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2020.02.27
対談

このままでは、日本で芸術文化は育たない。

アーティストが食べていける社会、必要なしくみとはー

「アーティストは食べていけない?」

ふたりが目指す、アーティストが食べていける社会、必要なしくみとは ーーー

杉山は、20代の頃アーティストを目指しながら、デザイナーとして仕事をしていた。一度も就職をしないまま30まではアーティストとして生きていく道を模索していた。だが30を機にアーティストになることは諦め、金融サービスの会社を起業したり、スキル交換プラットフォームを立ち上げたりしつつも、世のアーティストが食べていける仕組みをつくること、社会をつくることを目指すようになる。

 

一方、四角は幼少期からアート好きで、高校時代は仲間と8mmフィルムで短編映画を撮ったり、美術部に所属して油絵で受賞するなど、美大志望の芸術家肌だった。大卒後からトータル15年間、大手レコード会社に勤め、絢香、Superfly、平井堅、CHEMISTRYなどを手掛け、10度のミリオンヒットを記録。無名だったアーティストがトップスターになる道のりをプロデュースした経験を持つ。

二人は2017年に、「日本を芸術文化大国にする」というミッションを掲げ、「アーティストが食べていける世界」をビジョンとして描く会社(オシロ株式会社)を立ち上げた。

コミュニティ・ファーストという考え方をベースにした専用のプラットフォームシステムを通して、作家/アーティストが食べていける社会を目指している。

杉山博一|Sugiyama Hirokazu

東京赤坂生まれ。元アーティスト&デザイナー。一度も就職したことがないのに2006年日本初の金融サービスを2人で創業。その後ニュージーランドと東京の二拠点居住を経て、日本のクリエイティブ産業が活性化するべく、OSIROを開発。2017年オシロ株式会社として法人化。
オシロ株式会社 代表取締役社長

四角大輔|Yosumi Daisuke

「人は誰もがアーティスト」というメッセージを掲げ、オルタナティヴな生き方を提唱する執筆家。ニュージーランドの湖畔で、サステナブルな自給自足ライフを営む。過去、ソニーミュージック、ワーナーミュージックに計15年間勤め、プロデューサーとして10 度を超えるミリオンヒットを記録。
オシロ株式会社 共同創業者

「人は誰もがアーティスト、人は誰もがプロデューサー」

二人の出会い、お互いの共通点、ファンコミュニティの醸成とは ーーー

――出会ったのは10年前
二人が出会ったのはちょうど10年前。

四角が、長年の夢だったニュージーランド移住が決まり、レコード会社を辞める直前の頃。彼は、ニュージーランドでの自分らしい生き方をスタートするにあたって、「四角大輔」というアーティストとして人生の第二幕を始めるために、自身のWebサイトを始めとしたセルフブランディングの肝となるクリエイティブパートナーを探していた。

杉山
 確か2009年12月に突然メールもらったんだよね?

四角 
うん、ちょうど絢香が活動休止する直前の、年末TV出演ラッシュに備えてのリハーサル時期だった。

フリーランスとして、これから自分のブランドを作っていかなきゃいけない、サイトどうしようか、ロゴどうしようか、っていうのを1年前くらいから考えていて。

仕事柄、クリエイティブ業界には知り合いが沢山いたから、著名なデザイナーさん複数に声を掛けてコンペをやらせてもらっていた。あつかましくも(笑)

でも、どのデザインを見てもなんかしっくりこなくて。その理由に、「これからの四角大輔」ではなく「既知の四角大輔」が頭から拭えないんだと気付いて。

それで12月に入って、これまで一緒に仕事をしたこともない、全く新規のひと何人かに声をかけていたんだよね。その一人が博一だった。

俺の新会社顧問で、作家の先輩でもあった本田直之さんに、彼のブランドサイトを作った人を紹介して欲しいってお願いしたの。

杉山
 もう暮れも迫ってて、メールをもらってから確か数日でデザインを出したよね

四角 
そう。で、上がってきたデザイン見て。もう一撃だった。一秒で決めた。

杉山
 笑

四角 
どんなデザインにしたいかは、半年前から声を掛けていた人にもみんな同じように伝えていて。

シンプルなグラフィックだけど、ブランドの世界観が端的と伝わること。とにかく極限までミニマルにして欲しいと。

でもそういクールなデザインを目指すと、ともするとメッセージ性が薄れていく。熱みたいなものが消えていく。

 

でも博一のデザインはいろんなものは削ぎ落とされてるのに伝えたいメッセージの熱量がしっかり残ってた。 一秒で、これだ!って思った。

〈四角の社名ロゴ。「湖畔に暮らす遊牧民」という意味。この社名を決めたのは2008年、日本でノマドブームが起きる4年ほど前のこと〉

家がびっくりするぐらい近所だった二人は、早朝や休みの日に散歩していると偶然会うことも多かったそう。仕事を超えてプライベートでも語り合える仲に。杉山が数ヶ月間ニュージーランドの四角宅で過ごしたり、時には意見を衝突させててぶつかり合い、家族のような間柄になっていった。

