コミュニティ熱量研究所 – 対談まとめ
「コミュニティxデータ」で “所長” ことデータサイエンティスト鈴木がOSIROユーザーのリアルなコミュニティ運営に迫る『コミュニティ熱量研究所』。
"メンバーの主体性をどう引き出すか" オンラインコミュニティを運営する誰もが一度は直面する悩みではないでしょうか。
今回は、メンバー発信のブログ連載やブログリレーが行われるなど、盛り上がりを見せるLittle Life Lab主宰でエシカルファッションプランナーの鎌田安里紗さんと、運営メンバーの赤土由真さんをゲストにお迎えします。
Little Life Labがどのようにしてメンバーの積極的なアクションを引き出しているのか、その秘訣と試行錯誤を、主宰者と運営者の両視点からお伺いします。
対談 Vol.05 鎌田 安里紗さん / エシカルファッションプランナー Little Life Lab主宰
赤土 由真さん / Little Life Lab運営メンバー
対談動画フルバージョン | 2022/1/18 『
Little Life Lab』 〜 暮らしの小さな実験 コミュニティ開始日:2019年1月
参加費:4,950円/月(税込) MAH01351リタッチ済.jpg 1.54 MB 〈目次〉
・コミュニティを始めた経緯
・私たちもメンバーの一員、コミュニティを誰よりも楽しんでいる
・馴染みやすく、居心地のいいコミュニティであるために
・アウトプットするおもしろさを感じてほしい
コミュニティを始めた経緯
オシロ鈴木 (以下、所長):まず、どうしてオンラインコミュニティを始めることになったのか経緯を教えてください。 鎌田さん (以下、鎌田):わたしは元々、衣服の生産過程や消費のあり方に関心があって、リサーチや企画を行ってきましたが、衣服だけではなく生活の中で使うものについても、もう少し深めたいと思ったことがきっかけです。 5, 6年前から、衣服ができる過程に興味を持ってもらうための一つの企画として、ものづくりの現場にみんなで行くというスタディーツアーを企画していたんです。全国から応募してくれた20〜25名で行くのですが、 近しい興味を持っている人が集まって1週間ほど旅をすると、すごく仲良くなるんですよ。 学校や職場など、普段一緒にいる人とは、ものづくりのことや環境問題などの話題でこんなに盛り上がれなかった、と。 それで旅の間は、自分が関心があることについて、「あんなことやってみよう」とか「これについてはどう考えよう」とか、思考や実践がどんどん発展していくのですが、 旅が終わって日常生活に戻ると、その状態をキープするのって難しいんですよね。 せっかく気になることがあってもパッと投げかけられる話し相手がいないと、だんだんその興味や熱量はしぼんでいってしまうと思うんです。だから、スタディツアーで起きていた現象を日常に重ねられたらいいなと思って。 私は高校生の頃から、いろんな形で情報発信をしてきました。Twitter、Instagram、ブログ、トークイベントに出させてもらったり。でも、どれもこちらからの一方的な発信で、コメントはあってもそんなにインタラクティブになれない。もっと、聞いてくれている人がどんなことを考えているかも聞きながら、 じっくり双方向に話せる場所があったらいいなと思っていました。なので、オンラインコミュニティというクローズドな環境がしっくりきたんです。 所長 :赤土さんは最初メンバーとして入ろうと考えていたという話を伺いましたが、その時はどういう理由で興味を持ったんですか? 赤土さん (以下、赤土):社会人になって一人暮らしを始めると、全部自分で選んでいくことになるのですが、何を決め手にするのか迷ってしまうんですよね。エシカルを重視してモノを選びたいと思っても、自分だけではなかなか調べきれないし、どんどん新しい商品や技術が出てくる。こんな時に一緒に話せる人がいたらいいなと思って、ありちゃん(鎌田)がコミュニティをやっていたと思い、連絡しました。 鎌田 :日々の生活って、何を着るか、何を食べるか、洗剤や歯ブラシのような日用品を何にするか、実はたくさんの意思決定を積み重ねているんですよね。あまり考えなくても意思決定できますけど、ちょっとこだわろうと思ったら、素材や生産背景、デザインや価格含め、どれが自分の価値観に合うものなのか、調べて決めるって本当に大変なことだと思うんです。Little Life Labは井戸端会議的に、そういった日々の小さな、けれど重要な意思決定について相談ができる場にもなっています。 所長 :なるほど。始めたタイミングは約3年前で、まだまだオンラインコミュニティの存在が知られてなかったり、やっている方も少なかったと思うのですが、始める前の不安はありましたか? 鎌田 :不安はなかったと思います。OSIROでコミュニティをやられていた四角大輔さんとお話した際に、私がこれからやりたいことや、発信の仕方について伝えたら、「それ絶対オンラインコミュニティが合ってるよ」って言われて。その後OSIROさんの思想を聞かせてもらったりする中で、自分が大事にしていることに近かったこともあり、自然な流れで始めることになりました。 MAH01109リタッチ済.jpg 1.38 MB
私たちもメンバーの一員、コミュニティを誰よりも楽しんでいる。
所長 :赤土さんがコミュニティに興味を持ったタイミングで、だったら運営メンバーにならないかと鎌田さんから打診されたというお話がありましたが、どうして赤土さんを運営にと思われたんですか?
