コミュニティ熱量研究所 – 対談イベントまとめ
「コミュニティ×データ」でデータサイエンティスト鈴木こと "所長" がOSIROユーザーのリアルなコミュニティ運営に迫る『コミュニティ熱量研究所』。ここでは "対談まとめ" として当日語られたポイントを抜粋しお届けします。
オンラインコミュニティをスタートする誰もが ”ファンとファンをつなげて盛り上げよう” と勢いよくスタートを切る。しかし、"一生懸命やってるのに思うようにいかない"と悩む人は少なくありません。
コミュニティ運営には正解がない。では、どう学べばいいのか。
2019年4月"メンタルコーチング"を軸に、スポーツに携わる全ての人の達成プロセスをサポートするコミュニティ「Space」を立ち上げた鈴木颯人さんはその難題をさまざまな試行錯誤で乗り越えて来た一人。他コミュニティから積極的に運営を学び、メンバー間の関係性、運営体制づくりなどあらゆる角度から工夫を重ねてきた鈴木さん。ある時気づいたのは「オーナーとファン1対1の関係性の大切さ」だったと言う。コミュニティ開始から2年、成長し続けるSpaceの運営術についてお伺いしました。
コミュニティ開始日: 2019年4月
参加費: 4,950円 / 月(税込)
メンバー数: 開始時45名 − 8月対談時点85名
メンバーが「匿名」で参加できるシステムを探していた
オシロ鈴木 (以下、所長) : スポーツメンタルコーチである颯人さんがコミュニティを始められた経緯を教えていただけますか?
鈴木:実はコミュニティをスタートする3年以上前の2016年頃からずっとオンラインコミュニティをやりたいと思っていたんです。
僕はスポーツメンタルコーチとして資格講座もやっていて、アスリートだけでなく、メンタルを学びたい方に向けて情報を発信していたんです。当時はオフラインだったので時間や居住地の兼ね合いで参加できない人が多くて、“指導者や、親御さんなど、本当に伝えたい人達に参加してもらうにはどうすればいいかな”と悶々とする中で「オンラインコミュニティ」に着目したのが始まりです。
ただ、従来のオンラインコミュニティと言えばFacebookの非公開グループが主だったんです。“メンタル”は内容的にすごくセンシティブなこともあり、実名登録のFacebookではない形を模索していた時、匿名ニックネームを使えるOSIROというシステムがあると聞いて「これだ!」と思いました。
所長:「匿名性」はそれほど大切な要素だったんですね。
鈴木:やっぱりオープンな場でメンタルに関する相談をするのに抵抗を感じる人は多くいて、特に日本では匿名性を求める人達は多いと感じます。実際にTwitterの匿名アカウントからDMで質問を頂くことも多くて、中には質問をするためだけに匿名アカウントを作る方もいるんです。だからこそ、みなさんが安心して使える場所を提供したかったんです。
他コミュニティをお手本に学び、まずは試してみる
所長:当時は今ほど「オンラインコミュニティ」がメジャーじゃなかったと思うんですが、始める前の不安や悩みはありましたか?
鈴木:OSIROとの出会いにワクワクが先立っていた僕は、逆に始めた瞬間に不安が出てきました。きっと今日このイベントをご覧の方の中にも同じ悩みを感じている方がいると思うんですけど、先ずは「集客」への不安ですね。そして「システムが使いこなせていない焦り」もありました、まったく新しいツールだったんで。。
そこで気づくんですよね、“そもそもオンラインコミュニティって何する場なんだっけ?”って。
所長:もともとどういったことを発信しようと考えていたんですか?
鈴木:それも明確に決まってなかったです。オンラインコミュニティをやりたいだけだったんですよ。(笑) “中身はその後考えりゃいいっしょ”みたいな、すごいノリでした。
情報もなかったので、先ずは他のOSIROユーザーコミュニティさんに実名で入会させて頂いて勉強することからスタートしました。
最初に入会させて頂いたのが四角大輔さん主宰の〈LifestyleDesign.Camp〉で、四角さんは毎週メソッドを書かれていて、それをCamper(メンバー)に配信されてるんです。“こんな伝え方があるのか!これは自分がやりたいことと似てるかもしれない!”と思いました。早速コミュニティマネージャーと2週間に一本づつメンタルに関するコンテンツを投稿し始めました。
所長:“入って、学んで、実践する” っていう感じですね。
鈴木:そうですね。ほんとうに赤ちゃんの様に、見たままをとにかく真似ていきました。
コミュニティには正解がないからこそ、正しく分析する
所長:「集客の不安」もあったということで、そこはみなさん共通の不安ポイントだと思うので実際の会員変化をグラフ(上の図)で見ていきたいと思います。
32人で活動スタートされてから去年の夏まで大体40名で推移していたのが、9月から増えていますが何かきっかけはあったんですか?
