10代から70代まで、世代も職業も異なるメンバーが「生徒であり、先生」として集う学びと実践のオンライン寺子屋「朝礼だけの学校」。教育改革実践家として知られる藤原和博氏が提唱する「インディペンデントで希少性の高い生き方」を実践するために、メンバー同士で知識や経験のシェアが行われています。
2024年11月、朝礼だけの学校は新たなフェーズへと歩み出しました。朝礼だけの学校の「校長」に、これまで副校長を務めていたプロデューサー・人形つかいの佐藤譲さんが就任したのです。朝礼だけの学校の創設から現在まで運営に携わり続け、藤原さんからバトンを引き継いだ佐藤さんは、コミュニティの運営者であるとともに、藤原さんの理論の実践者でもあります。
2代目校長として、「インディペンデントで希少性の高い生き方」の実践者として、朝礼だけの学校にはどのような価値や魅力を感じているのでしょうか。佐藤さんに聞きました。
朝礼だけの学校
「朝礼だけの学校」は、教育改革実践家の藤原和博氏が創設した「インディペンデントで希少性の高い生き方」を目指すオンライン寺子屋。正解のない激変の時代において、異なる要素を掛け合わせて新たな価値を生み出す「情報編集力」を磨きます。みんなが生徒であり先生(生徒=先生)の文化のもと、お題への挑戦や独自のイベント企画を通じ、互いに刺激し合いながら自分らしいキャリアや美意識を育んでいる。クローズドで安心な環境のもと、小学生から70代まで多様な仲間が在籍し、切磋琢磨している。
コミュニティの詳細・入会はこちら▼
https://chorei.jp/about
朝礼だけの学校 ファウンダー 藤原和博さん
教育改革実践家/リクルート社初代フェロー
「朝礼だけの学校」初代校長で、2024年11月より理事長に就任。
1955年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、1993年よりヨーロッパ駐在、1996年同社初のフェローとなる。
2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。2008年〜2011年橋下大阪府知事の特別顧問。2016年から2018年まで奈良市立一条高等学校の校長を務めた。現在は山梨県知事顧問として県立高校で年20回前後「よのなか科」の授業実践をしながら、アクティブラー二ングができる教員を養成しているほか、富士河口湖エリアでアートプロデュースに力を入れる。著書は累計95冊165万部、講演の累積回数はもうすぐ2000回を超え、現在も教育改革の最前線に立ち、自身の知見を社会へと還元している。
藤原和博さん公式サイト「よのなかnet」▼
https://www.yononaka.net/
プロデューサー・クリエイターとして感じた「インディペンデントに生きる」ことの難しさ
image1.jpg 172.76 KB朝礼だけの学校 校長 藤譲さんーー佐藤さんと藤原さんの出会いにはオシロ代表の杉山(博一)が関係していると聞きましたが、どのような経緯だったのでしょうか?
佐藤譲さん(以下、佐藤さん): そうなんです(笑)。僕はプロデューサーとして、朝礼だけの学校に最初から関わっているのですが、最初に藤原(和博)さんとお会いする機会をいただけたのは、実は杉山さんの采配なんです。
杉山さんとは、佐渡島(庸平)さんのコミュニティである「
コルクラボ」で出会いました。これからの編集者はコミュニティのプロデュース力が必要、という佐渡島さんの慧眼に感動して、半年間ほど積極的に腕を磨きました。自由闊達な場で、私は激しめのディスカッションもしていたんですが、杉山さんはそういう私の姿を覚えてくれていたようです(笑)。
ーーそこからどのように藤原さんとの出会いにつながっていくのでしょうか?佐藤さん: スタジオジブリのあとは東京のテレビ局で映画プロデューサーとして働き、その後、独立して京都に移住しました。リモートを前提にエンターテインメントのプロデュースや会社経営をしていたんですが、あるとき人形劇という表現方法に興味が出てきて「自分の作品をやりたい」という意思が初めて出てきて、エンタメの仕事を減らしていこうと考えたんです。そんなときに、Wantedlyでオシロが「コミュニティプロデューサー」という職種を募集していることに気づきました。
その時、「あれ、オシロやん」と思うと同時に、コミュニティプロデューサーという仕事に興味を持ち、すぐに応募しました。すると杉山さんが「なんで応募してきたの!?」とすぐに連絡してくれて(笑)。その時に人形劇の修業を始めたこと、表現者になったぶんエンタメ以外のプロデュース活動も行って、バランスを取りたいことを正直に打ち明けました。
そんなやり取りをした後、杉山さんから
「佐藤さんに会わせたい人がいる」と連絡がありました。それが藤原さんだったんです。杉山さんは藤原さんが京都へお越しになるタイミングでお目にかかる機会をセッティングしてくださり、そこで藤原さんの厳しい面接を通過して(笑)、意気投合して今にいたります。なので、藤原さんと僕との出会いは、杉山さんの采配があってこそですね。勘が鋭い方です。感謝しています。
ーーなるほど。では、そこから朝礼だけの学校の初期構想が始まっていったのですね。
佐藤さん: そうです。2020年10月頃のことでしたが、藤原さんはリクルートで伝説的な活躍をされた方であり、教育改革実践家としてずっと現役で活躍されているので、僕にとって雲の上のような存在に思えました。しっかりと誠意をもってお会いしたいと考え、当日までに
藤原さんの著書を50冊ほど読み、さまざまな資料も用意し当日持参しました。そこで藤原さんに「よろしく」と言ってもらい、朝礼だけの学校の立ち上げから運営に携わらせてもらうことになりました。
ーーとてつもない熱量で提案に臨まれたのですね。佐藤さんは、藤原さんが持つお考えのどのような部分に惹きつけられたのでしょうか?