鎌田 :
私は主宰者、あこ(赤土)は運営者なんですが、視点としては二人とも一メンバーなんです。 自分がどっぷりとコミュニティに入って、楽しみながら盛り上げてくれる人。私もそうありたいし、とても大切にしているポイントでもあります。
その面から、コミュニティに入りたいと連絡をくれた彼女はテーマそのものに関心がありますし、卒業してからもよくコミュニケーションをとっていたので、ラボでも一緒に楽しみつつやっていけるなと確信していました。彼女はめちゃくちゃ優秀で、整理能力も高くて、私と全然タイプが違うんです。なので、一緒に楽しみつつ、こぼれているところを綺麗にしてくれている感じです。
所長 :タイプが違うというのも一つのポイントだと感じますが、実際に鎌田さんと赤土さんの役割に明確な分担はあるんですか?
赤土 :メンバーとのやりとりは、私を含め運営メンバーでサポートしています。ありちゃんは主宰者でありながら、自分が考えていることを発信するだけではなく、メンバーがシェアした記事にコメントしたり、一緒にイベント立ち上げを提案したりしています。
鎌田 :
私は"メンバーの中で最も思いつく人"かもしれないですね。 私は“思いついたアイデアを言いがち”彼女がそれを “一番おもしろがってくれがち”というバランスです。彼女はとにかくおもしろがる能力がめちゃくちゃ高いんです。私のアイディアだけではなく、メンバーみんなが提案していることや、投げていることに対しても、彼女が一番おもしろがっているんです。
もしかしたらそれが運営に一番大切なことかもしれないですね。何か投げかけた時に、誰からもリアクションがなかったら、もう投げたくないじゃないですか。
だから
コミュニティを活性化していくためには、おもしろがる人がすごく重要で、その役目が運営というポジションなのかもしれません。 所長 :初めからそういうスタンスでやれていたんですかも?もしくは、どこかのタイミングでそういう風に変わっていったのでしょうか?
鎌田 :最初からそうだと思います。この3年間Little Life Labの活動を通して、一番生活が変わったのは私だと思います。ラボメンバーが何かおすすめしてくれたらすぐ試してみるので、日々使うものはラボメンバーが教えてくれたものばかりになっています。そういう意味では、
わたしは”最も思いつく人"であり、”最も試す人"かもしれません。 MAH00158リタッチ済.jpg 677.7 KB
馴染みやすく、居心地のいいコミュニティであるために。
所長 :コミュニティ運営は新メンバーをどう受け入れるかも大事なポイントだと思うので、ここから実際のデータを見ながらお話を聞いていきたいと思います。
スクリーンショット 2022-01-27 16.02.54.png 831.85 KB まず、会員数のグラフ(上の図)を見ると、30名ぐらいからスタートして今は70〜100名くらいをキープされています。特徴的なのが、新規メンバーの入る頻度で(下の図)、3ヵ月に1回新しいメンバーが入るスタイルをずっと継続されています。このサイクルにはどんな理由があるんですか?
スクリーンショット 2022-01-27 16.03.17.png 965.49 KB 鎌田 :3ヵ月ごとに15名ずつ募集する形にしています。理由としては、メンバーを覚えられないと困るからです。一気に30人と出会って、それぞれのことを覚えるのは大変じゃないですか。15人くらいだったらなんとなくその人の興味やキャラクター、どんなことをしているのかが把握できます。そうやって
お互いのことを知っていかないと、双方向なコミュニケーションが生まれていかないと思うんです。 応募が定員を超えてしまうこともあるのですが、20名以内で3ヵ月に1回入っている感じですね。
赤土 :あと、新旧メンバーのコミュニケーションを活性化するために、自己紹介ブログを書いてもらったり、新メンバーがやってみたいと言ってくれたイベントをなるべく早く企画・実行できるように心がけています。
自己紹介ブログはもともと居るメンバーもコメントしやすいようで、いつも盛り上がる気がします。 所長 :自己紹介を促してもなかなかハードルが高いイメージがあるんですが、Little Life Labではみなさん積極的に実践している印象があるのは、何か意識していることはあったりしますか?
鎌田 :私が一番最初に自己紹介をするということでしょうか。新メンバーが入るタイミングで、毎回自己紹介しているんです。なので、私は12回自己紹介しています。それを参考に皆さんが書いてくれているのと、今までのメンバーの自己紹介も見ることができるのでおすすめです。
所長 :なるほど。ところで、コロナの前後で大きく変わったことはありましたか?
