TOPPANホールディングス 内田 多さん、菅野清太郎さんをお呼びした「OSIRO INVESTER INTERVIEW」第六弾。
OSIRO INVESTER INTERVIEW オシロ株式会社を応援する投資家をお招きし、代表の杉山博一がオンラインコミュニティの可能性について語り合う「OSIRO INVESTER INTERVIEW」。第6回のゲストは、TOPPANホールディングス株式会社(以下、TOPPAN)でCVC(※)を担当する内田多さんと菅野清太郎さん。TOPPANは2023年に実施したシリーズAの資金調達でリードインベスターとしてご支援いただいたことに加え、内田さんがオシロ社外取締役に就任いただくなど、事業共創パートナーとしても応援いただいています。そのような多大なご支援をいただく同社は、オシロとコミュニティにどのような期待を寄せていただいているのでしょうか。お話を伺いました。 ※CVC(Corporate Venture Capital):事業会社が自己資金でファンドを組成するなどし、ベンチャー企業やスタートアップなど未上場の新興企業に投資をすること
DSC07047.png 1.7 MB 画像中央: TOPPANホールディングス株式会社 事業開発本部 ビジネスイノベーションセンター 戦略投資部 国内投資チームリーダー 内田 多さん 画像右: TOPPANホールディングス株式会社 事業開発本部 ビジネスイノベーションセンター 戦略投資部 DX系事業共創チームリーダー 菅野清太郎さん 画像左: オシロ株式会社 代表取締役社長 杉山博一
「人と人がつながる仕組み」の創出が求められる時代に
杉山博一(以下、杉山): 今回はインタビューの機会をいただきありがとうございます。内田さんや菅野さんがご担当されているCVCは、通常のベンチャーキャピタルとは異なり、TOPPANさんとしての事業を意識した活動が求められるかと思います。まずはTOPPANさんでのCVC活動の取り組みについてご紹介いただきたいです。
内田多さん(以下、内田): やはり出資先の企業で重視しているのは、TOPPANとともに事業を共創させていただけるか。そのため、ただ出資をして終わりというものではなく、出資した後も私たちが一緒に汗をかくことで出資先企業の事業成長に寄与することも私たちの仕事であると考えています。加えて、+αで意識しているのは「
with TOPPAN 」です。例えば出資先企業がよりよい事業成長をしていくために、TOPPANの持つリソースやケイパビリティとどのように接続できるか、または共創による事業創出などを構想し、貢献していくことも重要な役割だと考えています。
菅野清太郎さん(以下、菅野): TOPPANのCVC活動で特徴的なのは、必ずしも現在取り組む事業でのシナジーだけを見込んで出資していない点です。オシロのように、
将来的に事業でのシナジーが生むことが期待される企業 や、さらには
事業を共創させていただけるパートナーとなる企業に投資をしていくことも重視 しています。
杉山: 将来的な共創関係に期待してオシロにご出資いただけたのはとても嬉しく思います。内田さんと菅野さんはどのような経緯でオンラインコミュニティに着目されたのでしょうか?
内田: TOPPAN は印刷を通じて情報を取り扱ってきており、コミュニケーションを非常に重視している企業です。そのため、出発点は「お客様である企業の方々に豊かなコミュニケーションを提供できるような事業機会の創出」というテーマから始まりました。
当初はTOPPANとして表現技術を持っているARやVRと親和性があるメタバース業界にも着目していましたが、これからの時代のことを突き詰めて考えると、技術だけではなくもっと本質的な
「人と人がつながる仕組み」が重要 だと思えてきたんです。そこで着目したのがオンラインコミュニティでした。
私はスポーツが好きで、観戦することでファン同士の心が一つとなって熱狂が生まれる楽しさも身をもって知っているので、こうした
熱量を持った人たちがつながることで、より大きな熱量を生み出す仕組みをつくっているスタートアップと出会いたい と考えていました。
DSC07013.png 1.19 MB 菅野: 内田はスポーツですが、私はエンターテインメントをバックグラウンドとして、人と人とがつながり、より大きな熱量に増幅していく体験をしてきました。そのため、オシロの事業には自然と引き寄せられていったという感覚を持っています。
加えて、TOPPANの祖業である印刷業は紙に文字を印刷し、情報を人に届ける手段を提供するビジネスです。コミュニティも情報を発信し、受け取った人がまた発信して届けることで集合体として形成されていくものと考えれば、
オシロとTOPPANはとても近い領域でビジネスをしている ともいえます。そういった面からも、特にファン同士のつながり価値を重視するオシロに着目しています。
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「誰もがオンラインコミュニティに属する時代」が来る
杉山: CVCとして、マーケットや企業の成長性も当然重視されたかと思いますが、お二人の個人的な視点として、オンラインコミュニティとオシロにどのような価値や可能性を感じてご出資いただいたのでしょうか?
