川鍋誠さん(クラブツーリズム株式会社 新・クラブ1000事業推進部長/経営IT企画部 部長)をお呼びしたOSIRO OWNER SPECIAL INTERVIEW第9弾。
OSIRO OWNER SPECIAL INTERVIEW オシロ株式会社の代表取締役社長である杉山博一によるオーナースペシャルインタビュー。第9回のゲストは、クラブツーリズム株式会社の新・クラブ1000事業推進部長で、「クラブツーリズム鉄道部」(以下、鉄道部)を運営するコミュニティ事業の責任者である川鍋誠さんです。「時刻表に載らない旅」をテーマに鉄道ファンが夢見た鉄道旅ツアーを多数実現させてきた鉄道部は、2023年12月にOSIROを活用したファンコミュニティ「クラブツーリズム鉄道部51号」をスタートさせました。熱量の高い会員とともに旅をつくるコミュニティのあり方は、まさにオシロが描くコミュニティによる共創の姿といえます。2017年にスタートし、今年で8年目を迎えたクラブツーリズム鉄道部が新たなコミュニティにチャレンジする理由やクラブツーリズムがもち続ける理念などをお聞ききしました。
クラブツーリズム鉄道部51号 鉄道好きの社員がオリジナル鉄道ツアーを発売し大ヒットを飛ばしたことがきっかけで発足された社内クラブ「クラブツーリズム鉄道部」が2023年12月にスタートしたオンラインコミュニティである。「乗りたい列車、乗りたい路線、通常ありえない走行 思い焦がれていた夢を鉄道部と一緒に実現しませんか!」をキャッチフレーズに、オンラインでのメンバー同士の交流、コミュニティ限定イベントなどを行っている。現在は招待制で部員を募集している。鉄道部の最初のツアー「貨物線専用線をお座敷列車で約7時間で池袋から品川まで走破するツアー」や、近鉄の行商専用列車「鮮魚列車」に乗車する旅など、夢の鉄道ツアーを次々に実現させてきた鉄道部が、クラブツーリズム鉄道部51号でも鉄道ファンの「夢」を叶えていく。https://tetsudo.club-t.com/about
ファンの方たちが長年夢見てきた夢の列車の運行を実現する
杉山博一(以下、杉山): 2020年に立ち上がったクラブツーリズムさんの「新・クラブ1000事業」(以下、新クラブ1000)は、さまざまなアライアンスを通じて新たなライフスタイルを提案するために社内に1000個のクラブを生み出すことを目指していらっしゃいますよね。そのなかでも御社初のオンラインコミュニティとしてOSIROを使って「クラブツーリズム鉄道部51号」をスタートしていただけたのはとても光栄でした。本日は、御社が考えていらっしゃるコミュニティの価値をお聞きしたいと思っています。
まずは、コミュニティのルーツになっている鉄道部の設立の経緯について教えてください。
川鍋誠さん(以下、川鍋): 鉄道部は、2017年に社内の鉄道ファンが集まって発足した部です。きっかけは、弊社社員の大塚雅士が同年に考案した「貨物線専用線をお座敷列車で約7時間で池袋から品川まで走破するツアー」でした。
初めて大塚が考案した鉄道ツアーでしたが、「貨物車両しか通らない線路に、普通の旅客車両が通るなんてありえない」と鉄道ファンの方々に注目されて即日完売、さらにキャンセル待ちが740名様となりました。
大塚が鉄道関連の手配を行う部署にいるときに実現させたもので、その後も鉄道部の企画として、リゾートエクスプレスゆう、お座敷列車「華」、185系でも貨物線ツアーを販売して高い支持をいただいています。
ツアーの企画は鉄道部の大塚と、同じく鉄道ファンの田中研吾が中心になり、「時刻表には載らないツアー」をテーマに、鉄道ファンの方々が長年夢見てきた夢の列車の運行を実現していったことが、お客様に喜んでいただいている要因だと思っています。
また、今までの旅行では鉄道を移動手段として利用してきましたが、乗ること自体を目的としたツアーはおそらく当ツアーが初めてだったんじゃないかと思います。
杉山: 鉄道ファンの方々の熱量はとても高いですからね。そこから生まれた熱量の高い鉄道ツアーが熱量の高い鉄道ファンの方々に支持されているということですね。ちなみに鉄道以外で、ツアー商品として人気のものはあるのでしょうか。
川鍋: たとえば、秘湯の温泉ツアーのようなものは一時期ヒットしてました。しかし、そういった“知られざる温泉地”自体が少なくなっているのと、場所さえわかればお客様が調べてご自分で行けるので秘湯の温泉ツアーの需要は少なくなっています。
それに対して時刻表に載っていない鉄道部のツアーは、個人では絶対に実現できないものです。貨物専用線路に旅客車両を走らせたように世の中に存在しないものを企画していくので、なかには実現ができないものもあります。でもその「できないかもしれないけど、できたらすごい」という企画は、鉄道ファンのなかからしか生まれてこない。私たち旅行会社も含めて、鉄道業務に当たり前のように触れていると、熱量がある人が求めるものの価値がわからなくなってしまうことが多いんです。
実際、最初のお座敷列車の企画のまわりの反応は、「本当にこんな企画売れるの?」というものだったそうです。
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「旅仲間を広げる」ことがクラブツーリズムの理念
杉山: 約700万人の会員組織と独自性ある商品企画力をもつクラブツーリズムさんにとって、OSIROを選んでいただいた理由はどんなことでしたでしょうか?
