OSIRO Dialogue – インタビューコミュニティープロデューサーによる、コミュニティダイアローグ『OSIRO Dialogue』
日々コミュニティ運営者と伴走するコミュニティプロデューサーが何より大切にしていること、それは「ダイアローグ」。 コミュニティオーナーが本気でやりたいことを理解し、 どうやってコミュニティで実現するかを共に考え、伴走します。このシリーズではそんな一コマをシェアしていきます。
30年以上にわたって「快適な生活のためのフィットネス!」をテーマに発信する雑誌『Tarzan』が手掛けるオンラインコミュニティ「TEAM Tarzan」。
前編では、運営リーダー髙橋さんご自身の編集者人生のお話を交えて、OSIRO導入に至ったきっかけやTEAM Tarzanでの活動をお伺いしました。
後編では、TEAM Tarzanが体現するコミュニティの “価値” をさらに深掘りします。
〈前編の続き〉
テキストが残るからこそ、コミュニティとして成立する
高田:「TEAM Tarzan」はコミュニティ化がとても早かったですね。
髙橋:すでにコミュニティ専用のプラットフォームがあるというのは、立ち上げ時にすごく大きなアドバンテージでした。
無料メンバーシッププログラムである「CLUB Tarzan」 から次のステップに進もうと考えたとき、実は他社さんともアプリ制作含め、いろいろ検討したのですが、コストが莫大だったんです。それをペイするまではかなり大変で、投資すべきかどうかと悶々していたところで、OSIROさんのサービスを知りました。
コミュニティという未知の領域に挑戦するわけなので、システムだけでなく
「どうやってコミュニティを活性化していくのか」というノウハウをお持ちだったのはとても心強かったですね。
高田:ありがとうございます。特に気に入っている機能などはありますか?
髙橋:メンバーの活動が主となる「グループ」がメイン画面にあること、イベント機能が使いやすいのがすごくいいですね。
▲ TEAM Tarzanではメンバー発信の部活が数多く立ち上がっている
それから、「プロフィール」や「ブログ」、「コメント」などの
双方向のテキストコミュニケーションがあるのは、参加しているメンバー自身が自分の考えを整理して発信できるというメリットが非常に大きい。
例えば音声SNS「clubhouse」は、録音もできずアーカイブもされないがゆえの立ち話的なラフさが特徴のひとつだと思いますが、「残らない」ことが逆にコミュニティにはなり得ないのではないかと。特にコロナ禍のいまは必ずしもリアルで月一回会えるわけではないので、オンライン上で相手がどういう人かを知るには、アーカイブを見るしかない。そういう意味で、「形が残る」テキストのブログ形式やチャット形式というものがあるのは、すごくよかったと思います。
高田:それはおもしろい見解ですね。
髙橋:もちろん、書くのが苦手な人というのもいらっしゃるので、そういう方は各種イベントやライブ配信に参加していただいています。
「TEAM Tarzan」 では何も強要はしないとメンバーに伝えているんですよ。イベントに参加するだけもよし。ブログを書くだけもよし。チャットするだけもよし。忙しければスタンプを押すだけもよし。お金を払って入会しているのに、何かを強制されたくはないですよね(笑)
▲ TEAM Tarzanの盛り上がりを牽引する運営リーダー髙橋さん
高田:現在5期メンバーを募集したところですが、続々と希望者が集まりましたよね。まさにTarzan的なメンバーが集まったと思いますが、その要因をどのようにお考えですか?