DSC06973.png 1.26 MB 内田: 私としては
コミュニティのニーズは企業と生活者の両方で拡大していく と考えています。まず企業側で言えば、例えばAWSによる日本国内のユーザーコミュニティ「JAWS-UG」の成功があるように、いわゆる
ビッグテックと呼ばれる企業がユーザーコミュニティを立ち上げ、高い効果を上げています 。やはり
プロダクトやサービスを導入する際には、熱量の高いユーザーからの声がなによりも説得力があります 。ビックテックはそのインパクトの大きさを理解した上でユーザーコミュニティという施策をとっている。このような動きはBtoBにも広がりを見せていくだろうと考えています。
また、生活者としても最近では
「推し活」という言葉が社会的に浸透し、自分の本当に好きなものを応援する行為に価値を感じる時代 になっていると感じています。同時に現代では「タイパ」や「コスパ」など、時間的・経済的な合理性を求める傾向にあることも興味深いです。つまり、仕事や学習などの行為には徹底的に合理化しつつ、自分自身の「好き」には時間もお金も惜しみなく注ぎ込むことに幸せを感じるようになっています。そういった
「好き」を思う存分シェアし、共に熱量を高めあう場は非常に大きなニーズがある と考えています。
杉山: ちょうど僕が連載しているnoteで「
『応援すること』も立派なコンテンツだ 」という記事を書きました。この記事では、推し活も含めて人はなぜ特定の対象を応援したくなるのかを掘り下げましたが、
人は応援することで「好き」の対象をエンパワーすると同時に、自分自身もモチベートしている 。そう考えると、「応援」という行為自体が大切なコンテンツとして捉えることができて、僕たちは応援することで幸福感や自己肯定感、活力を得ている。
推し活の認知が進んだ現在、大切になるのは応援する人同士が横のつながりを持ち、絆を深めていく 。それが現在のオンラインコミュニティに必要なことだと考えています。
菅野: 私も同意見です。10〜15年前の企業では自社のSNSアカウントを持って情報発信するのはまだ少数派でした。それが今では当たり前の時代になっていて、次のかたちとして
各企業が自分たちのオンラインコミュニティを持つことが当たり前の時代が来る 。そんな期待感を持っているので、TOPPANとしても今からオシロとともに時代をつくっていきたいと考えて出資と支援を決めました。
生活者の目線でいえば、なにかしらの趣味や行きつけのお店があるように、将来的には
「誰もがオンラインコミュニティに属する時代」 が来ると思っていて、そんな世界をオシロと実現させていきたいと考えています。まずは受け皿となるコミュニティが数多く存在し、
誰もが自分が好きなものや趣味を安心して語り合え、追求できる居場所がある。そんな世界になれば、より多くの人が社会的に孤立することもなく、ウェルビーイングに生きられるようになる と思うんです。
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人にとっては「無駄」でも自分にとって「かけがえのないもの」がある
杉山: TOPPANさんとオシロが資本業務提携を締結させていただいた際、協業ステートメントに
「コミュニティを産業にする」 を掲げました。このお言葉は
シリーズAの資金調達の際にいただいた応援団(投資家)コメント にも寄せていただき、感激したのを覚えています。このようなビジョンを共有できるのは、なによりもTOPPANさんが高い視座をお持ちだからです。日本発のオンラインコミュニティが世界をリードするくらいの産業になる。このような共通認識を持ち、未来志向で事業を考えられる協業体制があることは心強く、同時にとてもワクワクしています。
近い将来、このままAIが進化していくと、人間は働く必要すらなくなってしまうかもしれない。しかし、これまでさまざまなイノベーションやシンギュラリティのようなものが起こっても残り続けているのがアートです。そのように考えると、
今後はエッセンシャルなものではない、むしろ「無駄」と切り捨てられがちだったものの価値が高まっていく時代が来る と考えています。そして、今の時点でもオフラインでの人間関係が希薄化していて、人と人の心のつながりの価値は上がっている。これからの時代にはオンラインコミュニティがさらに求められる時代になっていきます。
DSC06979.png 1.13 MB 菅野: 私は
エッセンシャルではないものに時間やお金が使える世界にこそ、真の豊かさがある と考えています。便利なものが増え余裕が生まれつつ、人と人とのつながりを実感できるコミュニティが増えていくことで人生が楽しく、豊かになっていく。そんな世界をつくっていきたいですね。
内田: 私は杉山さんと初めてお話しした時から絶対に出資したいと思っていたんです。その大きな理由が、当時代官山にあったオフィスでした。オシロのミッションは「日本を芸術文化大国にする」。今のオフィスでもそうですが、その世界観が体現されているようにアートの数々があり、随所にこだわりが見られます。これを見て思ったのが、
