四角大輔さん(執筆家)をお呼びしたOSIRO OWNER SPECIAL INTERVIEW第7弾。
OSIRO OWNER SPECIAL INTERVIEW
オシロ株式会社(以下、オシロ) 代表取締役社長 杉山博一による、オーナースペシャルインタビュー。第7回のゲストは、オシロの共同創業者であり、ニュージーランドに在住しながら作家として活躍する四角大輔さん。四角さんはレコード会社のプロデューサーとして長年活躍し、数多くのミリオンヒットを輩出。その後オシロの共同創業者として「OSIRO」の開発に関与し、現在では作家として活動しながら、自身のコミュニティ「LifestyleDesign.Camp」を主宰しています。オシロの理念・思想の礎をつくった共同創業者、そしてコミュニティオーナーの視点から、オシロが提供する価値やコミュニティーのあり方、今後の展望について聞きました。
LifestyleDesign.Camp
2015年に四角大輔さんが創設したコミュニティ。「暮らし方×働き方=生き方」という哲学をベースとした、人生デザインの流儀のすべてを「年12の月間テーマと、毎週のメソッド&ワーク」に体系化。他の誰でもない〝あなた〟と〝パートナーや家族〟にとって理想の生き方を設計し、実践するための技法と思考法を、毎年のアップデートを経てシェアする。
https://lifestyledesign.camp/about
名プロデューサーが痛感「ファンが集い熱量を維持する場」の重要性
杉山博一(以下、杉山): 大輔さんと僕は普段「大ちゃん」「ヒロカズ」と呼び合う間柄。今日はインタビューで少しかしこまった話し方をするので、なんだか恥ずかしいですね(笑)。ただ、僕は大輔さんからたくさんのことを学ばせてもらって、今の日本でコミュニティを再構築する重要さを知るきっかけになった。そこから僕は「日本を芸術文化大国にする」という天命を授かり、オシロを創業しました。大輔さんは、オシロにとって欠かすことができない存在です。今日はまず、大輔さんがコミュニティの重要性に気づいたところから改めてお話ししてもらいたいです。
四角大輔(以下、四角): コミュニティの重要性を実感したのは、レコード会社でプロデューサーをしていた頃。僕の仕事はアーティストと一緒に音楽を創り、それを世に届けることでしたが、「アーティストや音楽を売る」ためには、ファンの存在が非常に重要になるんです。
ファンにもコア層からライト層までグラデーションがあり、その中でもコアなファンを増やしていくことが重要になります。広くライト層にアーティストの存在を伝えるべく、ドラマやCMのタイアップを獲得してヒットソングを生み出すことも当然のごとく大事ですが、アーティストの活動寿命を左右するのは、熱量の高いファン、つまりコア層の存在です。
音楽の世界には、アーティストとコア層の距離を縮めて「縦のつながり」を構築し、コア層同士がつながれる「横のつながり」を組織化するファンクラブがあります。
ファンクラブに入って「超コア層」となったメンバーは、お互いに強い仲間意識を持つようになり、アーティストの売上が好調・不調に関係なく「みんなで応援しよう!」と支えてくれる。そして、安定かつ長期的にCDや音楽配信、グッズやライブのチケットを買ってくれます。このような「場」をつくることでコアなファンの熱量が高い状態を保っていくことが、音楽業界では昔から重要視されていたんですよ。
杉山: 大輔さんはプロデューサー時代にミリオンヒットを連発していたプロデューサーですが、ファンの熱量の重要さを理解し、なによりもアーティストの将来を第一に考えていた。僕と出会った時はレコード会社を辞める直前でしたが、それでもアーティストやクリエイターへの強い想いを持っていて、話を聞くうちに、僕も強く心を動かされたことをよく覚えています。
四角: 僕は、アーティストの3年後や5年後、10年後、さらに先の将来のことを常に考えた上で、今日すべき決断を下していました。活動の持続性を考えないで、今この瞬間の判断はできないし、今年どう打って出るか、という直近の戦術も組めない。そもそも活動寿命を決めるブランディング戦略なんて構築できません。この発想において、超コアファンとコミュニティの存在は不可欠なんです。
でも、レコード会社の役目はアーティストと作品(楽曲やアルバム)を売る戦術とブランディング戦略を立案し実践すること。ファンクラブ運営、ライブ運営、物販は、アーティストをマネジメントするプロダクション(所属事務所)の仕事なんですよ。レコード会社は本来そこに関与できないし、そこで得た収益は1%も入ってこない。
杉山: なるほど。そこはどうしたんですか?
