2024年7月31日、オシロ株式会社(以下、オシロ)と株式会社YRK and(以下、YRK and)の共催によるオンラインセミナー「『組織力強化』成功の鍵 社員コミュニケーションの『A面』と『B面』とは? 」が開催されました。本セミナーは企業の社員間コミュニケーションをレコードになぞらえ「A面」と「B面」の側面に着目。コミュニティプラットフォーム「OSIRO」を提供するオシロと、企業の「リブランディング支援」を事業の核とするYRK andさまの事業アプローチの異なる両社の共催により、社内コミュニケーションと組織づくりのポイントが語り合われました。
登壇者.png 795.86 KB 登壇者(画像左から) 木村 昌紘氏 株式会社 YRK and NG事業部長兼 BCU/A&D統括責任者 杉山 博一 オシロ株式会社 代表取締役社長
第1部: 従業員幸福度を高めるためのB面コミュニケーションの重要性 OSIROが重視する「1:n:n」コミュニケーションの仕組み
20240730_YRK&さまウェビナー資料.002.jpeg 1.16 MB オシロが提供するコミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」は、もともとはアーティストやクリエイター向けにサービスを展開してきたものでした。しかし、サービスの成長とともに企業ブランドのコミュニティ、そして企業のエンゲージメント向上や社内コミュケーション活性化に「OSIRO」を導入する企業が増えてきています。
「OSIROは
アーティストやクリエイターが自身の世界観を表現しつつ、継続的に”お金”と”エール”をもらえる仕組みづくり を出発点としています。そのためはファンの熱量が高い状態を維持し、コミュニティの中でファン同士が交流を深め、より高い熱量と強固な絆を深めることが求められます。だからこそ、
OSIROはコミュニティオーナーとファンがつながる(1:n)だけではなく、ファン同士がつながり、盛り上がれるコミュニケーション(1:n:n)を重視した仕組みを構築 してきました。
このような
コミュニケーション・デザインをご評価いただき、徐々にブランドを持つ企業様に導入いただけるようになりました 。その結果、
コミュニティの中で顧客インサイトを得るだけでなく、ファンとファンが交流することで体験価値やつながり価値によるエンゲージメント向上にも寄与する効果 を生み出しています。そして現在では、従業員向けに社内コミュニケーション活性化やエンゲージメント向上にフォーカスした導入も目立ちます」(杉山)
20240730_YRK&さまウェビナー資料.032.jpeg 1.09 MB コミュニティの構築や世界観の醸成、さらには縦横のつながりを生むコミュニケーションの仕組みづくりに豊富な実績とノウハウを持つOSIRO 。その強みから、現在では企業文化の醸成や組織の心理的安全性の向上に悩む企業からの相談が増加しています。では、社内コミュニケーションの「A面」と「B面」とはどのようなものなのか。杉山はそれぞれについて以下のように説明します。
「私たちは
A面を『業務』、B面を『非業務』のコミュニケーション と定義しています。非業務とは、例えば趣味や仕事以外の興味関心などの話です。このようにお話しすると、『職場で仕事以外の話をするのはいかがなものか』とお考えになる方もいるかもしれません。しかし、
現代のエンゲージメントが低下しがちな働き方のなかで、非業務のコミュニケーションを活発化させることには、非常に多くの効果 があります」(杉山)
社会情勢の変化がもたらす社内コミュニケーションの課題
20240730_YRK&さまウェビナー資料-12.001.jpeg 1.2 MB 杉山は、企業がコミュニケーション不足に陥りやすい要因は「大きく二点ある」と説明します。
まず一点は「
世代間でのコミュニケーションの違い 」。現代の日本企業では昭和世代と平成世代、そして令和世代の3世代が働く状況です。杉山はそれぞれの世代のコミュニケーションの違いを例示しつつ、「世代間の相互理解が進まず、エンゲージメントが低下する傾向にある」と指摘します。
20240730_YRK&さまウェビナー資料-13.001.jpeg 1.21 MB 二点目の要因は「