杉山さんやオシロのメンバーにとって、「アートはエッセンシャル」なんですよ。人にとっては無駄でも、自分にとってはかけがえのないものがある 。それは私にとってはスポーツであり、菅野にとってはエンターテインメントです。オシロの世界観を見て共感するとともに、応援したいと思いました。
加えて、杉山さんは
一緒に働くメンバーの心身の豊かさもとても重視 されていますよね。それは例えば美術や映画鑑賞、舞台、音楽ライブや書籍や漫画の購入を補助する「Touch the Art」と呼ばれる「芸術給」や、毎週無農薬野菜を支給する「野菜給」といった制度でも表れています。ただ、投資検討の段階で帳簿を確認させてもらった際、野菜への支出の多さには驚きましたよ。「なんでこんなに野菜にお金使っているの......?」と面くらいつつ、質問もさせていただきましたね(笑)。
DSC06996.png 1.54 MB 杉山: たしかに、
オシロにはユニークな給与や福利厚生の制度が多い かもしれません(笑)。ただ、
オシロが今後市場を創出しコミュニティを産業にしていくためには、まず一人ひとりがより高いクリエイティビティとパフォーマンスを発揮していくことが不可欠 です。その集合体が特別なチームとなる。市場を創出していくためには新しいニーズを切り拓いていくことが求められる一方で、プロダクトとしてもより洗練させていく必要があります。OSIROは単なるSaaSに留まらず、クリエイティブな要素も合わせ持つ必要があるため、
「クリエイティブSaaS」としてサービス提供ができるように進化 しています。このようなあらゆる方向での「創出」を融合できてはじめて、コミュニティは産業になると考えています。
最後に、協業ステートメント「コミュニティを産業にする」を実現するために、オシロはどのように成長していくべきか。お二人からアドバイスをいただけると嬉しいです。
内田: 私としてはオシロが大きく成長していくことは確信しているので、ぜひ杉山さんやオシロのポジティブさをブラさずに進んでいってほしいですね。その上で、「コミュニティを産業にする」という私たちのミッションを達成するためには、
ブランド向けまたはBtoB向けのサービスで、1つの勝ち筋を見つけていくことが求められる ため、TOPPANとしてもぜひ共創していきたいところです。また、OSIROのプロダクトとしての強みは、コミュニティを活性化させるだけでは終わらず、熱量を維持し横のつながりを強固にさせていくことだと思っています。そのような
OSIROらしい強みを汎用知や形式知となるようなところまで落とし込み、プロダクトとしてのブラッシュアップをどんどん続けていってほしい ですね。
菅野: 汎用知や形式知という点では、ある種
TOPPANとオシロの共創でモデルケースともいえるようなシンボリックなコミュニティをつくっていきたい ですね。加えて、その中で起きていることについては外へと積極的に発信していっていいと思っています。特にBtoBの方々の場合、実事例でどのような効果があったのかは気になるところですので、コミュニティを導入し効果が生まれていること「羨ましい」と思っていただけるようになりたいんです。そういった情報を共有していくのはTOPPANの強みでもあるので、ぜひご一緒させていただきながらおもしろい事例をどんどんつくっていきたいですね。
杉山: あたたかいお言葉をいただきありがとうございます。オシロがこのようにポジティブに成長に向かって努力ができているのは、紛れもなくTOPPANさんをはじめとするオシロの応援団の皆さまのおかげです。これからも皆さまからいただいたエールをエネルギーに、協業ステートメントである「コミュニティを産業にする」に向けて一層努力してまいります。本日はありがとうございました!
DSC06925.png 1.83 MB Profile
内田 多| Masaru Uchida 2010年凸版印刷(現TOPPANホールディングス)入社。法務部門および広告企画部門を経て、2016年より、経営企画部門にてスタートアップ投資およびM&Aを担当し、2019年よりCVC専任。2022年よりオシロ社外取締役。 早稲田大学イノベーション・ファイナンス国際研究所および株式会社PLAYMAKERを兼務。菅野清太郎|Seitaro Kanno 2007年凸版印刷(現TOPPANホールディングス)入社。営業・企画部門を経て、2021年よりCVC専任。TOPPANグループと投資先企業との事業共創推進を担当。
杉山博一|Hirokazu Sugiyama 1973年生まれ。30歳を機にアーティスト活動に終止符を打つ。日本初の金融サービスを共同で創業。ニュージーランドと日本の2拠点居住を経て「日本を世界一の芸術文化大国にする」というミッションのために東京に定住し、2017年オシロ株式会社設立。
オシロ株式会社は現在、ファン同士の交流を活性化させる業界唯一のコミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」を成長させ、より多くのクリエイターやブランドオーナー、企業様にご導入いただくための仲間を募集しています。
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