OSIRO Dialogue – インタビュー
コミュニティープロデューサーによる、コミュニティダイアローグ『OSIRO Dialogue』
日々コミュニティ運営者と伴走するコミュニティプロデューサーが何より大切にしていること、それは「ダイアローグ」。 コミュニティオーナーが本気でやりたいことを理解し、 どうやってコミュニティで実現するかを共に考え、伴走します。このシリーズではそんな一コマをシェアしていきます。
Vol.01 青山裕企さん
ユカイハンズ・カレッジ主宰者
写真学校サークルコミュニティ「ユカイハンズ・カレッジ」のオーナーであり、Mr.Portraitの異名を持つ写真家の青山裕企さん。『スクールガール・コンプレックス』『ソラリーマン』『少女礼讃』など、多くの人気作品を生み出している青山さんが、オンラインコミュニティをスタートした背景にはどのような想いがあるのでしょうか。青山さんがカメラを始めたきっかけや、「ユカイハンズ・カレッジ」における活動、これからのビジョンに至るまで、コミュニティプロデューサー青柳がお話を伺います。
作品づくりは、日常生活の延長線上にある。
── 青山さんは写真家として20年以上活動されていますが、改めて、まずはカメラを始められたきっかけから伺えますか?
青山:最初に写真をはじめたのは今から23年ほど前。それまでは写真が好きだったというわけではなく、むしろ打ち込めるものが無くて悩んでいました。「自分はどうやって生きていけばいいのか」という漠然とした不安を抱いていた当時、本屋で自転車旅行の本を見つけて思い立ち、北海道から沖縄までの一人旅を始めてみることにしたんです。いざ自転車旅に出てみると、それまで狭い世界で悩んでいたことがどうでも良くなって(笑)。スタートが北海道だったこともあるんですが、目に飛び込んでくる景色の雄大さや美しさがとにかく感動的で、それを写真に残したいと思ったことがカメラを手に取ったきっかけですね。
── 今やMr.Portraitとも呼ばれる青山さんですが、当時から人物をメインに撮影されていたんでしょうか。
青山:当時はまったく撮りませんでした。とても人見知りだったので、撮るのは風景写真と、セルフタイマーで自分を撮る記念写真くらい。ただ、その記念写真も、自分に自信がなかったので全然面白い写真に思えませんでしたね。その後、思い付きでジャンプして撮影をしてみたら、思いのほか写っている自分の姿が面白く見えるようになったんですよ。
── 青山さんの代表作『ソラリーマン』にもつながる原体験のように感じられます。
青山:その通りです。写真家やアーティストというと、「センスが人と違う」「独創性にあふれている」などと思われがちですが、少なくとも自分に関しては全然そんなことなくて。写真は今や誰もがキレイに撮ることができますし、ものの見方ひとつで作品にだってなり得ます。だからこそ自分は、日常生活というものがあって、その延長線上にこそ作品が生まれるものだと考えていますね。
▲青山さんの代表作として知られる、スーツ姿のソラリーマンが宙に浮くシリーズ「ソラリーマン」
オンラインコミュニティは、自身の生き残り戦略でもある。
── OSIROのサービスをご利用いただくに至った経緯についても、ぜひ伺えますか?
青山:実はオンラインコミュニティの運営は以前から考えていました。かなり現実的な話になってしまうんですが、先ほどのお話にも挙げたとおり、今は写真を誰もがキレイに撮れる時代。これは言い換えれば、プロたちにとっては危機的状況ということでもあります。ただキレイに撮れるだけでは、取って代わられてしまう。であれば、「自身のノウハウや培ってきた経験値を伝える」という部分で、自身の生き残り戦略をとる必要性を感じていたんです。
── そこでオンラインコミュニティにご注目いただいたんですね。
青山:“1:N”ではなく“1:N:N”、つまりはオーナー対メンバーだけではない、メンバー同士でのコミュニケーションも大切にできるという点が、自分の構想とマッチしていました。メンバー同士の関わり合いも、そのコミュニティの方々にとっての大きなモチベーションになっていることは間違いありません。だからこそ、心のどこかで「自分も早くそっちの世界に行かなければ」と焦っていましたね(笑)
── 実際にコミュニティ運営をはじめてみて、率直なご感想はいかがですか?
青山:最近ではオンラインでの交流だけでなく、自分の写真展を見にきてくれたり、撮影の時にメンバーに声をかけて手伝ってもらうなど、オフラインでの交流にもつながっています。もちろんオンライン上での交流会なども毎週やっているのですが、その交流会で自分がルームから抜けた後に、メンバーの方々だけで会話が盛り上がっているのを聞いたりするととても嬉しいです。
孤独でありながらも、他人とつながっている感覚。
── コミュニティを運営してみて、青山さんご自身にはどのような変化がありましたか?