日本的経営のあり方の変化 」。従来の日本企業のような帰属意識の高いメンバーシップ型雇用は減少し、ジョブ型の雇用への移行が進んでいます。また、キャリア形成において転職が当たり前となっている現代では、従業員同士のエンゲージメント向上は非常に難しくなっているのが現状です。また、
企業に目を向ければM&Aの増加により、異なる企業文化を持つ企業同士を融合させた新たな企業文化の醸成を求められる ことも増えています。
20240730_YRK&さまウェビナー資料.015.jpeg 887.52 KB 「現在企業や組織では『
生産性の低下 』『
離職率の増加 』『
採用コストの増加 』が深刻な課題となっています。一方で、
2023年3月期からは上場する全企業に対して、有価証券報告書における非財務情報の記載・開示が義務化 されました。組織づくりとしては非常に難しい状況にあるにも関わらず、離職率や定着率、エンゲージメントの情報を開示しなければならない。経営者や組織づくりのご担当者の方々にとっては悩みの多い時代です」(杉山)
B面で心理的安全性を育み、円滑で建設的なA面を創出する
20240730_YRK&さまウェビナー資料.020.jpeg 954.08 KB このような課題を踏まえ、杉山は「
B面のコミュニケーションの活性化は組織力やエンゲージメント強化のソリューションになる 」と述べ、その具体的な理由を以下のように説明しました。
「私たちはA面とB面のコミュニケーションに相関があると考えています。つまり、
社内で豊かなB面コミュニケーションが生まれれば、相互理解が進み組織に心理的安全性が生まれます。それがA面での建設的なコミュニケーションにつながり、生産性や売上が向上していく良いサイクルを生む ことにつながります。実際、マサチューセッツ工科大学(MIT)組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏が提唱し、現在世界的な支持を集める組織開発モデル『成功の循環(Theory of Success)』でも、組織の人間関係と成果の相関性について言及されています」(杉山)
杉山はOSIROの強みについて「
長年のコミュニティ設計や運営支援のノウハウを活用した制度設計のサポートに加え、社内コミュニケーションを活性化できるコミュニティプラットフォームをワンストップで提供できる 。3世代コミュニケーションの時代、制度やノウハウだけでも難しい、システムだけでも難しい、両方で設計運用することが大事になる」と語り、以下のように講演を締めくくりました。
20240730_YRK&さまウェビナー資料.022.jpeg 1.02 MB 「B面のコミュニケーションを促進していけば、結果としてA面の業務やマネジメント上のコミュニケーションも改善に繋がり仕事で結果が出やすくなる、同時に社員のエンゲージメントは向上し、生産性も高まる理想的な流れができます。このような
A面とB面のコミュニケーションを活性化する仕組みづくりは、今後人的資本経営を実践する上で必要なソリューションになる と考えています」(杉山)
オシロが提供するB面コミュニケーションの提供背景や詳細については、杉山のnote での関連記事もぜひご覧ください。 関連記事1: 従業員が”B面”でつながる社内コミュニティ 関連記事2: 職場だけど「サードプレイス」そんな居場所が必要だ
第2部: MVV構築と浸透のためのA面コミュニケーションのケーススタディと実践方法 求められる「人的資本経営時代」にふさわしい経営マネジメント
スクリーンショット 2024-08-06 13.18.29.png 2.24 MB YRK and は「リブランディング支援」を事業の核に、組織変革やエンゲージメント向上を支援することで、さまざまな企業の業績を改善してきました。
同社も明治29年(1896年)の創業からさまざまな社会的・経済的変化をリブランディングと事業変革によって乗り越え、128年間にわたり事業を維持・成長させてきた背景 を持ちます。そのような同社でも、現在企業を取り巻く環境は「予断を許さない状況にある」といいます。
「現在、職場・組織を取り巻く環境は大きく変化しています。現在は