川鍋: オシロさんの思想に共感したことが大きいと思います。じつは、国内にあるファンコミュニティサイトのプラットフォームの情報などを調べたり、各社の担当の方にプレゼンもしていただいたんですよ。
そのなかでクラブツーリズムが目指したのは、企業のファンコミュニティというよりも、濃度の濃いファンだけを集めたコミュニティでした。その目的のなかで、最終的にインターフェースの使いやすさも含めてコミュニティ内のファン同士がつながる「1対n対n」のコミュニティに価値を見出されているオシロさんの思想に共感しました。
杉山: 使いやすいといっていただけるのはもちろんうれしいですが、「オシロの思想に共感した」と言ってもらえるのは、また違ったうれしさがありますね。それにしてもなぜ、ツアーを企画するクラブツーリズムさんがコミュニティを運営されるのでしょうか?
川鍋: そもそも「旅仲間を広げる」というのが弊社の理念であることが大きいと思います。というのも、1980年に誕生したクラブツーリズムは、新聞広告を使ってパッケージツアーを一般向けに販売する、いわゆる旅行ツアーのダイレクトマーケティングを行う先駆け的な会社でした。
当時は、町の旅行会社の人が御用聞きに来てツアーを組むとか、社員旅行のような団体の旅や、旅行会社のカウンターにいってカタログを見ながら申し込むといったような旅が中心でした。そこから時代が進み、同じ趣味をもつ個人が一緒に旅をしながらその趣味を深めていくといった新しい文化ができあがりました。
杉山: なるほど、趣味があう人同士のコミュニティから始まっているという点では、オシロが目指す世界観と同じです。だから先ほど川鍋さんは「共感」という言葉を使われたんですね。
川鍋: その通りです。家族やパートナーと年に1回ツアーに行ってもらうほかに、2カ月に1回は自分の趣味のツアーに参加していただく。さらに友人に連れられて参加したツアーから新しい趣味に出会えるきっかけにもなりますしね。
さらにクラブツーリズムでは毎月、自社の旅行情報誌を刊行しています。その配送業務を、クラブツーリズムの会員様がサポートしてくださっています。エコースタッフという制度で1993年にスタートしました。現在では首都圏・中部・関西 を中心に募り、健康づくり・仲間づくりを目的に、現在、全国で約6,000名の方が活躍されています。
加えて2000年には「クラブ1000構想」(以下、旧・クラブ1000)が提唱されます。旧・クラブ1000は、職縁や地縁、血縁とは異なる、少人数の同好の仲間が集うクラブ型社会が、高齢化・多様化していく社会を結ぶものになるとして提唱したものでした。そして新・クラブ1000は、その構想を新しく引き継いでいく取り組みといえます。
杉山: すでにコミュニティのベースをもっていた御社が、クラブ1000構想として改めて全社で取り組み始めたのはどのような理由があったのでしょうか?