青山:自分でも想像していなかったのは、他人の撮った写真、つまりはメンバーの方々の撮った写真にとても興味を持つようになったことですね。自分も含め、多くの写真家は基本的に自分の写真のことしか考えない生き物ですから(笑)。ただ、コミュニティをはじめてみて、メンバーが「初めて人を撮ってみました」などと写真をアップしている時に、本当に心から応援したくなったというか、すごく感情移入できたというか。そういった想いを抱くようになれたことは、シンプルに嬉しく、同時に驚いています。
── 写真家といえば、確かに“個”のイメージが強い存在でもありますね。
青山:言い換えれば、写真家はそれだけ孤独な側面も持っていなければならないんですが、孤独でありながらも、他人とつながれているというこの関係性が、今はとても心地よく感じています。この気づき自体が、まさにオンラインコミュニティをはじめてみたからこそ得られたもののひとつですね。
▲ ユカイハンズ・カレッジでは青山さん自ら“ポートレートの撮り方”についてのノウハウ記事も配信している
表現活動を続けたい人にとって、コミュニティは必須の存在。
── 写真家として、これからオンラインコミュニティはどのような存在になっていくとお考えですか?青山:大きくふたつの役割を持つ存在になっていくと思っているのですが、ひとつが、“コアなファン”と繋がる場所としての役割です。“コアなファン”とは、単なるSNSのフォロワー数やいいねの数では測ることのできない“本当に応援してくれる方々”。写真家でいえば、写真展を開催すると言った時に、「絶対行きます」と言って来てくれる方が何人いるのかということです。“コアなファン”といかに深く繋がることができるかが、表現活動を長く続けるためには絶対的に重要。だからこそ、写真家に限らず、クリエイターやアーティストにとってオンラインコミュニティは必須の存在になっていくのではないでしょうか。
── なるほど。もうひとつの役割とは何でしょうか。青山:もうひとつは、シンプルな収入源としての役割です。自分自身、「生き残り戦略」という言葉を使わせてもらいましたが、表現者はどうしてもお金の話を避けてしまいがち。ただし表現活動を続けていくためには、お金も間違いなく必要になります。それは大金を稼ぐという意味ではなく、創作を続けられる環境を担保するということ。そういった観点からも、オンラインコミュニティのようなサブスク型の収入源は、表現活動を続けたい人たちにとっては、これまで以上に重要なものになっていくはずです。
── クリエイターやアーティストの方々にとって、コミュニティを持つ重要性が増している時代ということですね。青山:そうですね。ちなみにコミュニティをはじめたばかりの方の中には、メンバー数が増えないことを理由に運営を辞めてしまう方もいるんですが、もったいないと思っています。少人数のコミュニティであれば、それだけ一人ひとりと密に関係性を築くことができますから。そういう意味では、初めのうちはメンバーの数を気にしないことも大切だと思います。“コアなファン”を増やすという目的においては、一人ひとりのメンバーに満足してもらうことが、結果として、コミュニティを少しずつ大きくしていくことにもつながっていくのではないでしょうか。
── ちなみに、ユカイハンズ・カレッジのメンバーの方々には、将来的にどんな道を歩んでほしいと考えていますか?青山:ユカイハンズ・カレッジは「ゼミ」と「サークル」に分かれていて、わかりやすく言えば前者はプロ志向の方、後者は趣味で楽しみたい方向けの内容になっています。共通のイベントも多いので大きな垣根があるわけではないのですが、ゼミを立ち上げている以上は、やはり将来的にここから自立して、「写真で食べていけるようになりました」というメンバーが出てきてくれたら嬉しいなと思っています。
プロデューサー青柳コメント
実際にオンラインコミュニティを運営するオーナーならではの視点で、さまざまなお話をしてくださった青山さん。オシロに入社して初めて手掛けさせて頂いたのがユカイハンズ・カレッジでした。当時はとにかく“青山さんにとって価値のある場所をつくれるか”必死だったことを覚えています。今回のインタビューを通して、自分の想像以上にコミュニティの価値を感じてくださっていることをとても嬉しく思います。これからも、オシロは青山さんを応援していきます!青山さん、ありがとうございました!
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青山裕企(あおやまゆうき)/Mr.Portrait 写真家
1978年、愛知県名古屋市生まれ。筑波大学人間学類心理学専攻卒業後、2005年に上京し、写真家としてのキャリアをスタート。2007年、「キヤノン写真新世紀」にて優秀賞を受賞。
『スクールガール・コンプレックス』『ソラリーマン』『少女礼讃』など、“日本社会における記号的な存在”をモチーフにしながら、自分自身の思春期観や父親・少女像などを反映させた作品を多数制作。その他、吉高由里子・指原莉乃・生駒里奈・オリエンタルラジオなど、時代のアイコンとなる女優・アイドル・タレントの写真集の撮影を担当し、広告・企業・雑誌のグラビア・書籍の装丁・CD・アーティスト写真など、ポートレート撮影を中心に活動。撮るだけでなく、書く仕事(エッセイ・写真実用書)、教える仕事(講演・ワークショップ・講師)なども行う。
▼ユカイハンズ・カレッジの活動についてはこちらから
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青柳 洋平 / オシロ株式会社
セールスマーケティング コミュニティプロデューサー
大学卒業後ニュージーランドに本社を置くスタートアップの日本法人に入社。日本支社の立ち上げから、初期のチーム作りに携わりながら、大手クライアント、代理店開拓を中心にセールスを担当。世界5支社中1位の売上でグローバルMVPとなり、ベルリン支社へ2年間出向。サバイバルな日々の中で目にしたのは、日常の中でアートを楽しむベルリ ナーの生き方。「日本を芸術大国に」のミッションに共感し帰国と同時にオシロに 入社。セールスマーケティングをリードしながら、自らもコミュニティプロデューサーとして 邁進中。
Text: 細木光太郎 / フリーランスライター