佐藤さん: 朝礼だけの学校のコミュニティ紹介ページのメッセージにも記載していますが、僕はやはり、
藤原さんの提唱する「インディペンデントで希少性の高い生き方」に強く共感し、自分も実現したいと思いました。
フリーランスのプロデューサーとしてクリエイターのプロデュースをしながら人形劇の道を探求してきました。そうした中で痛感したのは、まさに
インディペンデントに生きることの難しさでした。
ーープロデューサーであり、クリエイターでもある佐藤さんはまさに「インディペンデントな生き方」を体現されているように思えますが、どのような点が難しく感じたのでしょうか?
佐藤さん: 全然そんなことはないです。むしろ、フリーランスとして活動していると、それがいかに難しいことなのかがよくわかります。特に独立当初は、どうしてもクライアント企業に合わせる場面が多く「フリーになったはずなのに、なぜか組織に振り回されている」と感じることがよくありました。
今でも僕は「インディペンデントで希少性の高い生き方」を実現する途上にいると思っています。藤原さんのようなインディペンデントな生き方を実現できたら最高だなと思いつつ、会社・組織にもお金にも縛られない、自分なりの「インディペンデント率」をさらに上げようと考えているのが、自分の現状です。
朝礼だけの学校はあくまで「学校モデル」のコミュニティであり、全員が「生徒=先生」
image4.png 110.85 KB朝礼だけの学校の基本方針と校則(三原則)(提供:朝礼だけの学校)ーー藤原さんが提唱する理論は、自身の経験を再現可能な形にまで落とし込んでいる、実践に根差したものだと感じています。
佐藤さん: その通りです。
藤原さんは「教育改革実践家」。現在でも山梨県知事の顧問を務めていらっしゃいますが、そのかたわらで山梨県の高校で「よのなか科」というアクティブラーニングの授業をずっと持たれていたり、かつて藤原さんが民間人校長を務めていた和田中学校では、現在も土曜日に「土曜寺子屋(ドテラ)」という枠で「よのなか科」の授業を行っています。常に自分自身でまず実践し、アップデートし続けているのです。
ーー今でも現役で現場に出続け、理論をアップデートしていらっしゃるのですね。
佐藤さん: 現場は教育改革の場であったり、国家公務員と様々な政策をつくる場であったり、あるいは県知事の顧問としての場であったりとさまざまですが、昨年70歳を迎えた今でも縦横無尽の活躍をされているのは本当にすごいと思っています。
富士河口湖での活動を年々増やしていて、藤原さんが隈研吾さんと再びタッグを組んでつくった「
VILLA 富士河口湖 AERO」は藤原さんの人生哲学が凝縮されたアートです。最近では、キングコングの西野亮廣さんが「VILLA 富士河口湖 AERO」を訪れたことをきっかけに、富士河口湖との縁が生まれて、「渋谷から富士河口湖へ拠点を移す」という決断に至りました。そうした創造や革命の連鎖が藤原さんを起点に生まれていっています。
そんな
藤原さんを「朝礼だけの学校」で身近に感じ、「70歳になってもますますイキイキと生きていけるんだ」と思えるのは希望になります。「朝礼だけの学校」では、そんなロールモデルを間近で感じ取り、学び合い、いつしか「当たり前」にもなって、自分自身も実践していける。それこそがこのコミュニティの良いところだと考えています。
ーー佐藤さんは朝礼だけの学校での藤原さんのご発言をデータベースにしていると聞きました。
佐藤さん: 僕は誰よりも藤原さんの理論を体現し、希少性を高めていきたいと思っています。それと同時に、
藤原さんが「朝礼だけの学校」で語ったことを、しっかりとデータに残していくことで、藤原さんの言葉にアクセスしやすい場にしていきたいと考えています。