人手不足倒産が大きく増加しており、今後も深刻化すると予測されています。そして、先ほどの講演にもあった通り中途入社の割合が増え、同時に人材のグローバル化も進んでいます。また、世代ごとの仕事に対する意識も非常に大きく変化している状況です。そして、M&Aによる合併後、企業文化がなかなか交わらないという 相談は当社にも非常に多く寄せられるお悩みごとです。
これらの変化は良し悪しの話ではなく当たり前と捉え、同じ職場で働く仲間同士が違いを受け入れてより良い企業を目指していく。そんな時代になっている と思います」(木村氏)
木村氏は同時に、コロナ禍を経てリモートワークが普及したことも、企業にとってエンゲージメントを低下させやすい要因となっていると指摘します。
スクリーンショット 2024-08-06 13.20.25.png 1.33 MB 「このような背景から、悲しいことに
現在の日本企業は世界的に見ても従業員エンゲージメントが低い状況 にあります。さまざまな環境変化のなか、従来の経営マネジメントに固執していると、生産性は下がる一方で離職者が増え続け、採用難から事業自体を縮小せざるを得ない
『負のスパイラル』に陥ってしまう企業が増えているのが現状 です。
そのため、今回の論点であるA面のコミュニケーションでは、人的資本経営の時代にふさわしい経営マネジメントへの転換を提唱します。具体的には、損益のPLを追いかけ続ける経営から、弊社が提唱する『
VL™︎経営(ビジョナリー・リーダーズ経営) 』という手法をご紹介しながら説明していきます」(木村氏)
「VL™︎経営」のメリットと必要な2ステップ
スクリーンショット 2024-08-06 13.21.42.png 2.37 MB YRK andが提唱する「VL™︎経営」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。木村氏はPL経営との違いについて、以下のように説明します。
「
VL™︎経営は、ビジョンの実現を起点とし、従業員のベクトルを合わせて従業員一人ひとりに浸透させていく経営マネジメントの手法 です。VL™︎経営を実現させる最初ののステップは、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やパーパスといった、企業の目指すべきゴールと理由を定めること。ステップ2は、全従業員がゴールの意味や目的を理解し、実現に対して共感している状態をつくることです。企業がこのような状態へと変化することによって、より成果が生まれやすく、アイデアが生まれやすくなっていくグッドサイクルが生まれていきます」(木村氏)
木村氏は続けて、「MVV構築と浸透に重要なポイント」を解説します。
スクリーンショット 2024-08-06 13.22.58.png 2.23 MB 「順を追って説明すると、まずは『
自社の理想となる姿を議論する 』。そして『
理想となる姿を実現するために何ができていて、何ができていないのかを明確に洗い出す 』。それから『
理想の姿になるために一番大事な価値を言語化する 』こと。この3点がMVV構築には重要になります。
そして、MVVを構築したあとは、これを浸透させていくステップとなります。このときには組織には
『2:6:2』の法則を意識することが大切 です。つまりMVVに共感し自ら動いてくれる2割の人には『伝道者』になってもらえるように働きかけ、6割を占める大多数の人には期待感の醸成する取り組みが求められます。そしてなかなか温度感が高くない2割の人には変化を促す仕組みやルールをつくっていきます」(木村氏)
木村氏はケーススタディとして、M&Aによってグループインしたあるメーカーの事例を紹介。VL™︎経営のメソッドを活用してMVVを明確化し、グループ内でもシナジーを発揮できる組織へ変革するまでのプロセスについて説明しました。最後に、木村氏は自社サービスについて紹介しつつ、以下のように締めくくりました。
スクリーンショット 2024-08-06 13.25.09.png 2.83 MB 「当社では