髙橋:やはりトレーニーの孤独は結構大きな問題だなと思っていて。レズミルズとかクロスフィットとか、リアルで行うグループ系のフィットネスプログラムだったら良いんですけど、どうしても自宅でやっている人は続かないし、ジムに通っていても横のつながりをつくるのが難しい。自分が取り組んでいる競技の仲間がほしいとか、たまに皇居ランを一緒にやる人がほしいとか。また、他のトレーニーが普段どういう食生活をしているのかを知りたい、シェアしたいという人たちが集まってきていると思っていて。そこは今のジムの体系とか『Tarzan』本誌ではカバーしきれないところだったと思います。「TEAM Tarzan」もはじめは編集部主導のコンテンツでしたが、今やメンバーの活動が発信できてきたことも大きいのかなと思います。
高田:「『Tarzan』はDoの雑誌で、読者が動くまでが完結」ということを髙橋さんがお話ししていましたけれども、私たちも、システムはもちろんですがコミュニティプロデューサーとしてコミュニティの活性化に伴走させていただいています。もし我々のサポート面で助けになったことがあれば、教えてください。
髙橋:ありすぎてどこをピックアップしましょうか...(笑)やはり、立ち上げ時のストレスが大きかったときに、支えてくれたことが一番でしょうか。
「TEAM Tarzan」 では新規メンバー募集時に毎回オンライン面接をしているのですが、これも高田さんからアイデアをいただきました。運営側としては、1回でも顔を見て話を聞きたいという意図です。マックス5人1組で30分。「TEAM Tarzan」への期待などを聞き、運営側からも自ら発信したり、教えたりすることでより楽しめる場所だという「TEAM Tarzan」の価値観を共有します。
そのような面接を経て、自己紹介プロフィールまで書いてくれたメンバーが退会していくことが、本当にしんどかった。そのときにどうしても退会者だけにフォーカスしてしまいがちなのですが、助言をいただき、残っているメンバーをどうフォローアップしていこうかという考え方へとシフトできたのはよかったです。
あと、自分は「TEAM Tarzan」 しか知らないわけで、他のコミュニティが育ってきた過程に比べてどうかなど、一歩引いた目線でのアドバイスがもらえるのはありがたいですね。
高田:ありがとうございます。私もトレーニーの1人として、関わらせていただいてとても嬉しいです。今後「TEAM Tarzan」でこうしていきたい、というビジョンはありますか。
髙橋:「TEAM Tarzan」 のメンバーと一緒にフェスがやりたいんですよね。おそらく数年先になってしまうかもしれませんが……。コロナ禍で会えていないメンバーもいるし、地方にいるからこそ会えないメンバーもいるし。そうですね、フェスの前に、まずはオフ会をやりたい。旅館を借り切って、大宴会をやりたいです(笑)
最初の構想のフェスというのは、学園祭みたいなものです。そのひとつが「脱げるカラダ」。今年の「脱げるカラダ」にフォーカスして、「2021脱げるカラダ表紙部」を立ち上げ、みんなで切磋琢磨して行きましょうというムーブメントは作っていけました。
▲ コミュニティ内の代表的な共創事例「脱げるカラダ表紙部」
高田:すでに「脱げるカラダ部」内では過去の受賞者の方々が、次回出場したい人たちをコンサルしていますよね。
髙橋:運営側はまったく関わっていないですからね(笑)メンバー同士でアドバイスしあったりしていて、まさに共創というか、コミュニティが自走している感じがすごいです。
(※後日、なんとTEAM Tarzanメンバーが脱げるカラダ2021のグランプリに!)
高田:むしろ 『Tarzan』本誌に刺客を送り込もう!くらいの熱量を感じます。フェスは髙橋さんの原体験にも繋がりますよね。今のお仕事で実現できたら面白いですね。
髙橋:運動会の実行委員的な感じで立ち回っていただくもよし、競技に出ていただくのはもちろん、日本酒好きのメンバーが地酒を持参して出店してもよいかと(笑)。
高田:運営もやりつつ、出場しつつ、出店もやりつつ(笑)。それは絶対、楽しいでしょうね。
コミュニティという「焚き火」に集まる人を愛せるか
高田:聞きにくいことですが、「TEAM Tarzan」に対する御社の評価はどうなのでしょうか。
髙橋:僕も知りたいです(笑)
サブスクリプションについては、「TEAM Tarzan」 は何千人、何万人の登録者を求めるコミュニティではないんです。
あくまで熱量が高いメンバーに集まっていただくことが第一で、コミュニティのメンバーに協力していただく広告案件やタイアップ事例を増やしていけたらと。ありがたいことにすでに何社もお声がけいただいています。クライアントも含めてコミュニティに巻き込めたら面白いですね。
高田:髙橋さんが御社の中で、もはやコミュニティのパイオニアだと思うんです。「TEAM Tarzan」での経験が他の仕事に生きている部分はありますか。
髙橋:僕は広告営業の仕事と「TEAM Tarzan」 の運営リーダーの2軸ですが、融合している感じです。コミュニティで得た知識を営業に生かせますし、案件をできるだけ「TEAM Tarzan」メンバーにも還元したいと考えているので切り離せない。一部門を極めるというのも面白味ではありますが、融合しているからこそのダイナミズムはあるなと思います。面白いことをやっていて会社にも利益が出ている、最高ですね(笑)