例えば、「朝礼だけの学校」のコミュニティサイトの下部には「テキスト化」という項目があり、そこが
藤原さんの発言をまとめたデータベースになっていますが、累計の文字数は約195万字になりました。
image5.png 569.69 KB朝礼だけの学校では、佐藤さんの手により藤原さんの「目覚まし朝礼」のテキスト化記事が網羅されている(提供: 朝礼だけの学校)ーー195万字!? 単行本換算でも20冊以上はある文字数です。すべてご自身で書き起こしをしたのですか?佐藤さん: 数回分は他の方に手伝ってもらったのですが、ほぼ全て私の手で起こしました。
藤原さんがこれまで配信してきた「目覚まし朝礼」の動画を、僕がすべて手打ちでテキスト化しつつ、画像としても残したい図解などが登場した大切な場面のスクリーンショットも撮影してまとめているのです。
これは僕にとって写経のようなもので、藤原さんの教えをインプットして、自分自身でアウトプットすることを楽しんでいる側面があります。藤原さんのリズムを身体に馴染ませたことで、大学や企業で講演の仕事があるときにも、非常に役立っています。
ーー朝礼だけの学校としても、藤原さんとメンバーの方々は比較的フラットな立場でコミュニケーションをとっている印象です。
佐藤さん: 藤原さんご自身の美意識もあり、
コミュニティのなかで藤原さんが「カリスマ」や「師匠」といった絶対的な存在にならないよう、強く意識されていると思います。
例えば、多くのオンラインサロンでは一人のカリスマ的な存在を中心に回っていると思うのですが、朝礼だけの学校はあくまで「学校モデル」のコミュニティであり、自治性を重んじています。なにより、
朝礼だけの学校は藤原さんや僕も含めた全員を「先生であり生徒」と捉えています。そういったコミュニティとしてのスタンスも含めて、朝礼だけの学校ではメンバーの皆さんの名称を「生徒=先生」としています。
ーー佐藤さんは朝礼だけの学校の立ち上げから運営に携わり、現在は校長に就任しています。立ち上げ当初から現在を振り返ると、どのような手応えを感じていますか?
佐藤さん: 朝礼だけの学校に入会したことで「人生が変わった」と言ってくださる方がたくさんいるのは、本当に良かったと思っています。
今自分がいる組織の中で力をより発揮できるようになった方もいますし、転職に成功した方もいます。もちろん、独立したり起業したりして活躍されている方もいらっしゃいますね。
例えば、朝礼だけの学校のメンバーには「百姓モデル」として活躍されている
樅木英介さんという方がいらっしゃいますが、彼はもともとパリコレや東京コレクションで活躍したモデルで、今も現役でナショナルクライアントの広告などでモデルを務めていますが、そのかたわらで熊本県で農業を営み、そのユニークさから注目を集めています。彼も時給がどんどん上がっているようです。
ーーまさにインディペンデントで希少性の高い生き方を体現されていますね。
佐藤さん: 開校からずっと、藤原さんは「
あなたは何に1万時間をかけますか?」という問いを投げかけています。1万時間をかければ、何事においてもマスターになれる。その
マスターした領域を掛け合わせていけば、どんどん希少性が高くなっていくという考え方です。樅木さんの「農業 × モデル」という掛け算の発想は、藤原さんの理論を鮮やかに実践しています。
さまざまな立場の人が集まり学び合うからこそ「複眼思考」は鍛えられる
image6.jpg 379.49 KB朝礼だけの学校5周年イベントで人形劇を披露する佐藤さん。「校長くん」という藤原和博さんそっくりの人形を製作したーー「インディペンデントで希少性の高い生き方」は、言い換えれば前例のない未知の領域を切り拓くことでもあります。実際に行動に移すのには勇気がいるのではないでしょうか?