『ゴールを設定すること』と『ゴールに対する組織浸透』というA面コミュニケーションについて、豊富なコンサルティングスキームを用意 しています。それぞれの企業様のコンディションに合わせてカスタマイズしながら、ふさわしいやり方を設計していきます。一方で、未来を語り合う時には、普段の会議体では『できないこと』を考えてしまいがちです。そのため、私たちは
独自のメソッド”ブレインキャンプ®”と呼ぶ、独自のワークショッププログラムを用意 しています。これは、役職・部署関係なく様々な視点からコミュニケーションを重ね、プロジェクトメンバーが一丸となってブランドの方向性を考え、自分たちの"在りたい姿"を捉え直す機会です。固定観念に囚われない発想を生み出すため、視覚・嗅覚・聴覚を刺激する、非日常空間でのワークショッププログラムです。普段の業務から切り離した開放的で心理的安全性が保たれた環境で、ブランドの理想像を具現化するイノベーション体験を提供します。ぜひご興味があればお問い合わせいただけると幸いです」(木村氏)
質疑応答
本セミナーの最後に行われた質疑応答では、A面とB面いずれのコミュニケーションのあり方についても、たくさんの質問が投げかけられました。今回は、オシロ代表の杉山が回答した質疑応答の一部を紹介します。
Q. B面コミュニケーションは、特にハイコンテクストな日系企業では非常に重要な観点だと思いました。B面コミュニケーションの場づくりにおける留意点があればぜひ教えていただきたい。
杉山: B面コミュニケーションで重要なのは、企業側が過度なお膳立てをしないことにあると思っています。私たちがコミュニティ設計で重視しているのは「余白をつくること」 。つまり、コミュニティメンバーの方々がとる自発的なアクションを可能な限りエンパワーできるようにしています。そのため、ある程度企業の価値基準を決めつつ、その範囲内であればなるべく自由にコミュニケーションが取れる場をつくっていくことが大切 だと考えています。
Q. 企業内コミュニケーションではチャットツールがすでに導入されているが、追加でOSIROを導入するメリットとは?
杉山: 迅速なコミュニケーションの実現を前提としたビジネス用のチャットツールとは異なり、OSIROは人と人との関係性を向上させ、より心理的安全性の高いコミュニティをつくることを開発思想 としています。UI/UXでもコミュニケーションが盛り上がるようなデザインを志向していることに加えて、これまで300以上のコミュニティを支援してきた知見から、企業の組織風土や特徴に合わせた適切なコミュニティ設計をご提案いたします 。このような効果は実際にOSIROをご利用いただく企業の社員の皆さまが最も実感されると思います。
Q. 特に若手社員にとっては、自身のプライベートな領域を自己開示していくことは抵抗感があると思う。そういった人たちに強制でもなく、取り残すこともなくB面コミュニケーションを活発化させる方法とは?
杉山: もちろん過度にプライベートな領域に踏み入ることはハラスメントにもなってしまい、コンプライアンス・ガバナンス上でも大きな問題になります。当然そこには企業としての制度設計が前提としてありますが、
そもそも若手社員の方々が自身のB面を開示したくないと思う理由の根底には「組織の心理的安全性の低さ」がある と思います。相互理解が進んでいないため自身から発言がしづらい、職場では個人的な話がしにくいという認識があるからこそ抵抗感が高まっているのではないでしょうか。例えば、B面なのに説教をしそうな上司がいるとか、マウントを取りそうな方がいるとか様々な状況も予測できます。先ほどの質問で回答した通り、
OSIROは活発なコミュニケーションを生み出すだけではなく、心理的安全性が担保された場で安心して自発的な発信ができるようプロダクトのブラッシュアップを重ねてきました。これまでコミュニティを支援してきた実績や知見も踏まえ、若手社員の方々も安心してB面コミュニケーションができる場を提供できる と考えています。
オシロ株式会社では、長年のコミュニティ設計や運営支援のノウハウを活用した制度設計のサポートに加え、社内コミュニケーションを活性化できるコミュニティプラットフォーム「OSIRO」をワンストップで提供しております。
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