きっと、雑誌というものがコミュニティに向いているものだなと僕は思っていて。『Tarzan』は買うときに意思を持って買う嗜好品というか。「これが好きだ」と思って買ってくださっている方が潜在的に多いプロダクトだと思うので。それはもしかしたら弊社発行の『BRUTUS』でもできるかもしれないし、『Casa BRUTUS』でもできるかもしれないし『GINZA』でもできるかもしれない。(コミュニティを)横展開ができる可能性がある。そのきっかけとして、『Tarzan』は必ず成功したい。成功しないといけないという使命感は持っています。
高田:他社さんが「自分たちもコミュニティをやりたい」という場合、伝えたいことはありますか。
髙橋:「迷わず行けよ 行けばわかるさ」──これ、アントニオ猪木さんの引退時の言葉なのですが、僕、好きなんです。結局は「エイヤー!」でやるしかないところがあって、やった後にどう楽しめるか、なのかなと。
コミュニティマネージャーはやることがたくさんあるんですよ。メンバー間とのやりとり、システム的な運営保守、編集部とのやりとりなど、いろいろあるなかで、それでもメンバーがやりたいと思っていることを吸い上げて形にしていく面白さ、その流れをつくれる楽しさを感じられるかどうか。コミュニティって「焚き火」みたいなもので、薪をくべないと火は大きくならないし、くべればくべるほどよいかというとそうでもない。その塩梅も面白味のひとつなんです。
例えば、コミュニティマネージャーの立ち位置もいろいろあると思っていて、静観している人だったり、積極的に話に入っていく人などいろんなタイプがいると思うんですけど、一番大切なことは、その焚き火に集まってくれた人を愛せるか。……というとちょっと大袈裟ですが、思いやれるかというのは、すごく大事な素質なのかなと思います。
高田:そういう素質をもった人が会社にひとりでもいたら、コミュニティは運営できるということですね。
髙橋:そのとおりです。
最近、「TEAM Tarzan」 のメンバーのひとりが、コミュニティ内ブログでマガジンハウスの雑誌をピックアップして記事を書いてくれたんです。そこに、創業者である岩堀喜之助が掲げた「読者を大切に」「想像を大切に」「人間に大切に」という、弊社の社是が載っていました。
▲社長室に飾られたマガジンハウス社の社是
まさしくこの3つの柱が、コミュニティに通ずる部分があるなと思っていて。読者を大切にすること。あたらしいものを創り出す面白さを大切にすること。読者もそもそも人間であるからその人らしさを大切にすること。この3つを「TEAM Tarzan」では重要視していますし、これからも大切にしながら読者と一緒につくるあたらしい雑誌の姿、コミュニティというムーブメントを楽しんでいきたいなと思います。
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髙橋優人(たかはしゆうと) / マガジンハウス デジタルビジネス ディレクター
1992年生まれ。2015年、早稲田大学卒業後、マガジンハウスに入社。『Tarzan』編集部、『Hanako』編集部、マーケティング局宣伝部を経て、現職。学生時代には音楽フェスでのアルバイトでアーティストと観客が一つになり生まれるパワーに魅せられる。現在、TEAM Tarzan運営リーダーとして「読者と編集部、読者と読者がつながる、Tarzanらしい新しいフィットネスライフの提案」を目標に活動。
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全国から集まるメンバー、一流トレーナー、『Tarzan』編集部から “フィットネスインスピレーション”を得られる場。
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コミュニティプロデューサーによる、コミュニティダイアローグ
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高田 和樹
コミュニティコンサルタント・プロデューサー
アパレル、大手メディア運営企業、外資系研修会社等を経て、プロのカヌー選手として国内外を転戦。アスリートの傍ら、オンラインコミュニティ黎明期の2010年代からコミュニティプロデューサーとして活動開始。会員組織の活性化はもちろん、コミュニティを起点とした新規ビジネス創出を得意としている。理論だけでなく、自らコミュニティを運営してきたリアルな成功、失敗体験に裏打ちされたアドバイスで大手出版社、メディアコンテンツのコミュニティDXを推進。SNS運営やPCのセッティングまで「コミュニティ成功のためならできることは何でもやる」のが信条。最近の趣味は焚火。以来、コミュニティと薪に火を着け続けている。TEAM Tarzan発足時からコミュニティサポーターとして参画。
Text. 高田和樹 / コミュニティプロデューサー