鈴木:事前募集のアンケート回答やコミュニティTOPページの流入を分析したら、Instagramが多いことが分かったんです。僕自身Twitterフォロワーが14万人いるんですけど、そこからの流入はあまりないことが明らかになって、“これはもう捉われちゃいけないな”と思いすぐにInstagramの注力にシフトしました。そこから40名くらい増えました。
恐らく、Spaceに入って欲しい指導者だったり、親御さんの層がTwitterにはあまりいなかったってことですよね。Instagramの方がSpaceがリーチしたい30〜40代のユーザーが多かった。
最初は正解が分からないからこそ、先ずは正しく分析することを重点的に行いました。
既存メンバーが新メンバーを支える「バディー機能」を駆使
所長:入会スタイルもコミュニティによって随時入会OKのところから定期的な入会などさまざまですが、Spaceさんは色々試されましたよね。最終的にどれがよかったですか?
鈴木:3ヶ月、半年、毎月とそれぞれ比較した結果、毎月募集がいいかなと感じています。当初僕らの中で “随時入会だとコミュニティが熟成しないんじゃないか”という考えもあったんです。でも結局大して変わらなかったことから月1入会にしました。
それと同時に新メンバーをちゃんとケアするために「バディ制度」を取り入れました。
*バディ制度 : 新メンバーが迷わないように考案された新旧メンバーマッチング機能
機能は前から使っていたんですが、体制として機能していないことに気づいて「バディやりたい人挙手」制度を取り入れてみたら、いい感じになりました。
所長:運営側は常に“新メンバーをフォローしなきゃ”っていう使命感を持ってますけど、メンバーさんにも手伝ってもらう感覚でしょうか。
鈴木:Spaceは活動の中でアウトプットだったり、偶然の出会を大事にしていることから、「手伝ってください」ではなく、「みなさんにとってチャンスなんですよ」と伝えたんです。
既存メンバーが盛り上がって仲良くなるのはもちろん良いことですが、新しく入るメンバーがその輪に入れない空気を作ってしまうのは、既存メンバーからするとチャンスを潰してしまってると思うんです。
そこをしっかり伝えた結果80人中10人のメンバーが「やりたいです!」と手をあげてくれました。そこから一人一人丁寧にサポートしてくれていて、中にはZoomで1on1ミーティングしてますとか。
システムでできることは様々あるとは思うんですが、“そのシステムをどう活かせるか”が運営側に求められるスキルだと思うんです。
そういう意味でも、自分達の世界観とフェーズに合わせてカスタマイズできるのがOSIROの素晴らしいところだと思います。
ピンチで学んだ「オーナーとファン」の関係構築の大切さ
所長:オシロは退会率8%くらいを平均ラインと考えているんですが、Spaceさんはこの2年ずっと3%台の推移でメンバー満足度の高さが伺えますが、日々どんなことを意識していらっしゃいますか?
鈴木:常に一人一人の目線に立って、“どうやったらみなさんが満足してくれるか”、“どうやったらみなさんが楽しんでくれるか”だけを追究してきたと思います。
ですが、コミュニティ開始から半年経ったあたりで解約率が5%に達したんです。とても危機感を感じてオシロさん主催のイベントに参加したり、必死で色々なヒントを探しました。
その時気づいたんです、僕らがいつも考えてるのは “メンバー同士がどうやったら盛り上がるのか” だけで「そもそもオーナーとファンの関係構築できてなくない?」って。
所長:ファン同士の交流を盛り上げることにを意識が偏り過ぎたと言うことだったんですね。
鈴木:多くのコミュニティオーナーさんが陥りがちな罠だと思うんですけど、「オーナーとファン」と「ファンとファン」のアプローチは分けて考えないと熱量にしっかり表れないし、最終的に解約率にも影響してくるということに気づいたんです。その頃からです、主宰者である僕・鈴木颯人がちゃんと発信する大切さを意識し始めたのは。
コミュニティ運営って正解がどんどん変わるんですよね。コロナとか時代の変化もそうだし、メンバーも変わっていくので。そうなると、“答えを出す” じゃなくて、“その時々の最適解を見つけていく” ことが大事であって。そのためにも「オーナーとファン」のコミュニケーションが取れていないと、相手が求めていることすらも分からないと思ったんです。
所長:実際に颯人さんが発信されるようになってからメンバーのアクション量が増えた様子が数値から読み取れますね。コミュニティメンバーのアクション量を数値化した熱量指数(OSIRO独自指標)が他のコミュニティの1.5倍になっています!