四角: そういった古い分業体制は、アーティストのブランドイメージを崩してしまうリスクがある。「音楽、ビジュアルイメージ、広告・ウェブバナー・店頭POPのデザイン、ミュージックビデオ、TVスポットなどの動画」というレコード会社が製作するアーティストの世界観と、「ライブの演出、物販グッズ、ファンクラブ」の世界観が違ってしまうと、イメージの統一ができずにブランディングは失敗となってしまう。
アーティストのキャリアを長期的にとらえて、僕はたとえ煙たがられても、一銭ももらえなくても、プロダクション側の業務に関与させてもらいました。つまり、それぞれの縄張りに固執するより、アーティストの世界観を共創した方が、結果としてアーティストの活動寿命を伸ばす上に、お互いの領域における直近の売上アップにもつながるわけですから。
杉山: 大輔さんが活躍した頃は、まさに音楽業界も過渡期を迎えていましたよね。CDが売れていた時代は黄昏を迎え、徐々に音楽配信が日本に普及し始めた時期。そのような変化は、アーティストのあり方にも影響を与えていたと思います。
四角: 僕が新卒でレコード会社に入社してCDショップの営業を始めた1995年に、ミリオンヒットの数が約50と史上最高を記録。そこからずっと売上は下がり続けて、僕がレコード会社を辞めた2009年のCDのミリオンヒットはわずか5つで、14年前のわずか1/10です。たとえば、入社当時は週に20〜30万枚を売らなければヒットチャートに入らないといわれていたのが、僕が辞める頃には5万枚売れば1位になれた。
CDが売れなくなる時代に入っていく中で浮き彫りになったのは、まさしくファンクラブの強さでした。つまり、ファンクラブがしっかりしているアーティストであれば、大きなタイアップやメディア露出がなくても、リリースと同時にコアなファンが確実にCDを購入してくれるので、安定してヒットチャートの上位に食い込めた。
コアなファンは時代のトレンドやアーティストの浮き沈みではなく、アーティスト固有の世界観が好きで応援し続けてくれる。一発屋的な流行り廃りではなく、長くアーティスト活動を送っていくためには、ファンが集い熱量を維持するコミュニティの存在は不可欠なんです。
杉山: 僕は大輔さんから繰り返し、「プロデューサー時代に唯一心残りだったのが、コミュニティづくりだった」と聞いています。どのような点に心残りを感じていたのですか?