佐藤さん: 藤原さんはいつも「
チャレンジする一歩目を、どれだけ早くするかが大切だ」と話しています。昔は「PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)」というプロセスを踏むことが大切だと言われましたが、藤原さんは「
今はDo・Act・Do・Actで、『DA・DA・DA』くらいの圧倒的なリズムでやっていこう。プランを立てている場合じゃない。プランを立てている間に世間が変わってしまう」と。
昔はそう言われても想像しにくかったかもしれませんが、今やAIの登場によって、多くの方がその意味を実感していると思います。プランに時間をかけるのはもったいない。
DOとACTを繰り返して、できる限り一歩目を早くしていくという風土が、朝礼だけの学校には根づいていると思います。なにしろ、今の校長である僕自身が現役で人形劇をやり、琵琶の演奏にもチャレンジして、仕事においても会社経営に携わりながら、エンタメから遠く離れたディープテックにも挑戦しているので。どんどん動きながら修正していっています。
ーー佐藤さんご自身が朝礼だけの学校の風土を体現されているんですね。
佐藤さん: 人形劇、やってみるとめちゃくちゃ緊張するんですよ。4月にも大阪で公演してきたのですが、自分としては大きな失敗をしました。失敗すると、もうこの世の終わりというくらい落ち込むわけです。これほど怖い思いや恥ずかしい思いをして落ち込むことは、なかなかありません(笑)。
でも、
何事もやってみないとわかりませんから、そういう経験は必ず役に立ちます。僕は演劇のプロデュースもたまにやるのですが、自分自身がパフォーマーになったことで、舞台芸術に携わる人たちへのリスペクトは俄然高まりました。
image2.jpg 434.71 KBーー自分自身もパフォーマーだからこそ、その苦労や葛藤が深く理解できるようになったということでしょうか?
佐藤さん: そうです。
自分がやってみて初めて、パフォーマーの方が本番に向けてどれだけの努力を重ねているのかをリアルにわかるようになりました。プロデューサー側として普段は「選ぶ側」にいるオーディションも、自分が人形劇をやっている際には「受ける側」の立場を経験するので、両方の立場の視点や気持ちを理解できる。まさに「
複眼思考」ですよね。
まったく異なる立場を経験することが、人間にとって一番インパクトが大きいです。
しかし、日常生活の中でそのような経験ができる機会はなかなかありません。その点、
朝礼だけの学校では「人格を攻撃しない」というルールさえ守れば、どれだけディスカッションをしてもいい場になっています。だからこそ、さまざまなテーマの話題が飛び交いますし、複眼思考はそういった環境に身を置くことで鍛えられるのだと思います。
ーー校長である佐藤さんご自身が朝礼だけの学校というコミュニティの良さを実感し、実践し続ける姿勢は本当に素晴らしいと思いました。最後に、校長である佐藤さんが思う、朝礼だけの学校の魅力をお聞かせください。
佐藤さん: そうですね。朝礼だけの学校というコミュニティは、どこか不思議な場だと思います。会社・組織とも違いますし、一般的な学校ともまた違う。まさに先ほど話した「生徒=先生」として教え合い、学び合う場です。そのような関係性の中で
「人生」「仕事」「教育」の3つのテーマについて横断的に学び、刺激が受けられるのは他にはない魅力だと思います。
そうした機会に溢れているのは、やはりこのシステムのおかげです。自分たちでイベントを立ち上げるのも、
普通なら「誰も参加しなかったらどうしよう」と怖くなると思うのです。それでも勇気を持って「やろう」と思える空気感があるのは、OSIROのシステムとの相性が抜群に良いからだとも思いますね。
佐藤譲さん
朝礼だけの学校 校長
1986年、福岡県生まれ。京都大学法学部時代に、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーの元を訪ねて取材。それをきっかけにスタジオジブリへ入社してプロデューサー業を学び、のちに日本テレビで実写・アニメの映画プロデューサーとなる。担当作品に「DEATH NOTE」「バケモノの子」「名探偵コナン」など。その後、フリーランスのプロデューサーとして独立し、京都へ移住。
「個人の創造性を最大限に引き出す」というプロデュース方針で、様々な事業や育成に携わる。藤原和博さんとは2020年に出逢い、「朝礼だけの学校」の設立に参加。自らがインディペンデントで希少性の高い生き方を追い求め、人形劇の道を探求しながら、クリエイターのプロデュースに関わっている。株式会社THE CORE 取締役。2024年11月に「朝礼だけの学校」校長に就任。