川鍋: もっとも大きな理由は、ビジネスモデルの転換のためです。というのも、クラブツーリズムの現在のメイン顧客層は60歳代から70歳代のシニアが中心になっています。今後の会社の更なる成長も見据え、50歳代の団塊ジュニア世代の方々にどのようにツアーを利用してもらうかが喫緊の課題になっています。
それはwebをこれまで以上に使っていくことで可能になると考えています。そのうえで重要なのは、webを使いながらも弊社の理念である「仲間が広がる世界」をつくっていくことです。つまり私たちは1万人や2万人のお客様の行動分析をしたいわけではなく、一人ひとりのお客様がどんな思いで、どんな発言をしていくのかを紐解く「N1分析」が必要だと思っておりました。オシロさんの「1対n対n」の思想に共感したというのは、そんな理由が大きくありました。
とはいえ、旧・クラブ1000構想が道なかばで一旦休止してしまったことを考えると、当時の課題を克服しなければ会社に納得してもらうことはできません。
まず大きな課題だったのはコミュニティの自走でした。当時でさえ難しかったのに、20年前と比べてさらに人材不足が続く現代では、自走できるコミュニティが必須です。その点もOSIROのプラットフォームでは、メンバー同士が交流しやすい設計になっています。
また、旧・クラブ1000のときは、その趣味仲間たちにツアーを販売することだけが終着点でした。しかし今回の新・クラブ1000事業では、その趣味に造詣が深い人たちから、ツアー企画のネタやヒントをもらったり、彼らの夢の実現をツアーで手助けしたり、その旅行企画がヒットしそうかを事前にジャッジしてもらったりと様々な部分で関わり合いを持ちたいと思っています。
そしてその旅行企画に共感してくれた人が最終的にインフルエンサーになって広めてもらう中継地点としてのコミュニティにしたいと考えたときにOSIROさんのサービスが最適だと思ったんです。
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「テイク」ではなく「ギブ」の思想が企業の分水嶺になる
杉山: 川鍋さんのお話を聞いてクラブツーリズムさんが、僕たちオシロが提唱するずっと前からコミュニティに可能性を感じていたことを知ることができました。
一方で、川鍋さんご自身もクラブツーリズムが提唱しているコミュニティの理念に共感しているように感じるのですが、何かコミュニティの力を実感するような出来事があったんですか?
川鍋: 元々会社に「お客様と一緒に事業をやろう」という発想があり、それを入社当時から言われていたことだと思います。当時は、4000人や5000人が集まるイベントをクラブツーリズムが企画していて、私もスタッフとして現地に行ってお客様をお見送りしたりとか、日常的にお客様と触れ合う機会が多かったと思います。
ツアーに添乗することもあったなかで、初対面のお客様同士が仲良くなって電話番号を交換されている場面を目にしてもいるので、人と人が出会う場をつくってさしあげる会社の理念が刷り込まれているのかもしれないですね。
杉山: 川鍋さんが進めていらっしゃる新・クラブ1000事業は、創業当時からやり続けられていることに、弊社のOSIROのような新しいものも積極的に取り入れられてハイブリットな取り組みをしていらっしゃいますね。
そして鉄道部の取り組みのように鉄道ファンの夢を叶えようとしていらっしゃいます。企業としての原点がお客様の声を聞きながら、お客様が求める旅を一緒につくっていくという「テイク」ではない「ギブ」の思想で事業を行っていらっしゃることに感動しました。テイクかギブのどちらに進むかは、企業の最初の分水嶺。ギブの道を進まれるブランドや企業は、長く愛されることになるのではないかと思っています。クラブツーリズムさんは、初めからギブを選択されているから、長く愛されている企業、ブランドなのだと感じました。
そしてクラブツーリズムさんは、旅行会社でありコミュニティの会社であることも感じました。年配の方々のリアルのコミュニティ醸成の歴史を持つ大先輩でいらっしゃいます。御社にOSIROをかけ合わせていくことで、新しい価値を生み出せると思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。川鍋さん、本日はありがとうございました。
川鍋: こちらこそどうもありがとうございました。
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川鍋 誠|Makoto Kawanabe クラブツーリズム株式会社 新・クラブ1000事業推進部長/経営IT企画部 部長 1999年に近畿日本ツーリストに入社後、25年間クラブツーリズムの事業に携わる。(※2004年にクラブツーリズムが分社化)国内・海外の旅行企画を15年経験し、その後は経営企画や新規事業の担当となる。2021年10月に現在の新・クラブ1000事業推進部の責任者となり、コミュニティ事業への挑戦を行っている。
杉山博一|Hirokazu Sugiyama オシロ株式会社 代表取締役社長 24歳で世界一周から帰国後、アーティストとデザイナーとして活動開始。30才を機にアーティスト活動に終止符を打つ。日本初の金融サービスを共同で創業(2024年上場)。退社後、ニュージーランドと日本の2拠点居住を開始。30歩で砂浜に行ける自分を豊かにするライフスタイルから一転、天命を授かり「日本を世界一の芸術文化大国にする」という志フルコミットスタイルに。以降東京に定住し、2015年クリエイター向けオウンドプラットフォーム「OSIRO」を開発。2017年オシロ株式会社設立。現在は作家・アーティストから、コンテンツ・メディア・ブランド企業までクリエイティブ産業全般に向けて、ファン同士が仲良くなる、独自のプラットフォームを提供している。システムの提供はもちろん、コミュニティ醸成のサポートも行っている。
text & photos by Ichiro Erokumae
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