四角: レコード会社のプロデューサーとして、やるべきことはすべてやりきったという自負はあります。しかし、ファンコミュニティの醸成だけはやりきれなかった。あるアーティストは、1年間にミリオンヒットを3つも出せたのに、ファンクラブはわずか5千人に満たなかった。なにより当時はまだ、ファンクラブ運営をOSIROのようなオンライン上で完結することは不可能で、とにかくお金と人の多大なるコストがかかって大変だったというのが一番大きいですね。
ファンクラブ運営はアーティストが所属するプロダクションの中核業務ということもあって、僕一人が関与するにも限界があり、ファンの熱量を醸成する場を構築しきれませんでした。コミュニティの重要性を認識していながら、やりきれなかった悔しさが残り、それで自分がレコード会社時代にほしかった、コミュニティを低コストで醸成できるプラットフォームをつくりたいと強く思った。「OSIRO」の原点にはこのような想いがあるんです。
オシロの理念や思想は「コピーできない付加価値」
杉山: 僕が大輔さんと出会ったのは、ちょうど大輔さんがプロデューサーを退職し、独立してニュージーランドに移住する直前のことでした。
東京で、そしてニュージーランドでコミュニティの重要性を話し合ううちに、僕も新しいコミュニティのあり方を構築していきたいと思うようになりました。そしてあることをきっかけに2015年、僕たちは共同代表となって「OSIRO」の開発を始めます。
四角: その少し前から、オンラインコミュニティ(オンラインサロン)という新しい形のコミュニティが出てきていた。僕が8年ほど運営してきた「LifestyleDesign.Camp」の前身となるオンラインコミュニティを設立したのも、その時期。やはりプロデューサー時代にやりきれなかったものを、まずは自分でつくっていきたいと思ったからです。
当時はまだ作家として不安定だったこともあり、今後の人生に役立てたいという思いもありました。でも、
自分が率先して実験的に、新しいコミュニティのあり方を模索することで、将来的にはアーティストやクリエイターが長く活躍できる世界をつくりたい、そんな想いがあった。
杉山: あの時、大輔さんと僕はそうやって語り合っていましたよね。
四角: 前身のコミュニティでは最初、Facebookのグループで運営していた。だがやはり、機能的に足りない部分が多く、レコード会社から思い描いていたコミュニティ醸成がなかなかできない。そこでヒロカズに「作ってよ♡」って無茶振りしてみた(笑)。
するとヒロカズは、「日本を芸術文化大国にする」という天命のもと開発に着手していたクリエイター向けプラットフォームを、オウンドプラットフォームとしてピボットすると決意してくれた。それならば「
クリエイターのための最高のオウンドプラットフォームを一緒につくっていこう!」と、共同代表になりました。
杉山: 僕自身もかつてはアーティストを志した身で、大輔さんの想いは痛いほど伝わってくるものでした。僕としても、アーティストやクリエイターがクリエイティブ活動を続けていけるように、お金とエールの両方とも得られる仕組み、つまりは「
コミュニティ経済圏」の存在が日本に不可欠だと思っていたんです。そんな大輔さんと僕に共感してくれて、こういう仕組みがこれからのクリエイターに必要不可欠だからと共同経営者として名乗りを上げてくれたのが、サディ(コルク代表 佐渡島庸平さん)でした。
3人の想いのもと「OSIRO」のサービスがスタートしますが、僕としてはここからが大変だった(笑)。当時は佐渡島さんの会社であるコルクのオフィスを間借りさせてもらっていた頃。朝の6時すぎにオフィスに行って、そこから佐渡島さんに2時間くらいフィードバックをもらった後、今度はニュージーランドにいる大輔さんとSkypeで4時間くらい話をして猛烈なフィードバックをもらいブラッシュアップする。そんなサイクルで開発していましたね。