赤土 :変わりましたね。気づいたらいつの間にか1ヵ月に14本くらいイベントを立てていて、すべてのイベントにある程度メンバーも集まってくれていました。
オンラインではあれど、交流する場を求めている人が増えていたのかなと感じます。 鎌田 :2019年1月からオンラインイベントとオフラインイベントを半分ずつくらいで開催していたんです。日本全国、海外からも参加してくれている人もいたので。コロナを機にオンラインに完全シフトして、イベントがやりやすくなりましたし、オフラインイベントに参加しにくかった遠方のメンバーもより楽しんでもらえるようになったのかなと思います。
逆に一旦コロナが落ち着いた2021年10月以降は、オンラインから少し離れている人が多いのかなという感じがしています。多分、物理的に出かけたり、そういうモードなのかなと。
赤土 :土日の予定が外であったりすると、なかなか家でオンラインイベントに参加する準備ができなかったりする気がします。なので、ラボもそろそろオフラインイベントを少しずつ増やしていこうかみたいな話はしています。
鎌田 :少し前に「ひと休みプラン」というものをつくりました。
辞める時に「また戻ってきたい時は戻ってこれるんですか?」と聞いてくれる人がたくさんいたんです。続けたいけど、一時的に忙しくてあまりイベントなどに参加できない、という時にメンバーが悩むのは申し訳ないので、“これはどうにかしたいね”ということで、退会ではなくて、簡単にお休みできる仕組みをつくりました。「今月は仕事が忙しいのでひと休みします」と1回抜けて、落ち着いたタイミングで「ただいま」「落ち着きました!」みたいな感じで戻ってきてくれたり、皆さんカジュアルに使ってくれています。
アウトプットするおもしろさを感じてほしい。
赤土 :一つに連載があります。連載は “メンバー連載” と呼んでいるのですが、自分がより深めていきたいテーマや、知識があって発信したい運営もサポートしながら、雑誌で連載を持っているみたいな感覚で投稿してもらっています。 鎌田 :今は情報を受け取る機会がすごく多いじゃないですか。でも、人はアウトプットする時に情報が整理されたり、考えが深まったりすると思うので、Little Life Labに入ってくださった方には「とにかく出してください」と言っています。 オンラインコミュニティはクローズドなので、知り合いも家族も見てないし、安心して書けます。 それがやっぱりSNSと違うところだと思うんですよ。 “近しい興味を持った人は見てくれる、でも自分の知り合いは見ていない”という安心感があれば、自分の考えを出し安くなるんじゃないかなと。アウトプットしてみると、誰かがリアクションしてくれて、それによってさらに、考えていることが前に進むと思うんですよね。 毎月のテーマも決めています。政治や気候危機など大きなテーマの時もあれば、心の健やかさ、働き方、パートナーシップなどいろいろあります。テーマについて「何か思いつくことがあったら是非書いて下さい」という投げかけをして、考えるセンサーを立てるきっかけをつくるようにしています。 MAH02211 2リタッチ済.jpg 1002.38 KB 赤土 :アウトプットすると必ず誰かからリアクションが返ってくるので、 メンバーにはとにかく“アウトプットする楽しさやおもしろさ”を感じてほしいなと思っています。 鎌田 :人間はそれぞれ反応できるセンサーが違うというか、生きてて興味を持てること、疑問を持てることが全員違うので、さまざまな人が気になったこと、興味があることを聞かせてほしいなと思うんですよね。それによって自分の世界の解像度も上がりますし。 みんなで気になることを持ち寄って、"日々おもしろくなったらいいね”という感じでやっています。 所長 :今回もあっという間の1時間でしたが、最後に今日の対談はいかがでしたか。 鎌田 :今日はOSIROさんのイベントなので、運営視点みたいなことを話さなきゃいけないはずなんですが、結局自分が楽しいです、みたいな話をずっとしてしまって大丈夫だったのか不安です。一方、そのくらい 本当に“一メンバーとして”という思考が強いんだなと今日改めて再確認できた ので、そういう意味でも非常によかったです。 赤土 :私もちょっとラボ自慢みたいな、“うちのコミュニティめっちゃいいんだよ、楽しんだよ”、という自慢になっちゃってないかなとちょっと心配だったんですが、参考になっているという声があってよかったです。 ▼ Little Life Labの活動についてはこちら 暮らしにまつわるさまざまなことを、みんなで実験・探求するコミュニティ OSIRO資料ダウンロード 鈴木 駿介/オシロ株式会社 コミュニティ熱量研究所 所長 コミュニティ・データサイエンティスト 筑波大学大学院、物理物質科学研究科で修士号を取得後、ライオン株式会社に研究職として入社。生産性を考慮した新製品の容器設計、工場での生産導入に従事。実際にユーザーとして、複数のコミュニティに属した経験からコミュニティの可能性を感じオシロに入社。2019年8月に導入されたコミュニティの状態を可視化し、運営者がスピーディーな意思決定を行えるサイドダッシュを開発。熱量研究所の所長としてコミュニティの盛り上がりを可視化する熱量指数を研究、データを活用した新機能開発やコミュニティプロデュースを行なっている。Text: 村山 愛津紗 / コミュニティアドバイザー・ライター