オシロ株式会社(以下、オシロ)では、2023年2月にシリーズAの資金調達を完了。「コミュニティマネージャーAI化」のさらなる進化を目的に総額5.15億円を調達しました。現在開発を進める「コミュニティマネージャーAI化」によってオシロが目指す姿や方向性、今後の展開について、当社代表取締役社長 杉山 博一によるメッセージをお届けします。
誰もが不安なくコミュニティを継続できる時代へ
「コミュニティマネージャーAI化」とは、コミュニティをマネージメントするという時代を終わらせたいという思いから始まっています。そもそもコミュニティマネージャー業務は、多岐にわたるタスクから大変で手間のかかる業務、精神的にも負担のかかる業務まで多岐に渡り、それらから解放してあげたいという想いがあります。コミュニティ運営を自動化することで、どのような人でもコミュニティ運営ができることを目指すプロジェクトです。
このプロジェクトの端緒となったのは、車の自動運転技術。人々の移動を楽にし、ドライバーの自由な時間を増やし、事故を減少させるという、思想に着想を得ています。
車の運転が得意でない人は、「うまく運転できるだろうか」「事故を起こさないだろうか」と不安や緊張感を抱えて運転席に座ります。そのため、ドライブしながら同乗者との会話などを楽しむ余裕がありません。アクセル・ブレーキ・ハンドルの操作が部分的に自動化されるだけでも、スキル不足が緩和されて楽に運転できるようになります。これにより、運転にドキドキすることなく、同乗者と過ごすドライブ時間を楽しめます。
また、運転が得意な人にとっても、自動運転技術は「運転する楽しみ」を奪うものでは決してありません。運転を自動でアシスト・サポートする機能を活用することにより、運転の疲れを緩和し、より安全で楽しい移動の体験を享受できるようになるでしょう。
私たちが目指す「コミュニティマネージャーAI化」も同様のことがいえます。つまりコミュニティ運営を自動化することで、コミュニティマネージャーさんがよりクリエイティブなところに時間を使ってもらえる。さらにコミュニティ運営をトラブルなくより快適に。また、運営が苦手な人や運営未経験の人でも、ストレスなくスムーズなコミュニティ運営を継続できるようになることを目的としています。
コミュニティのメリットを享受し、クリエイティブに集中できる環境を
すべてのクリエイター、ブランドオーナーが継続的に「お金」と「エール」を得ながら、よりクリエイティブになれる環境。そのようなコミュニティを提供することこそ、オシロが目指すプロダクトの姿です。一方で、「コミュニティを運営する」こと自体がクリエイターやブランドオーナーにとっての悩みの種になっていることも事実です。
そもそも、クリエイティブとは創作の喜びをもたらすものであり、同時に悩ましい行為でもあるでしょう。「創作の苦悩」は私自身が芸術家を志し、挫折した経験からも実感しています。しかし、現在では創作活動にはSNSがついてまわり、クリエイターやブランドオーナー自身からの発信でファンを増やしていかなければならない「SNSの苦悩」もあります。そして、その次に継続的なファンとの交流や金銭面での安定化を維持するための「コミュニティ運営の苦悩」もあるのが現状です。
しかし、私たちはこのようなクリエイターやブランドオーナーが持つ三大苦に対して、逆転の発想で解決できると考えています。コミュニティの運営がより簡単で楽しく、自由で長続きするものであれば、オープンSNSのフォロワー数を伸ばすことへのプレッシャーも消え、クローズドなオウンドSNSで安心安全な心を確保してよりクリエイティブな時間に専念できます。
そのためには「コミュニティマネジメント」のスキル・ナレッジをいかに属人的でないものにするか。コミュニティを運営するためにはコミュニティマネージャーが必要です。しかし、コミュニティマネージャーにはコミュニティ運営スキルが必要であるため、「コミュマネ経験がないから、コミュニティがうまくいかず、運営を続けられなかった」という声が多いのも事実です。
そこで、コミュニティ運営の苦悩をプラットフォーマーがいかに軽減していくのかが重要になります。私たちが取り組む「コミュニティマネージャーAI化」は、クリエイターやブランドオーナーをエンパワーメントする、コミュニティプラットフォーマーとしての責務であると捉えています。
マネジメントが得意でない人やその経験がない人でも、コミュニティを円滑に楽しく運営を続けられるようにすること。その実現により、誰もがコミュニティのメリットを享受できるようにすること。それこそが、「コミュニティマネージャーAI化」によりオシロが解決したい課題です。
現時点で目指すべきプロダクトの方向性
「コミュニティマネージャーAI化」では、コミュニティを運営する人やコミュニティづくりに興味があるすべての人が等しくメリットを享受できる仕組みの構築を目指しています。
コミュニティマネージャーの役割を一言で表すなら、「コミュニティをデザインすること」といえます。コミュニティの中でのハブとして人と人とをつなげるだけでなく、イベントの企画やファシリテーション、プロジェクトマネジメント、広報・PRなど役割は多岐にわたります。
運営を通してコミュニティを理想的なものへと近づけるクリエイティブな仕事ですが、その分求められるナレッジや仕事は網羅的となり、コミュニティを始めるハードルとなっていることも事実です。そのハードルを取り払い、より自由で楽しいコミュニティ運営を実現するものこそ、「コミュニティマネージャーのAI化」です。