四角: そこはプロデューサー脳がフル稼働して、かなり細かく、厳しく話をさせてもらったよね(笑)。機能面のフィードバックも多くありましたが、僕が重点を置いたのは「
思想でブレないこと」でした。
思想なき音楽なんて、誰も聴きたくないですよね。それはビジネスも同じで、思想なきビジネスはありえないと考えています
。今では利益第一主義で思想のないビジネスが蔓延しているけど、それでは人の心を打つものを提供できないから長続きしない。
とはいえ、経営者は売上や短期的な成果を出していく必要もあり、信念や理念からブレが生じてしまうのは仕方がない面もある。僕はニュージーランドにいて、ビジネスの現場から離れているからこそ、思想のブレを指摘するのは自分の役目なんだと思っています。
杉山: 共同創業者の大輔さんと、共同経営者の佐渡島さんの哲学は、オシロにとって大切なDNAになっています。開発中はさまざまな課題が山積しているので、「OSIRO」の開発思想から目が離れてしまうこともありました。そんな時に大輔さんはもちろんサディからもグサっと指摘してもらうことが、僕にはどれだけありがたかったか。そして、ただ指摘するだけではなくて、思想からブレを生じさせている正体はなんなのか、どうやって修正していくかにもしっかりと向き合ってくれた。大変ではありましたが、こうした過程があってこそ、今の「OSIRO」があると思います。
四角: もちろん、「OSIRO」は僕自身が使うものなので、機能面でのフィードバックもたくさんしました。ユーザーにとって使いやすさは絶対ですから。ただ、デジタル上にあるプラットフォームの仕組みは、ある種コピーしやすいものといえます。しかし、
プラットフォームを運営する側の理念や思想、そして経験値といったものは、簡単にコピペできない。例えば、今や機能や利便性にそれほどの差異はないのに、人はなぜAndroidではなくiPhoneを使うのか。開発する
Appleには理念や思想があり、そこに付加価値を感じるためです。レコード会社時代、誰もが知るあるバンドのファンクラブ運営にも同様のことを感じました。
機能面のバージョンアップも当然必要なこと。しかし、それ以上にコピーすることのできないものを大事にして、自社としても積み上げていくべきだと思っています。
コミュニティはクリエイティビティを高める
杉山: 「OSIRO」のβ版リリースが2015年、同年に大輔さんの「LifestyleDesign.Camp」の前身のコミュニティを第一号として創設しました。それから8年の月日が流れ、コミュニティオーナーとしてもさまざまな経験があったと思います。
四角: やはり、年月を経てコミュニティが醸成してきたと感じています。コミュニティの醸成とは、参加メンバーが自走している状態だと思っていて、最初の数年は主宰者の僕がコミットしなければ場が盛り上がらない状況が続きましたが、今や僕はある種のハブや着火剤に徹することができている状態です。
こうなれた理由として、
「OSIRO」が横の繋がりをサポートする、他が真似できない独自機能を実装させたタイミングが重なったというのもあります。今ではコミュニティ内の、僕がいないサブコミュニティ(部活やグループ)を、メンバーがリードして盛り上がっている。メンバー同士がどんどん仲良くなり、気づいたら自主的にリアルなミートアップがどんどん開催されている。「リアルで初めて会った気がしない」「最初から腹を割って話せる」という声が多数、感謝と共に届きます。
「LifestyleDesign.Camp」には、作家・四角大輔の名のもとに最高の仲間が集まってくれてますが、活用法は一つではなく、それぞれが固有の楽しみ方を見出して、それぞれの人生をデザインしている。だからこそ僕も一緒になって、「自分の本を書く」という人生で最もやりたいことを楽しめているんです。
杉山: コミュニティを主宰する立場として、そのような段階までコミュニティを醸成するカギとなるのはどのような部分だと思いますか?
