね。でも今は無料のZoomがあって、参加者1人になったとしても開催できるような状況なので、前のイベントという感覚ではなくなってきています。
「ちょっとみんなで部屋に語りに行こうぜ」「ちょっとおしゃべりしに行こうぜ」みたいな感覚になってきていますね。
運営が参加しなくてもコアメンバーの皆さんがサポートしてくれるんですよね。だから僕らは全然心配にならないし、コアメンバーに助けられているところはありますね。
水谷 : うちのコミュニティは、自分が動いても良いのかなと探り合うメンバーが結構いて、やりたい気持ちがあるけど動けないというのがあったので、メンバーに役割をつけて、運営サポートメンバーとして動いてもらうことが多いんです。でも、そういったことなく、自主的に動かれるんですね。
長田 : そうですね。自分はコミュニティに対してこれで貢献できるという感覚を持っている人が多いんじゃないかという気がしています。そういう人はその人なりのペースでやっているイメージはありますね。
所長:今回もあっという間に時間がきてしまいましたが、最後に今日の対談はいかがでしたか。
長田 : 今日はありがとうございました。すごく楽しかったですし、コミュニティの違いが見えたのがすごくおもしろかったなと個人的に思っていて、そのコミュニティにはそのコミュニティの色があって、もちろんWasei Salonの僕が言っていることは、もしかしたらLetusさんではうまくいかない可能性も全然あるし、その逆も然りというか、でもそういうのがコミュニティのおもしろさだなと思ったので、またこういう機会でいろんな人と話してみたいなと思いました。
水谷 : 本当にお声がけいただいた時は緊張ばかりだったのですが、今日お話させていただいて、自分自身のコミュニティについて改めて4年間の歴史を振り返るきっかけになりました。またモチベーションというか、やってやろうという気持ちにもなりますし、また違うコミュニティの話を聞くことで、より自分たちのコミュニティの文化が強くなるなという気持ちがあるので、本当に貴重な機会をありがとうございます。
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鈴木 駿介/オシロ株式会社コミュニティ熱量研究所 所長
コミュニティ・データサイエンティスト
筑波大学大学院、物理物質科学研究科で修士号を取得後、ライオン株式会社に研究職として入社。生産性を考慮した新製品の容器設計、工場での生産導入に従事。実際にユーザーとして、複数のコミュニティに属した経験からコミュニティの可能性を感じオシロに入社。2019年8月に導入されたコミュニティの状態を可視化し、運営者がスピーディーな意思決定を行えるサイドダッシュを開発。熱量研究所の所長としてコミュニティの盛り上がりを可視化する熱量指数を研究、データを活用した新機能開発やコミュニティプロデュースを行なっている。
Text: 村山 愛津紗 / コミュニティアドバイザー・ライター