例えばコミュニティ運営が苦手な人はAIによるアシストでコミュニティ運営を自動化できます。一方でコミュニティ運営の経験が豊富で得意な人にとっては、より上手くコミュニティ運営を行うためのサポートや、人的・時間的負担を軽減するアシストなど、機能をカスタマイズして活用できる仕組みです。
健全なコミュニティの持続的な継続。そのためには、やはりコミュニティの中にも一種のエコシステム(生態系)を構築していく必要があると考えています。そのメソッドとして、オシロでは「はいる」「なじむ」「はずむ」「にじみでる」というサイクルを描いています。
適切なオンボーディングがあり、アクティビティを楽しみ、コミュニティに馴染み親しむことで、自然とコミュニティの魅力が対外的に発信されていく。そのようなサイクルを生むことが、コミュニティオーナーにとってもメンバーにとっても、健全で快適なコミュニティが生まれるという考えです。
しかし、そのようなサイクルを構築することは経験豊富なコミュニティマネージャーでも難しく、コミュニティに大きなリソースを割くことが求められます。「コミュニティマネージャーAI化」は、まさにそのようなエコシステムの構築を誰でも実現できる仕組みです。
オシロがオンラインコミュニティプラットフォーム「OSIRO」のβ版をリリースしてから、8年になります。リリース時より、私たちはコミュニティオーナーへの伴走支援のみならず、コミュニティオーナーとメンバー、そしてメンバー同士のアクションによるデータを収集してきました。そのようなデータ収集から、オシロではコミュニティを盛り上げるための知見が数千個と膨大にあり、そのうち約50個をAI化したレシピとして実装し、現在ではそれをさらに細分化させて方法論を構築しています。
コミュニティオーナーとコミュニティマネージャーには、
コミュニティの状態を把握するための項目や数値がリアルタイムで表示され、
コミュニティを盛り上げる50のレシピより「数値を改善するための具体的なアクション(ヒント)」
が自動的にレコメンドされます。数百にわたるコミュニティの設計・構築・伴走支援によるナレッジの集積。そしてこのようなオーナーとメンバー、そしてメンバー同士という、縦と横と横と横のつながりデータの収集により、現時点で「コミュニティマネージャーAI化」の実装によって目指すべきプロダクトの方向性も見えてきました。それが以下の通りです。
1.熱量をコントロールできるプロダクト
人と人が仲良くなるために必要なコミュニケーションが、適切なタイミングと適した量でとれるツールを提供します。「コミュニティを盛り上げる」というと「熱量を一気に高める」という印象を持つ人も多いです。しかし、熱量が高ければ高いほどいいというわけではなく、盛り上がっている人が増えるほど、盛り上がりについていけず冷めてしまう人が出てきます。
このように熱量自体をコントロールでき、人同士の関係性が円滑になる、人のコミュニケーション能力を拡張するようなプロダクトを目指しています。
2.コミュニティ運営の知見をコミュニティ横断で生かす仕組み
コミュニティによって目的も集まる人も異なりますが、どのコミュニティでも共通して抱える課題や、コミュニティの状態による特有の悩みがあります。一つのコミュニティで得られた知見を他のコミュニティにも適用できるような仕組みは、長年コミュニティのデータを蓄積してきたオシロだからこそできるものです。
コミュニティは人同士の関わりによって形成されます。それはリアルな場でもオンラインコミュニティでも同じです。コミュニティを手間なく楽しく運営するためには、人間の行動志向・考え方・コミュニケーションなどについて理解をすることが必須です。社会行動学、人間工学などに基づいて機能が開発されるべきであると考えています。
サステナブルな運営を追求するため「コミュニティを科学する」
オシロはもともと、クリエイターやブランドが創作活動を続けるために必要な「お金」と「エール」を継続的に得るため、コミュニティを手段とした仕組みをつくるところからはじまっています。
お金とエールを継続的に得るためには、「応援団」がコミュニティ化し、そのコミュニティを継続することが必要不可欠です。そのためには「どうしたらコミュニティが自分たちの居場所になり、手間なく運営できるか。そして、それを継続し続けられるか?」が命題となります。
オシロのコミュニティプロデューサーがオーナーに伴走することで得られた経験から、オシロではコミュニティ運営の課題や難易度を十分に理解しています。クリエイターやブランドオーナーがクリエイティブ活動を継続する限り、コミュニティに終わりはありません。コミュニティを続けるために、サステナブルな運営方法を追求していく必要があります。
コミュニティ運営の生の課題に寄り添えるのは、「コミュニティを科学する」ことを掲げてコミュニティを研究し、豊富な知見を蓄積しているオシロの特権です。オシロでは今後も日本のコミュニティ業界をリードするプラットフォーマーとして、コミュニティ運営をより快適に、自由なものとしていくことで、コミュニティをマネージメントする時代を終わらせます。まだまだ道半ばなため、コミュニティオーナーさんやメンバーさん、関係者のみなさまからの応援を励みに、今後も邁進してまいります!
オシロ株式会社 代表取締役社長
杉山 博一