四角: 正直、僕自身がコミュニティ運営のスキルが上がったという自覚はなくて。大きいのが、僕の右腕である志知純子さんが務めるコミュニティ事務局の存在です。年々、運営スキルが高まっていて今や全面的な信頼を置いています。
ここ数年、友だちや知人から「オンラインコミュニティをつくりたい」と相談を受けますが、その時にも
事務局の大切さを説くようにしています。プロデューサータイプの人は自分でなんとかできてしまうのかもしれませんが、アーティストタイプの人は苦労してしまいますから。
実際、僕も事務局がいてくれるおかげで、元来のプロデューサー脳を封印できて、アーティストとして100%振り切ることができた。その結果、僕の創造性とオリジナリティがより際立っていき、作家として複数のベストセラーを出せるようになり、さらにコミュニティを唯一無二の世界観に深化させることができた。それが、よりおもしろい「愛する変わり者たち(笑)」を引き寄せていますね。
杉山: 純子さんは本当にすばらしいですよね。やはり
事務局やコミュニティマネージャーの存在は大きいです。ある意味で事務局は大輔さんに伴走するような存在で、
コミュニティのメンバーの熱量を上げるだけでなく、大輔さんのクリエイティビティをかき立てる存在にもなっている。
四角: それと、「LifestyleDesign.Camp」はむやみにメンバーを増やさないよう、危ない人を入れないように審査制を設け、コミュニティ内では「実名・顔写真」というルールを徹底しています。そうやって
安全が担保されていることも掛け算されて、みんなが安心して自分をさらけ出せる場になっています。
コミュニティの仲間はみんな「超変わり者・四角大輔」のもとに集まっている。だからこそ得られる「自分も変わっているけど他のメンバーも変わっている=みんな違っていい!」という安心感を得られ、イビツな自分を受け入れ、他者を受け入れられるようになる。しかも、審査制だから危険な人はいないし、匿名じゃないから誹謗中傷がゼロで、その安心感はより強まっていきます。
ちなみに、僕のコミュニティがきっかけで3組、コミュニティを辞めた後を含めれば5組のカップルが誕生して結婚しています。さらに近々、もう1組が結婚します。そのうち4組の夫婦が子を授かっている。結婚ではなく、お付き合いしたカップルはおそらく10組近くいるかと。
杉山: それはすごい!まさにファンが自走して自分の楽しみ方を見つけていて、自分たちによってコミュニティがより良い場になる、理想のコミュニティ環境ができていますね。
四角: このようなコミュニティになったのも数年はかかったので、やはり
醸成期間は必要です。事務局スタッフをコミュニティ内から引き抜いたのも良かった。当初は公に募集してみたけど、応募数は多くてもマッチする人はいなくて。それならば、コミュニティを熟知しているメンバーからスカウトしてみようと。それが正解で、今のようなコミュニティを主体的につくってくれた。
杉山: 大輔さんはレコード会社時代からコミュニティに強い想いを持っていて、今は自分自身のコミュニティが非常に大きな存在になっていると思います。改めて、大輔さんにとってのコミュニティとはどのようなものであるか、お話しいただきたいです。
四角: 間違いなく「
精神的な支え」ですね。今、「LifestyleDesign.Camp」には常に300人ほどのメンバーが集まっていますが、そのような人数が
自分のことを信じて集まってくれているという事実は言葉にできなほど心強い。もちろん、月会費をいただいているので、生活を支えてもらっているという実質的な側面もあり、感謝しても仕切れないほどの存在です。
それだけでなく、メンバーは僕の作家活動すらも支えてくれています。僕は本を書いている過程で、生の原稿をメンバーに公開し、忌憚ない意見をもらうようにしている。通常、執筆プロセスで目を通すのは編集者と近しい身内くらいですが、僕の場合は300人からフィードバックがもらえる訳です。それは、僕のことをよく理解してくれているプロデューサー目線の提案から、ユーザー目線のリアルな声までを網羅しています。
そして、僕の本が出ると必ず発売直後にメンバーが買ってくれる。こういった仲間の存在があってこそ僕は作家業に集中できているのです。僕はメンバーのことを、友だちより絆の深い「仲間」だと思っています。
だからこそ、僕はコミュニティを始めて4年半ほど経った2019年に、4つの会社役員、数々のプロジェクトやプロダクツのプロデュース、旅とアウトドアの仕事、複数の連載を手放して、作家業に専念すると宣言できた。同時期に、オシロの共同代表という立場から降り、共同創業者としてアドバイザリーに近いポジションに退きました。
コミュニティを成熟させる「エコシステム」
杉山: 「LifestyleDesign.Camp」はコミュニティのあり方としてモデルケースであり、大輔さん自身が作家にフルコミットして生きているように、「
アーティストやクリエイターが副業なしに生きられる証明」になっていると思います。僕はこのようなコミュニティのあり方を他のコミュニティや、今後コミュニティを立ち上げるアーティストやクリエイター、ブランドオーナーに共有できるようにしていきたいです。大輔さんはコミュニティを成熟させるコツはどのようなところにあると思いますか?