鈴木:メンバーとの関係構築への気づきは大きかったですね。「とにかく盛り上げよう!」から「熱量が高いメンバーからじわじわ育てよう」に意識が変わったことが一番大きいと思います。
"コミュニティマネージャーを潰さない"運営方法の追究
所長:今コミュニティ内で音声コンテンツをラジオみたいな形で配信されてますよね?
鈴木:これも別のコミュニティさんからのヒントで、本田直之さんのHonda Lab.なんですけど。本田さんがラジオアプリを使われていて、「これすごい!」って思って取り入れさせて頂きました。
テキストコンテンツを制作し続けるのってすごく大変で。先ずは音声にしようと思って。
毎朝4時、5時くらいに起きるんですけど、朝イチでラジオ収録して朝イチで流すんです。それで反響があったものを文字に起こして、編集してコンテンツにする流れをとってます。
所長:それ面白いですね!
最近よく聞く、noteとかで書いて反響があったものを本にするみたいな流れと似てますね。
鈴木:コミュニティ界隈の方ともよく言っているんですが、結局「コミュニティマネージャーが潰れちゃうのはよくないよね」って。
大変になり過ぎると続かないので、“楽しく簡単に” 続ける方法を追究することが大切だと思います。
所長:Spaceさんは運営体制もコミュニティマネージャー、広報担当、インターンと結構大所帯ですが、最初からその体制だったんですか?
鈴木:最初は私とコミュニティマネージャーの2人でスタートして、1年後にチームメンバーを増やしました。
僕の仕事面でも集中すべき取り組みが重なって、コミュニティ運営が大変になったんです。それをきっかけに、外部にお願いできることは積極的にそうするようにしました。
コミュニティはスキルじゃなく「情熱」
所長:どのコミュニティも運営体制づくりって悩まれると思うんです。「こういう人がいてくれると上手く回るよ」とかアドバイスはありますか?
鈴木:コミュニティ運営はスキル以上にモチベーションだと思うんです。情熱がない限りは、どれだけスキルがあっても続かない。逆に情熱があればスキルって簡単に補えますから。
「とにかくコミュニティが大好き」そういう人がいてくれたら万々歳だと思います。
所長:なるほど、ありがとうございます。
あっという間にお時間となりましたが、今日の対談はいかがでした?
鈴木:こちらこそ。こういう機会がなかったら、自分のコミュニティをここまでちゃんと振り返ることはなかったかもしれません。
何よりこれを見て頂いているみなさんに、「コミュニティっていいもんなんだ」って思ってもらえれば、どんどんコミュニティが増えて僕らのチャンスにもなってくると思います。
そこからいろいろな偶発が生まれるだろうし、この輪が沢山の人に広がるといいなと思います。
対談フルバーション動画はこちらから▼Spaceの活動についてはこちら
▼イベントまとめバックナンバーはこちらから
▼最新のイベント情報はこちら
・約1年で会員数100人アップ!そのポイントは?
・アップデートを繰り返し改善を続けるその意図は?
・会社のなかで、コミュニティの立ち位置はなにか?何を求められているのか?KPIは?
・学生アンバサダー制度。どういう経緯で?
・企業とメンバーの業務案件マッチング。それが実現可能になったのはなぜか?
OSIROサービス資料をご希望の方は上のボタンよりダウンロード頂けます 鈴木 駿介/オシロ株式会社
コミュニティ熱量研究所 所長
コミュニティ・データサイエンティスト
筑波大学大学院、物理物質科学研究科で修士号を取得後、ライオン株式会社に研究職として入社。生産性を考慮した新製品の容器設計、工場での生産導入に従事。実際にユーザーとして、複数のコミュニティに属した経験からコミュニティの可能性を感じオシロに入社。2019年8月に導入されたコミュニティの状態を可視化し、運営者がスピーディーな意思決定を行えるサイドダッシュを開発。熱量研究所の所長としてコミュニティの盛り上がりを可視化する熱量指数を研究、データを活用した新機能開発やコミュニティプロデュースを行なっている。