〈ニュージーランドにて〉

――二人が共通して社会に対して抱いていた違和感。



アーティストの生きる道。芸術文化のあり方


杉山はもともと自分がアーティストとして生きていこうと模索した20代を持ち、一方の四角は高校時代に芸術の道を目指すも断念。大手レコード会社に長年勤め、裏方として複数のアーティストをブレイクスルーさせた経験を持つ。

杉山
 僕はもともとアーティストとして生きていきたかったけど、その夢は叶わず30で自分がアーティストになる道は断念した。

それまで、デザイン業で食べていくことはできたが、アート活動は応援してくれる人がいないとその活動そのものを続けていけないことを経験した。

僕以外にもアーティストを目指している仲間は沢山いた。同じように諦めた人も、いまだに描き続けている人もいる。食べていくための仕事をしながら、本来の自分が一番やりたいことを合間の時間でやっている人もいる。

活動を続けていくには、毎月食べていくお金と、文脈のわかるエール、つまり応援団が必要だと感じていた。

やりたい事に全身全霊を捧げても食べていけない、そういう人は世の中に沢山いる。欧州が芸術文化大国なのは、アーティストが食べていける基盤が整備されているから。日本のこの状況をなんとかしたい。

自分がアーティストの道を断念した時にできた新たな夢は、才能のあるアーティストがその活動だけに集中できる環境や、それで食べていける世の中を作ること。

四角 
博一がアーティストサイドからの目線なのに対して、俺はレコード会社でプロデューサーをやっていたから、アーティストと一緒に作品をつくり、世に届けるために伴走する裏方の立場で感じたことが沢山あった。



アーティストは誰もがもともとは無名の個人。そんな彼らが売れると、みんな手のひらを返すように態度が変わる。「売れるとは思えない」と言っていた社内メンバーまでも(笑)。

ミリオンセラーのアーティストになれば、あらゆるメディアに露出して、時に数億円単位の広告費を使って世の中にプロモーションする。そうやって、どんどん有名になり、より大きなお金が動くようになる。

そうすると、一部の人たちはそのアーティストに依存していったり、近いスタッフはお金や立場に目がくらんだりするようになる。結果、関係性がいびつになって、それにアーティストは足を引っ張られるようになる。

大金が飛び交うことで、人のこころが濁っていくのを何度も見てきた。このあり方って美しくない、健全じゃないな、と思ったんだよね。

もっとピュアに、アーティストがアーティストとしてやっていける方法って無いのかなと。

そんなことを考えているときにインディーズで活躍している人たちと仕事をする機会があって。

彼らの話を聞けば聞くほど、メジャーよりもアーティストがファンに音楽を届けるまでの仕組みがシンプルかつクリーンで、アーティストとスタッフもビジネスや契約書ではなく、信頼によって結ばれているのが伝わってきた。

メジャー(大手のレコード会社を中心に動くあり方)が機能していた時代は確かにあった。そのおかげで誰もが多くの音楽を聴けるようになった。

でも、もういま俺が知ってる個人で活動してるDIY系アーティストのほぼ全てがメジャーと契約したいと思っていない。もっと言うとインディーズレーベルにも入る魅力を感じていない。

SNSや動画サイトやブログといったセルフメディアを駆使することで、無名の個人でも発信が可能になったし、今やiPhoneでかなりのクオリティーの音楽が作れちゃったりする。

さらに、誰でも作品を配信できるサービスも出そろってきた。あまり知られてないけれど、演奏できる小さなライブハウスやカフェも増えてきてる。

音楽活動においては、個人でもほとんどのことができちゃう。もう、やらない理由なんてないと言い切れるくらい。

ツールはすべて揃い、いよいよ音楽アーティストがアーティストとして生きられる理想の世の中になってきた。あとはどうやってマネタイズ出来るか。

これまでは、この〝音楽活動をお金に換える〟という壁でほとんどのアーティストが挫折してた。でも、いよいよその壁が取り払われる直前まで来てる。

杉山 
そこで重要になるのがOSIROのベースにある “コミュニティ・ファースト” という考え方。作品が完成してから、プッシュしていくのではなく、まず熱量の高いファンとクローズドなコミュニティをつくることからはじめる。

四角
 そう。

レコード会社時代に、俺が唯一できなかったのは、理想とする熟成されたファンコミュニティをつくることだった。

例えば、同じように音源が100万枚売れるアーティストでも、ファンクラブ5万人のアーティストと、5000人のアーティストでは、その先に出来ることが全然変わってくる。

5万人と5000人、この差は音源の売上100万枚と10万以上に違うと言い切れる。このファンクラブ会員数の違いは、ファン形成のための努力とファンクラブ運営をどれだけしっかりやってるかの差に尽きる。