四角: コミュニティの成熟には人の循環も大事だと思っています。長くコミュニティにいる人の存在はもちろん宝のごとく大切ですが、その一方で
ある程度の人数が循環することでコミュニティはいい意味で変化していく。この変化というのは生き物と同じで、人為的に変化を促したり止めたりはしないほうがいいと思っています。
コミュニティの世界観を守る古株メンバーにとって、新しい風が入ってくるのが刺激となり、自然とコミュニティが変化しながら成熟していく。まさに
自然界のエコシステムのようなものが形成されていくイメージですね。
杉山: 「コミュニティを成熟へと向かわせるエコシステム」。まさに現在オシロが取り組んでいることです。僕は最近、
コミュニティの成熟には「布(ぬの)理論」があると考えています。コミュニティができた当初はコミュニティオーナーとメンバーが縦糸でつながっているイメージで、そこから徐々にファン同士の横のつながりができることで、縦糸と横糸が組み合わさっていきます。始めたばかりでは縦糸も横糸ももろいのですが、それが年月を重ねるごとにさまざまな変化を経て強いつながりができ、布のように縦横の強い関係、つまり絆が生まれてく。
四角: その理論はとてもいいね!そういった意味では、僕自身がコミュニティと共に変化していて、縦糸と横糸が相互に変化しながらも強いつながりを築いてこれたからこそ、今のような美しいエコシステムができている。
そもそも僕自身が固まりたくない、変化し続けたいと思っているので、メンバーにも変化を恐れないことを促しつづけています。先ほどの通り「LifestyleDesign.Camp」はメンバーの横のつながりが強く、自走しながら日々変化を遂げています。それは、僕自身が変化し続ける人生を妥協せずデザインしていて、その葛藤と流儀をメンバーにさらけ出せているからかもしれない。
杉山: 実はそのほかにも、実体験から編み出したコミュニティを盛り上げ、醸成するための「ビッグバン理論」というものがあります。エコシステムからさらに大きな話になりますが、この世界ははじめビッグバンが起こり、高密度のところから爆発して一気に宇宙が形成されました。
コミュニティも同様に、それまで世界中にバラバラに存在していた共通の価値観や熱量を持つメンバーが、大輔さんのようなオーナーに惹きつけられて集まっていきます。それぞれが想いを通わせていくうちに密度が高まり、様々なきっかけによって着火され自走していきます。そうしてコミュニティに渾然一体となった世界観が形成される。
四角: そういった理論は、ヒロカズがこの8年間ずっとコミュニティを醸成するプラットフォームの開発・運営一本にコミットしてきたから見えてきたものだよね。僕の最新刊『
超ミニマル・ライフ 』でも言及しているけど、本来、人は中途半端に2つや3つのことをするよりも、1つのことをやり続けて初めて、その人の最高パフォーマンスが出せるのです。
これはまさに、誰が言ったかわからない名言「人生なんでもできるが、すべてはできない」が伝えてくれる真理と同じ。自分がやりたいことや大好きなことを1つ定めて、そこに一点集中する。
杉山: たしかに、1つの道を歩んできたからこそ見えてくる景色はあります。だからこそ踏み出せる挑戦もある。まさに「OSIRO」も、個人がそういった
アーティストのような生き方ができるよう後押しするプラットフォームにできればと思っています。それが、日本が「芸術文化大国」につながる布石になればと考え、日々アップデートに努めています。
四角: 僕は今、小説を書き始めていて、プロットはもう完成しているんですが、この決意ができたのも仲間のおかげ。小説を書く決意をする前に「LifestyleDesign.Camp」のメンバーに相談したら、みんなが応援すると言ってくれた。僕のコミュニティは、名前の通り「それぞれの人生をデザインする」ためにあります。誰かに指示されたり、他人軸ではなく、自分の心の声を聞いて選ぶ人生であってほしいと。そして、そうやって生きようとする仲間を支え合おうというのがコミュニティ哲学です。
そのような想いに賛同してくれている仲間がいるからこそ、僕の新しい挑戦にも真剣に向き合い、本音の言葉を投げかけてくれる。主宰者の僕とメンバーが、そしてメンバー同士が、対等に同じ目線で語り合える。そんな仲間がいるからこそ、僕もみんなも、新たな一歩を踏み出す勇気をもらえるんです。
杉山: 僕は近い将来に、より多くのアーティストやクリエイター、ブランドオーナーがよりよいコミュニティを形成し、それぞれのクリエイティビティを社会に発揮できるような世界を実現したい。そのために最近では「
コミュニティマネージャーAI化 」など、
コミュニティに不慣れな人でも無駄な苦労をしないコミュニティ運営ができるように応援していきたい。
四角: 正直、創業時の想定以上に「OSIRO」は成長し続けていて驚いてます。
コミュニティオーナーとしても、機能改善が進み利便性が格段に向上していることも実感しています。資金調達も済ませ、これからより高い付加価値が提供できる企業になっていくでしょう。
そんな中で、僕があえて言いたいのは、「原点回帰」を忘れないでほしいということ。先ほど僕は、理念や思想の重要性について話しましたが、大きな利益をあげることやIPOを目指すことも企業として大事なこと。しかし、経済性に寄りすぎてしまうことで、本来「OSIRO」で応援したいアーティストやクリエイターといった個人に届かないビジネスになってしまう。
だからこそ、僕は「お金はないけど才能のあるアーティスト」「コミュニティを持つことで生活できるクリエイター」、つまり
日本を「芸術文化大国」に押し上げることのできるアーティストが自由に使えるサービスであってほしいと願っています。アーティストたちがエールとお金の両面で支えてもらえるコミュニティ。それが「OSIRO」が目指すサービスであり、その原点を大切にしてほしいですね。
四角大輔|Daisuke YOSUMI
作家/森の生活者/環境保護アンバサダー
音楽業界でヒットメーカーとして数々のヒットを創出した後、ニュージーランドに移住。湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない働き方を構築。第一子誕生を受けてミニマルライフをさらに極め、週3日・午前中だけ働く、育児のための超時短ワークスタイルを実践中。
ポスト資本主義的な人生をデザインする学校〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。
著書に、『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』などがベストセラーに。『モバイルボヘミアン 旅するように働き、生きるには』『LOVELY GREEN NEW ZEALAND 未来の国を旅するガイドブック』『バックパッキング登山入門』など著書多数。
杉山博一|Hirokazu Sugiyama
オシロ株式会社 代表取締役社長
24才で世界一周から帰国後、アーティストとデザイナーとして活動開始。30才を機にアーティスト活動に終止符を打つ。日本初の金融サービスを共同で創業。退社後、ニュージーランドと日本の2拠点居住を開始。30歩で砂浜に行ける自分を豊かにするライフスタイルから一転、天命を授かり「日本を世界一の芸術文化大国にする」という志フルコミットスタイルに。以降東京に定住し、2015年クリエイター向けオウンドプラットフォーム「OSIRO」を開発。2017年オシロ株式会社設立。現在は作家・アーティストから、コンテンツ・メディア・ブランド企業までクリエイティブ産業全般に向けて、ファン同士が仲良くなる、独自のプラットフォームを提供している。システムの提供はもちろん、コミュニティ醸成のサポートも行っている。
text & photos by Taiga Kawashima
ファン同士の交流を活性化させる業界唯一のプラットフォームシステムと8年以上のコミュニティ運営知見を持ったプロデューサーが運用をサポートします。
詳しくは
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