この重要性をわかっていたチームは、ある意味、音源やライブチケットを売るよりもファンクラブ形成の方に力を入れていた。俺が音楽業界にいた頃でいうと、ジャニーズ、AKB系、LDH、B’z、GLAYといったところが、ファンコミュニティ熟成のために、誰も真似ができないくらいの手間と時間、お金をかけていた。

そして、コミット度の高いファンクラブ会員を一定数以上、維持してるアーティストは不況の影響を受けない。だから、市況悪化で他のアーティストの売上が落ちてるとき、逆にランキング上位に入ってくる。

ファンコミュニティを醸成することこそ、アーティストが持続可能にアーティストとして生きていく上で最も大切なこと。

でもこれは、音楽業界での長年の経験から、その難しさが骨にしみるほど痛感した。だから今こそ、最新のデジタルテクノロジーをフル活用することで、あの時にできなかったことの埋め合わせをしたいと思ってる。

杉山
 そんなことをずっと二人で話してたんだよね。

それで生まれたのがOSIROというサービス。(2017年設立、オシロ株式会社)


――これまでのファンクラブとどう違う?


オシロが作るファンコミュニティを醸成するための
独自プラットフォームシステム。




〈アプリもあり、スマホに最適化したUIだが、当然PCでも快適だ。画像は四角主催のオンラインサロン〉

杉山 アーティスト側からファンに向けた一方通行のコンテンツ配信だけでなく、 ファン同士が繋がることができ、ファン同士ならではの興味関心軸が可視化できたり、安心感や深度のあるコミュニケーションを図れるところ(=ファン同士が仲良くなれる!)に、この独自システムの特徴がある。



オウンドメディアとSNS両方の要素があるため、ファン一人一人が単なる「受け手」ではなく、相互に影響を与え合う存在になり、結果、コミュニティが個々の能動性によって活性化され、共創が起こる仕組みになっている。この共創できる場がつくれることが非常に大事なんだ。

四角

 「好き」という気持ちがあるからこそ生まれる熱のある発信や反応、そういったコミュニケーションが繰り返されることで、それがそのままファンコミュニティの醸成へと繋がるんだよね。

実際に自分のオンラインサロン 『LifestyleDesign.Camp』をOSIROのシステムで運営しつつ、このオシロ株式会社というスタートアップの共同創業者として他のコミュニティを俯瞰で見てるからわかるけど、コミュニティのあり方は多種多様でとてもおもしろい。

これは俺もやるけど、アーティストによっては、作品づくりの過程をファンと共有することで、創作活動そのものにファンを巻き込み、作品が完成する前も一つのコミュニケーションの場にしたり。

杉山 
またファンもプラットフォーム内はもちろん、記事を外部へ発信出来る仕組みもあるため、例えば、そのアーティストのファンになったきっかけについて公に投稿すれば、他のファンが後に続き、新たなファンが生まれる。

アーティストやそこに集まったファンによって、コミュニティのあり方は異なり、多種多様な使われ方が実際にされているのが見ていて嬉しくなるね。

----- アートは「こころの栄養」。



芸術文化の産業をもっと盛り上げていきたい

杉山 
オシロのミッションは「日本を芸術文化大国にすること」。英国は20年前にクリエイティブ産業にシフトしたからこそ今がある。日本もまだ間に合う。


四角 
高度経済成長を経て、物質的にあらゆるものが豊かになった今、俺たち日本人にとって一番必要なことは、アートを始めとする文化的なことだと思ってる。

もうこれ以上、モノはいらないよね。不要なモノやケミカルに埋め尽くされたノイジーな日本を、有機的な芸術があふれる美しい世界にしたいんだ。

杉山 
僕は過去にアーティストとして生きる道を断念したけれど、今必死でがんばっている作家・アーティストが、創作活動を通してちゃんと食べていける世の中にしたい。

人々の生活の中にもっと当たり前にアートが浸透している世の中にしたいよね。

四角 
うん。本来、人は誰もがアーティストだから。

俺は小さい頃からずっと絵が好きで、高校時代は美術室で真っ暗になるまで油絵を描きながら芸術家になりたい!と願っていたけど、自分に才能がないと諦めた。

でもその後、プロデューサーという立場で、音楽という芸術が生まれる瞬間から、人のこころに届く瞬間までを目撃できる素晴らしい体験ができた。

奇しくも、今まさに、これら両方の経験を元に、プロデューサーとしてOSIROを世に広めようとしていて、作家としてOSIROを活用している。絵ではなく言葉を表現ツールとした「四角大輔」というアーティストとして生きることに挑戦している。

杉山 
芸術文化、クリエイティブ産業を盛り上げることは、今日本が最も取るべき道。アーティストを応援するコミュニティは、美しく上質なコミュニティであり、よいコミュニティに帰属していたかどうかで幸せが決まるというハーバード大学の研究結果もある。

その結果、日本人のこころが豊かになることに繋がる。この国を本当の意味で豊かにできると思ってるし、低い低いと言われる、日本人の幸福度を高めることができると信じてる。

四角&杉山
 それが、僕らが見ている未来です。

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